第21話 乗り物はレトロな・・・

”ミサイルの弾頭”が走り去った同じ道筋を行こうとしている、3人を乗せた

まだ素性がよく分からない乗り物らしきモノ。

長い(スロープのある)トンネルのような道の先は、西日が眩しい白い大平原。

その光景を映しているPCの画面を食い入るように見ている、ティナとミナコ。

慣れていない操縦法で慎重に ”乗り物” を進めてゆくケン。

いよいよ、待望の出口に差し掛かろうとした時、伝声管から声が。

ケン『二人とも、俺の合図があるまで、そこで待機!』

ティナ、ミナコ「・・・了解。」

PC画面を見ていた二人は、待機の理由と周囲の状況をすぐに理解できた。

そこには、数多くの捜索TEAM隊員の姿があったが、いずれも武器を持って

身構え、周囲を取り囲もうとしていた。

ティナ「そうだった・・うちらがこれに乗ってる事、知ってるわけないよね。」

ミナコ「せっかく出られたのに・・・。」

すると、ケンが操縦席から出てきて、何かを探し始めた。

ティナ「リーダー、なにさがしてんの?」

ケン「何か硬い物・・・ ハンマーなんて無いか。」

床に散らばっているのは、各々のバッグ、ミナコのスニーカー、ティナのデザートブーツ。 そして、未開封のコーラ・・・だった。

ケン「ハッチを開けて出たいところなんだが・・それだと、ろくに確かめもしない

連中がいきなり撃ってくるかもしれない。」

ティナ「そっか・・・こっちからノックして知らせてやんないと、って事ね?」

ケン「そういう事。・・・ティナ、スパナとかハンマー、持ってなかったか?」

ティナ「ん・・・ ちょっと待って。」 

そう言って、自分のバッグを弄って見ると・・・

ティナ「リーダー、こんなんでいいー?」

手に持っていたのは、地下室発見に一役買ったキャンプ用のミニスコップだった。

ケン「上等だ。 ちょっと借りるぞ。」

ハッチのような扉の前に立ち、ミニスコップで壁の部分を軽く叩いてみるケン。

だが、思ったほど音が響かない。

何の素材かは不明だが、発泡プラスティックか何かを叩いているような感じ。

スコップのヘラの部分で叩こうが、柄の部分で叩こうが、ほとんど同じだった。

ケンは、どこか硬い部分は無いか探し、いろいろ試した結果・・・

ハッチの開閉レバーが、どうやら一番硬そうな感じの音の響きに聞こえた。

よく響くように、ミニスコップの持ち方にも少し工夫してみる。

ヘラの部分を摘み、吊るすように持ち・・・レバーに対し垂直に当ててみた。

それを五回。 数秒の間をおいて、また五回。

カン、カン、カン、カン、カンと、意図的に音を発して様子を見る。

ティナ「でも、なんで5回なの?」

ケン「偶然発生した音ではない、という事を分からせるためかな。」

ミナコ「リーダー、何か動きあったみたい!」

PC画面から、捜索TEAM隊員の姿が消えていた。

ケン「・・・もう一回叩いてみるか。」

再度5回叩き、聞き耳を立てて様子を伺う。   すると・・・

鈍い音ながら、5回打ち返してくる音が聞こえた。

ティナ、ミナコ「!!」

ケン「よし、開けるぞ!」 レバーが下に降ろされた。

ハッチが開いたとたん、室内に吹き込む熱気。

外では、ハンマーを持ったままキョトンとしている、捜索TEAMの隊員。

ケン「MOTOI・CREW隊員3名、全員無事です!」

すぐに、捜索TEAMの隊長と思しき隊員が「他に誰か搭乗しているか?」

と、言ってきた。

ケン「いえ、他には誰もいませんでした。それより、二人に何か飲ませて

やってください。」

捜索TEAMから、3人にスポーツドリンクが提供され、一息ついていると、

別の隊員が声をかけてきた。

「君たち、これに乗ってきたのか? すごいなあ、この “ 戦車 ”・・・。」

ケン「えっ・・・ 戦車?」

その隊員は、どうやら相当のマニアらしく、さらに熱っぽく語りかけてくる。

「これ、たぶんレプリカなんだろうけど・・そのまんま、“マークⅠ”だよ!」

ケン「マーク・ワン・・・?」

「大昔の、第一次世界大戦で活躍したUK(イギリス)の戦車さ! 1916年製、

28.5トン、エンジンはダイムラー6気筒水冷105馬力、40口径6ポンド砲

2門、ホチキス機銃4丁・・・・」

ケン( まいったな・・・ ついていけない・・・。 )

「ステアリングホイールも再現してあるのはいいんだけど、何か変なタイヤみたい

だし、リベットの跡は無いし、ボディ側面に付いてる砲台も角ばってなくて、これ

・・砲台ごと転回できるんじゃないかな。  それにさ、オリジナルの物より数倍

デカイ感じに見えるよ、これ。 どうやって手に入れたの?」

「ジェスロ!それくらいにしておけー!」と、捜索TEAMの隊長。

マニアな隊員を帰り支度の作業に復帰させると、隊長は3人に声をかけた。

「ちょっと記念撮影につきあってくれるか? 報告しなきゃならんのでね。」

ティナ「リーダー、うちらも報告しないと。」

ケン「そうだった。」

ただ、“D”マークアプリへの報告は、何と言って説明すれば良いのか・・・。

報告は必須事項であり、義務でもあるので、スルーという訳にはいかない。

ケン( 洗いざらい話すしかない・・・か。 )



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