第20話 あの時の彼女。

 帰りのホームルームが始まる前の平本の

「作戦会議しようよ。」という一言で一緒に下校することになった。



 作戦会議と言っても、本当に会議をするわけではなく、秀也くんのことを色々と聞きたいだけらしい。


 家の方向が途中まで同じだったので、答えれることには答えてあげようと思い、今は2人並んで帰り道を歩いている。



 しかし、クラスメイトの女の子と一緒に帰るなんて初めてなので、冷静を装うが緊張が限界を越えて言動がおかしくなりそうになっていた。


 そんなことを知らない平本は普通に話しかけてくる。


「手と足が一緒にでてるよ?」


「え、あ、ごめん。」


 既におかしくなっていた。



「別に謝らなくてもいいけど。てか、秀也くんってどうしてあんなにかっこいいのかな?ヤバいよね。」


「あー、うん。なんでだろう。」


「しっかり考えてよ!」


「は、はい。」


 女の子と帰れるのは嬉しいけれど、平本のテンションの高さに緊張が相まって話についていけない。



 ひとまず落ち着こうと深呼吸をしていると、靴紐がほどけてしまっていることに気がついた。


「ごめん、靴紐結ぶから先に行ってて。」


「はーい。」


 先行っててと言ったものの、本当は待っていてほしかった。

 だが、平本は待ってくれなかった。残念。



 急いで紐を結び直し、顔を上げた瞬間、唐突に不思議な感覚が襲ってきた。


 懐かしさというか見覚えがあるというか。


 ただ、その謎の違和感は、平本に近づくための足を止める理由にはならなかった。


「あ、やっと追いついた?」


 そして、それは平本の隣に並んだときには消えていた。


「うん、ごめん。」


「謝りすぎだって!」


 それから少し話すと、別れの時がやってきた。



「じゃあ私、こっちだから。今日は色々ありがとね!また明日ー!」


「うん、また明日。」


 挨拶をし、平本は右に曲がっていった。



 去っていくその姿を見ていると、先ほどの違和感がよみがえってきた。


「あ、昨日…。」



 そうか。


 クラスメイトの女の子と一緒に帰るのは初めてではなかった。


 その後ろ姿を見てようやく誰か気づく。


 昨日の放課後、下校デートをした彼女は平本だったのだ。


 確信はしたものの確定ではないので、明日確認してみることにした。



 なんだか奇跡的で、早く平本に聞いてみたかった。


 今は、明日がとても楽しみだ。

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