第22話 山あり谷あり。
あそこってどそこ?
などという、くだらないシャレは言いなしゃれ。
適当に歩いていると、気がつけばその、あそこに来ていたようだ。
平本が立っていた。
ラッキー。いつだって迷った時は適当に歩いてみるものだ。
「あ、その、おはよう。」
心境とは裏腹。
いざ目の前にすると、挨拶すらまともにできない。
やはり、下の名前で呼べない自分が情けないだけのような気がする。
「ん、おはよ。」
なんだろう。暗いような、驚いているような、怒っているような、そんな返事だ。
昨日、一緒に帰った仲なのに。
「えっと、どうしてこんな所にいるの?」
「別に。てか、さっき私達のこと見てたでしょ?」
「あー、うん。その、何してるのかなって思って。」
「きも。」
「え?」
え?
え??
え???
きも。とは????
「え?じゃねーよ!来斗くんから全部聞いたわ!」
「いや、その、な、何を?!」
「秀也くんに好きな人がいるってことだよ!」
おい。まじかよ。
「それは、その…。」
「そのこと知ってて私にあんなこと言ってたの?嘘つき!最低!」
「あ、だから、その…。」
「春日井って名前なだけあって、カス甲斐があるわ!このドカス野郎!!」
なんだコイツ!!!
人が何も言わなかったら調子に乗りやがって!
もう許さねぇ!
「……ごめん。」
まぁ、謝ることしかできないけど。
「本当に最低!短い間だったけどありがとう!じゃあ、さようなら!!」
そう言って立ち去る平本を止めることはできなかった。
それからどれくらいの間、立ちっぱなしだったのだろうか。
30分のような気がすれば、10分のような気もする。
多分、1分くらいだけど。
ただ、気がつけばチャイムが鳴っていた。
しかし、教室には戻れない。
隣の席の平本には、会えない。
全部、自分の
「全部、自分のせいだ。とか思ってるの?」
突然の声に、振り返ると同時に飛び跳ねてしまった。
「りゅ、龍ヶ崎、、さん。どうして…。」
「来斗が、あそこに行けば面白いものが見れるって言うから来たけど、全然面白くない!」
察した。
はめられたのか。
「なんか、ごめん。」
「さっきもそうだけど、どうしてすぐ謝るの?別にゆーまが悪い訳じゃないじゃん!」
「でも、秀也くんのこと言ってなかったのは事実だし。その、なんというか。」
「あー!もう!そういうのやめてよ!」
そう言って、龍ヶ崎はいきなり腕をつかんでくる。
「え、なに、ちょっ。」
「どうせホームルームには間に合わないんだし、ちょっとあーしに付き合って!」
つかまれた腕を引っ張る力に、身を任せる。
一体、どそこに行くのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます