第9話 何も無い小部屋

ケンを先頭に、ミナコ、ティナの順番で肩に両手を置き、慎重に階段を

降りて行く3人。

手持ちのLEDライトは照らす範囲が狭く、果てが見えない行く先に光を

当てるので精一杯だったが、階段通路も人一人分の狭さのため、それで

充分だった。 だが・・・。

しだいに光は弱くなり、ついに暗闇になってしまった。

ケン「すまん。電池切れのようだ。ちょっと待ってくれ。」

しかたなく、自分のスマホでムービーの夜間撮影モードにして懐中電灯

の代用にしようとした。 ・・・が。

ティナ「リーダー、あたしの使って。」と、ケンに自分のLEDライトを差し出す。

少しゴツめの、しかも更に明るそうなタイプの物だった。

ティナ「ケータイの電池、ムダに使うことないよ。仕事やってるあいだはさぁ、

いつも連絡とれるようにしとかなきゃいけないんだって。もし電池切れで連絡

とれなかったら、それだけで罰金だよ。マジで。」

ケン「ありがとう、助かったよ。 うっかりしてた。気を付けないとな。」

ティナ「実はさ・・あたしもそれで怒られた事あるんだ。だから。」

ミナコ「・・・・・・・。」

建造物なのだから、必ず到着点はあるはず。という3人の見解は一致していた。

だが、一向に終わりが見えない。 

ケン「ちょっと、止まるぞ。」

ティナ「え、なに? まだ途中じゃない?」

ケン「足元を見てくれ。」そう言って、左側を照らした。

ミナコ「そこって、踊り場よね・・・?」

ティナ「中休みするとこ? どんだけ長いのよ。」

ケン「・・・変だな・・ドアがあるようには見えないんだが・・。」

3人目のティナが、その”踊り場”に足を踏み入れた時・・・床が僅かに沈み、

「カチッ」と音がした。

ミナコ、ティナ「!!」  3人のいる場所に変化があった。

ケン「今、二択問題が発生した。どっちに進みたいか、意見を聞かせてくれ。」

手に持っているLEDライトが照らし出す、終わりの見えない階段通路。そして・・

単なる壁と思われていた所に、突如現れた入り口(?)。

ティナ「ニタクって言うけどさ、あたしはリーダーの指示に従うよ。意見がある

時はちゃんと言うし。 で、ミナコはどうなの?」

ミナコ「・・・あたしは・・正直言って、あの階段・・・もうイヤ。」

ティナ「うん、ミナコに激しく同意!」

ケン「決まりだな。途中で現れたこんな所でも調査はしないと。」

ティナ「リーダー、そこ照らしてみて。どうなってる?」

ケン「・・・階段は・・見当たらないな。」

ライトを照らしてみて他に確認できたのは、反射で映ったLEDライトの光源と、

3人の姿。 それと、床を横切る直線な”切れ目”だった。

ケン「・・・まずは安全確認するぞ。こういう場合、俺が先に行動起こしても

レディーファースト、とか文句言わないでくれよ。」

ティナ「言うワケないよ! ナニ言ってんのー!?」

ミナコ「リーダー、ふざけないで。」

ケン「ごめん、ちょっと確認したかっただけだ。」

一見、何も無い、意味不明の小部屋。 ケンが先に入ってみたが変化は無し。

ティナ「そこってさぁ、エレベーターじゃないの?」

ケン「確かにそれっぽいんだが、スイッチ類が何一つ無いんだ。」

ティナ「え~、よく探してみたのー?」と言って足を踏み入れたが反応無し。

ミナコ「また、さっきみたいに3人目でカチッ・・・じゃないでしょうね?」

そう言って、ミナコも何も無い小部屋に足を踏み入れた。



 






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