第21話 早く会いたい。

 嫌なはずの朝の目覚めが、今日に限っては楽しみの一つですらあった。



 今日も8時に起き、いつも通りの準備を済ませて家を飛び出る。


 気持ちは跳び跳ねているかのようだ。

 ルンルンと通学をするが、流石にスキップはしない。



 今日も無事に学校へ到着し、すぐに平本を探す。が、見当たらない。


 まだ来ていないのか。と、諦めて自分の席に座り何気なく廊下の方を見ると、全然見つけることのできなかった平本が歩いていた。

 皆口と一緒に。


 流石はイケメン、すでに仲が良さそうに話をしている。



 平本が1人で席に戻ってくるのを期待するが、彼女は教室には入らず1人でどこかに行ってしまった。


 なぜか代わりに皆口が満面の笑みで近づいてくる。


「春日井くんおっはよう!」


 男版、龍ヶ崎と言ったところか。

 挨拶のテンションが全く同じである。



「お、おはよう。」


「どうしたの?朝から元気ないね~!」


 皆口と2人だけで会話するのは初めてだ。


 同性とはいえ、流石に緊張してしまう。



「元気だけど…、急にどうしたの?」


「こっち見てたし、もしかしたら実咲ちゃんに何か用があったのかな~って。」


 気がつけば皆口も名字ではなく名前で呼んでいる。


 これは簡単に呼べる龍ヶ崎や皆口が凄いのか?


 それとも呼ばれる平本が凄いのか?


 はたまた呼べない自分が情けないだけなのか。


 難問である。



「ほら、ぼ~っとしてないで早く実咲ちゃんのところに行った方がいいよ!善は急げ、だぜ?」


 無理やり立たされ、背中を押された。


 なんだ?なんなんだ?

 そんなに急ぎの用事じゃないのに。


「ちなみに、多分だけど実咲ちゃんはあそこに行ったと思うよ!」


「あそこって……?」


「あそこはあそこ!」


 あそこ。というのがどこかわからないまま、ほぼ強制的に教室の外に追いやられてしまったため、仕方なく平本を探しに行くことにした。

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