第30話 恥とプライド。
彼女は立ち上がり、スカートについたほこりを払う。
それを真似るように自分も立ち上がり、ズボンのほこりを払い、謝ろうとした。
「あ、あの。本当にすみま」
パチーーン。
言い切る前に、頬に謎の衝撃と音源不明の破裂音がした。
どうやら彼女にビンタされたらしい。
それに気づいてから、痛みが徐々に鮮明になってきた。やばい。めっちゃ痛い。
彼女の方を見るとまた目が合った。
顔立ちはかなり整っている方だと思う。
しかし、今度は吸い込まれるような感覚にはならず、むしろ吹き飛ばされそうになる。
そして彼女は中々の声量でこう言った。
「廊下は走る場所じゃないでしょ!!!」
怖っ!
確かに注意されてみたいとは思ったけど、こういうのじゃない!
「本当にすみません!ごめんなさい!ごめんなさい!」
必死で謝る。恥もプライドも捨てることが謝罪において一番大切なことだ。
まぁ、大したものは持ってはいないのだけれど。
「この私にぶつかっておいてそんな陳腐な謝罪で済むわけないでしょ?!怪我でもしてたらどうしてくれたの?!責任とれるの?!」
「えぇ……」
なんだよ、ヤバい人かよ。
この私にって何様だよ。
「この学校の生徒で私のこと知らないわけないわよね?私が一番偉いの。わかる?もし、わかるのなら貴方がすべき行動もわかるはずよね?」
知らないはずなのだが、そう言われるとどこかで見たことあるような気になってくる。
……てか、まじで何様?!
「す、すみません。その、すべきことってなんですか?」
もしかして、お金払え系のやつか??
かつあげなのか?!
「バカなの?土下座に決まってるでしょ。」
あぁ、土下座かぁ……。
謝罪の極意を知っている者にとって、土下座というものは最終奥義なのだ。
そう易々と実行できることではない。
それに、土下座を披露すると、ミジンコ並みのプライドに傷がついて心が疲労する。
疲労するから披露しない。
つまり、先ほど捨てたはずのプライドを、拾うということだ。
それはプライドに従って行動するということである。
弱いにしても男である春日井のプライド、生き様とはこういうものだ。
「すみませんでしたー!!!」
2秒で土下座した。
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