第5話 研究所跡へ向かうためのアシ

ケン 「日陰も無い暑い中、申し訳ないがミニ会議をしたいと思う。」

ティナ 「えっ、なにナニ!?」

ケン 「須田さん、あちらの方角を見てくれますか?」

手持ちの双眼鏡をミナコに渡し、ある方向を指差すケン。

ミナコ 「・・・はい、はい。確かに研究所跡ね。」

ティナ 「あたしにも見せて。・・・・やっぱ、遠いなー。」

ケン 「ただ真っすぐに進めば普通に着く、目標の研究所跡なんだが・・・

いかんせん、ここからの距離が20数キロもある。  一方で、せいぜい5キロほどしか離れてない、ドラッグレースの運営基地。そして、今の俺たちの移動手段は徒歩だけ。 選択肢は二つある。」

ティナ 「どっちになろうと、リーダーの決定には従うよ。ただ、手短にね。」

そう言ってミナコの方を向くティナ。 すでに汗だくのミナコ。

ケン 「まず、ここから真っすぐ研究所跡へ歩いたとしよう。  途中での水分補給もさることながら、熱中症の危険性もあるし、現地へ到着した時点で疲労困憊では、とても調査どころではない。それと・・・もうひとつ。」

ケンはティナに双眼鏡を渡し、ドラッグレース運営基地の方角を指差した。

ティナ 「・・・・・あれぇ? 国連査察団の車だぁ・・。」

ケン 「彼らに見つかれば拘束され、取調べを受ける事になってしまう。」

ミナコ 「ちょっと待って。なんでそうならなきゃいけないの?」

ケン 「彼らには、そういう権限が与えられているみたいです。 チームが反社会的行動を取らないよう、監視やら保安維持活動も含まれてますね。」

ミナコ 「つまり、歩いて向かったとしても途中で見つかったら、おまえら何やってるんだ?怪しいぞ・・・って事で? こっちだって仕事なのに。」

ティナ 「リーダー、二つ目は?」

ケン 「あえて、レースの運営基地へ行く。何故かと言うと・・・」       3人は十数分間話し合った後、国連査察団のいるレース運営基地へ歩を向けた。

一行が到着すると、タイミングが良いのか悪いのか、メール着信音が鳴った。   待合室で話し込んでいた運営基地の役員と国連査察団団員が同時にこちらを向いた。「何だね?君たちは。」

ケン 「実は、車を貸していただきたく、こちらをお尋ねしたのですが。」

「あいにく、ここのレース会場全ての車両は調査の対象になっている。 それを今、この方に説明していたところだ。もし、調査終了まで待てないのであれば、参加している団体にバイクはあるかどうか聞いてみるといい。」            と、国連査察団の団員は言った。

仕方なく、3人は各団体を回ってみて、走行可能なバイクをできれば2台か3台貸し出してくれる(奇特な)レース参加団体を尋ねまわる事にした。

当面の狙いは・・・サーキット移動用に使うであろう、保安部品が付いてない物。

だが、そうそう都合良くいくはずもなかった。

大抵の団体は、レース車両を運搬するトラックや牽引トレーラーは必須アイテム的に所有はしているが、(移動用の)バイクとなると無いのが普通で、所有したとしても、せいぜい立ち乗りタイプの電動スクーターを一台持っている程度。

ケン(やはり、調査終了まで待つしかないのか・・・。)

ティナ「そういえば、メールの着信音してなかった? リーダーのそれ。」

ケン「おっと、そうだった。」と、自分のスマホを確認してみると・・・

      《申請は受理されました》

ケン「仕事の許可が下りたみたいだ。」

ティナ「おぉ~。・・・ま、とりあえずスタートラインってヤツだね。」

もう1ページあるらしく、めくって見ると・・・

《本チーム側から発注した依頼および業務は、報酬が発生しない場合があります。

それでも続けますか?》  {はい}  {いいえ}

ケンは躊躇せず{はい}の方にタッチした。

その時、スマホの画面が変わり、振動(バイブ)。

人工衛星のイラストに、アルファベット大文字の”D"が被さるアプリからだった。



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