第23話 イケナイこと。
「出席とるぞー。」
そう言って赤木は名簿を開く。
徐々に呼ばれていく名前。
そして、次の人は。
「春日井ー。 あれ?春日井?いないのかー?春日井優真ー。かすがいゆうまー!」
「ゆーま!!早く来なよ!」
龍ヶ崎に身を任せてたどり着いたのは、見覚えのある公園だった。
トラウマもののブランコに、何も知らない龍ヶ崎が座っている。
「今日、天気良いね~!」
そう言って笑顔でブランコを漕ぐ余裕があるのは、普段からサボっているからなのか。
学校をサボるという初めての行為にドキドキが止まらない自分とは真逆だ。
「こ、この公園って、よく来るの?」
「うん!まぁ、ケンピの散歩コースだからだけどね!てか、ゆーまもこの辺歩いてたし、よく来てるんじゃないの??」
「あぁ、あの時はたまたま……。」
「そっか!」
「う、うん。」
サボりにも女子との会話にも慣れていないせいで、こういう時はどうしたら良いのかわからない。
「元気ないね~?こういう時は思いっきり楽しまなきゃ!同じサボりなら遊ばにゃ損!損!」
さっきから心読みすぎでは?さてはエスパーか?
「そう、、だね。じゃあ俺も乗ろ。」
二人並んでブランコを漕ぐ。
風が気持ちいい。
少しの間会話が途切れ、揺れるブランコの音だけが聞こえる。
すると、突然龍ヶ崎が話し始めた。
「なんかさー。女子ってよくわかんないよねー。」
「え、まぁ。うん。」
とっさに同意してしまった。
「って言ってるあーしも女子なんだけどさ。何て言うか、男子の方が分かりやすいってか、簡単だよね。」
「そ、そうかな?俺にはどっちも……。」
だって分かれば少なくともぼっちではないよな。
「そう?まぁ乙女の心は秋の空って言うし?さっきのも気にしなくていいのかなー。的な感じ?」
これはきっと、龍ヶ崎なりに励ましてくれているのだろう。優しいな。
「なんか、気を使わせてごめん。」
「だから謝るなっての!こういう時はありがとうだよ!」
「あ、ありがとう。」
少しだけ恥ずかしかった。
「よーし!ゆーまも元気でたっぽいし、そろそろ戻ろっか!」
「あ、うん。そうしよう。」
「よっと!!」
ブランコを飛び降りた龍ヶ崎が振り返ってこちらを見る。
それも綺麗な笑顔で。
どうしてこんな自分と話していて笑顔なのか。
やはり女子はよく分からない。
こうして、公園を出て龍ヶ崎と来た道を戻る。
サボりという良くないことをしてしまった罪悪感と、謎のワクワクが胸の中で混ざりあっていた。
もしかすると、これが青春のスパイスってやつなのかもしれない。
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