第16話 起動させるには・・・

取り扱い説明書きの通りに足を踏み入れたが、そのPC端末とやらに何も変化は起きなかった。   正確には、足を踏み込む領域がわずかに凹んだだけで、それ以上

先に進めない、といった感じだった。

ケン「・・・ダメか。」

ティナ「リーダー、ここ見て!」と、指差す左端の小さなスペースに図案のような表示が出ていた。

靴の足跡のようなマークにX、裸足の足跡のようなマークには〇。

それらが交互に点滅していたのだった。

ケン「・・・・・・。」

ティナ「まさかと思うけどさ・・・ ハダシってヤツ?」

ケン「やってみるしかなさそうだな。」

ショートブーツと靴下を脱ぎ、手持ちのアルコールジェルで丁寧に足を拭くケン。

ティナ、ミナコ「・・・・・・・。」

ケン「何見てる・・・ 二人とも、臭いのはイヤだろ?」

今度は慎重に足を入れ、感触を確かめた。

足の裏からは、さほど冷たさを感じなかった。先ほどの表示も出ていない。

踏み込んだ感じが、単にノズルを繋げていないエアポンプのような感触。

そして、足が伸びきる少し手前で、カチッと音がした。”底”に到着したらしい。

すると、管弦楽の曲の形を呈していない演奏練習のような音が1秒間した。

ケン「やはり、モニターだったか。」

続いて、『動力を司る全ての配線が繋がっていません』が4秒間表示。

さらに、取り扱い説明書きにあった、問題な図形の羅列(?)が表示された。

モニターに表示されている図形の中で、一番大きいのが中央部の◇。

〇の図形も、他のと比べると多少大きめに表示されている。

ケンから見て左の中途半端な高さの位置に一つ。(その上に◇)

右側の中途半端に低めの位置にもう一つ。

何故か、少し離れた右端に位置する、計三つ。

このレイアウトに何か意味があるのかも知れないが、今はこんな状況。

時おり、瓦礫の一部が落ちてくるらしい振動がこの部屋に響く事もあり、

とにかく急ぐ必要があった。

リーダーのケンは、ティナとミナコに「今のうちに休んでおくように」指示、

自分は、難敵『配線図』との”格闘”に取り掛かろうとしていた。


一方、研究所跡地は更に崩壊が進んでいた。

「彼ら3人は、どの辺りから内部へ潜入したか、覚えてませんかね?」

そう質問したのは、国連のTEAM運営担当から派遣された捜索専門TEAMの

隊長だった。

「3人がどこからというのは、残念ながら確認できていません。」

そう答えたのは、直前までケンと会話していたV・シュニーヴ隊長。

その二人が話していた現場が、ケンら3人の潜入捜査した『裏口』そのもの

だったのだが、建物の損壊がひどく、その存在に気付かないほどだった。

「・・・仕方ありませんね。では、こちらで瓦礫の撤去作業から始めたいので、

護衛のほど・・・一つよろしくお願いいたします。」

「・・・了解しました。」

自信なさげな返事の後、ヴァレンティーナ・シュニーヴ隊長は空を見上げた。

( スタイラス・・・ 頼むから、もう出てこないでー! )


ケンは自分のスマホを見た。  (16:30・・・。)

待ちくたびれたのか、壁沿いに寄りかかって居眠りしているティナとミナコ。

二人の足元に、ティナのデザートブーツとミナコのスニーカー。

その側に、ケンのアルコールジェル入りのプッシュボトル。

二人とも靴を脱ぎ、裸足になって待機していたが・・・。

ケン「起きてくれ。配線の接合、完了した。」

ティナ「・・・・・んん・・! マジで!?」

モニターに『動力系の配線は全て繋がりました。』の表示。   その下に、

『起動しますか?』  { はい } { いいえ }の表示も出ていた。

ティナ「ミナコ、起きてー! もうできたみたいよー!」

ミナコ「・・・・・え?  マジで!?」

ケン「いよいよ、これから起動させるんだけど・・・心の準備、できてる?」

ティナ「オーケイ、カマン!」

ミナコ「やっちゃって、リーダー。」

ケンは、一回拍手のように手を叩くと、再びモニターの前に向かい・・・

{ はい }のエリアに手を置いた。








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