第12話 手がかり (1)

ミナコは改めて自分のスマホの表示を見た。                  『電波状況を確認中』と『・・・』のドット表示が点滅中だった。

ミナコ「まぁ、そうよね。」   -ところが・・・。

 『相手を呼び出しています』の表示に変わった。

ミナコ「えっ!?」

ティナ「なになに!? どうしたの?」

ケン「エラーかもしれない。もう少し様子を見よう。」

 だが、『相手を呼び出しています』の表示は変わらず。

それどころか、プルルルル・・・の呼び出し音までがミナコのスマホ

から聞こえてきた。

数秒後、少しこもった感じのギターの音色が、どこからか聞こえた。

ミナコ「えぇーーっ!?」

ケン「須田さん、これって・・・?」

ミナコ「ルミちゃんの着メロ!!」

ティナ「てゆーか、音、どっからしてるの!?」

3人は、その音源がどこから来てるのか探し回った。

ミナコ「ルミちゃーーん!!いたら返事してーーっ!!」

ケンとティナが初めて聞く大声だった。

周囲を探しているうち、音が伝わりやすい箇所と思われる所を特定する

事ができた。

ケン「これだ。今時こんな物を使っているのか。」

昔の大型船舶に用いられていた、”伝声管”と呼ばれるパイプ。

どこへ繋がっているか視線で経路を追ってみると、3人から見て左側の

ハッチ(扉)が一つしかない壁の上部に入り込んでいた。

ティナ「そこかぁ・・・どのみち調査するしかないか。」

ケン「二人とも、この壁に背中をぴったり付けて待機。いいね?」

ティナ、ミナコ「了解。」

ケンはハッチのレバーに手を掛けつつ、扉が盾になる方向に身構えた。

ミナコ「・・・ルミちゃん・・・。」

ケン「・・・開けるぞ。」

少し重そうな金属音とともに、レバーはあっけなく下がった。

ケンが慎重にハッチを開けると、ギターの音色はより鮮明に聞こえた。

”何か”が飛び出してくる様子は無い。

恐る恐る覗き込むケン。

映画館のスクリーンのような壁。その方向に向いている、一つの座席。

”音源”は、その座席からだった。

見ると、無造作に置かれたような感じのスマホが。

三畳一間ほどのスペースの、その部屋には誰もいなかった。

ケン「大丈夫そうだ。来てくれ。」

ティナ「・・・あぁ、この部屋は一人用だね。」

ケン「須田さん、これ、確認してもらえますか?」

ミナコは自分の発信をOFFにして、座席にあるスマホを手にとってみた。

ティナ「問題は中身、よねー。」

ミナコ「分かってる! これから見るところなんだから。」

ティナ「てゆーかさ、この部屋3人じゃキツイんですけど!」

3人は、実験用の小屋のような物体がある広めの部屋に戻り、改めて座席

にあったスマホを確認してみた。

ミナコ「まず・・・メーカー、型、色、全く同じ。いっしょに買ってすぐ

打ち合わせに入って・・・それから、どこにも寄らず飛行機に乗ったから、    アクセサリーとか付けてるヒマは無かった。  だから、剥き出しのまま・・   というのも合ってる。確かに。」

そのスマホの表示は相変わらず”圏外”のままで、トランシーバーモードでは

単に”着信あり”と表示されているだけだった。

ティナ「あとは、メールの中身に心当たりがあれば・・・もう決まりよね?」

ミナコ「それがね・・・買ってから、ずっと一緒に行動してたんで・・・

メールどころか通話もしてなかったの・・・。」

ティナ「えーっ!? ダメじゃん、それって!」

ケン「須田さん、とにかく中身を確認して下さい。話はそれからです。」

ミナコ「・・・わかった。 じゃあ、(中身)見るね。」

まずは、『通話履歴はありません』の表示。 そして・・・。

メールの『着信ボックス』、『未送信ボックス』。

双方の欄に『1件』と表示されていた。



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