第17話 起動

『運転が可能になりました』と、モニターは表示していた。

ケン「と、いう事は・・・。」

壁に一ヶ所だけドアがある所。そのドアには『運転 可』の表示。

スマホが置いてあった、イスが一つしかない部屋だった。

鈍く輝くグリーンの文字が直に印刷されているようなドアを開けると、

やはりと言うか、イスの手前のモニターはすでに何かを表示していた。

でかでかと、『チュートリアル』の文字。

どうやら、これに触れてからでないと先に進めないようだった。

『運転 可』になったからと言って、ハンドル、レバー、ペダルの類が

この部屋に出現する訳でも無く、キーボードも初めから見当たらない。

従来の乗り物とは根本的に異なる操縦形式が予想されるが、とにかく慣れる

しかない。 何より最優先すべきは、この場所からの脱出。 しかも・・・

全員無事で、が絶対条件。

もう、これが唯一の打開策なんだ。と、決めてかかるほか無かった。

ケンは意を決し、座席前のモニターに表示されている『チュートリアル』の

文字に手を置いた。


V・V・V(ヴァージニア・ヴァイオレット・ヴィーナス)のシュニーヴ隊長

のもとに、捜査探索専門TEAMの隊長から連絡(メール)が入った。

『瓦礫を撤去しましたところ、新たにハッチのような扉を発見しました。一行は

ここから潜入した可能性が高いと思われます。 これより突入を開始しますので、

引き続き、周囲と上空の監視をよろしくお願いいたします。』

シュニーヴ隊長はすぐに返信をしようとしたが、すでに連絡不可になっていた。 「隊長、クエスト・モールズ(捜査探索専門TEAMの名)は何て言ってきました?」

シュニーヴ隊長「突入したそうよ。で、後はよろしく、だって。」

隊長他、女性パイロット4名の待機しているバス内に、突如警報音とアナウンス。

『ナックルボール由来の物と思われる機体がそちらに向かっています。 こちらのミサイルで2機撃墜しましたが、計3機のうち、1機をロストしてしまいました。

そちらで対処の方、よろしくお願いいたします!」

続いて、スクリーンに静止画像が映し出された。

かなり不鮮明ながら、1機の旅客機のように見えた。  だが・・・

本来ジェットエンジンが備わっている箇所には、中型ミサイルが炎を噴出している

ように見える画像が映し出されていた。

画面下、『撃墜された2機は、共にメキシコ湾に墜落した模様。』(英語)

これを見たシュニーヴ隊長は、席を立ち、出撃の号令をかけた。


ゴン、ゴゴン・・と、瓦礫が落ちてきているであろう振動は、音になってこの部屋

に響くようになり、その頻度も増えていた。

ミナコ「やだ、もう・・・ここ大丈夫なのかしら・・・?」

ティナ「リーダー・・・まだか~い?」

二人とも、ケンのいる部屋を注視していてPC端末の『配置に就いて下さい。』の

表示に気付いていない。

いきなり、伝声管を通じてケンが叫んだ。

ケン「出るぞ!! 何かにつかまっててくれ!!」

ミナコ「えぇー!? どこつかめばいいのよー!?」

ティナ「わぅ! ハイチについてください、だって!」

ミナコ「もう、ここにすわるしかないよ!」

ティナ「・・・・ジーザス・・・!」

二人は犬小屋型PC端末に足を入れ、向き合うように座り、どこを掴んで踏ん張れる

かを、あたふたしながら探した。  そして・・・

二人とも屋根のてっぺんと角を掴むと『配置に就いて下さい。』の表示が消えた。

その時、二人はケンのいる部屋を上に見る方向に錯覚する体感をした。

同時に、”後方”へ転げ落ちて壁に当たる、脱いだ靴、バッグ、未開封のコーラ、等。

そして、二人がしがみついている犬小屋型PC端末に、また変化が。       暗すぎて分かりづらいが、どうやら何かの映像が映っているようだった。

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