第16話 加害者の被害。

 平本は席に戻り、机に顔を伏せている。


 それはまるで今朝の自分のようだった。



 無事かどうかはさておき、地獄のお昼ご飯は終わりを迎えた。


 結果として、一番の被害者は加害者であるはずの平本となってしまった。



 あれから平本は魂が抜けたような状態で、交際を否定する秀也くんと高嶺の言葉も、あまり届いていない感じだった。



 クラスの主役と学校のアイドル。


 付き合っていてもおかしくないくらいで、むしろ納得してしまうほどだが、そういう事実はない、らしい。


 というのも、彼と彼女は少し前までよく告白されていたのだが、全て断っていた。


 秀也くんは好きな人がいるからと言っていたそうだ。

 相手が誰とか、本当にいるのかというのはわからないが、理由があるだけ良かった。


 問題は高嶺の方である。


 彼女は断る理由を聞かれても一切答えてくれず、学校七不思議の一つとまで言われ騒がれていた。


 そのせいか、いつしか実は隠れて秀也くんと高嶺が付き合っているのではないのか、という噂が流れ始めた。


 それが理由で告白を断っていたのだと思えば辻褄が合う。



 だがお似合いだと思う分、隠している理由がわからない。


 隠さなくても、皆祝福してくれそうな気がするが、当人達は否定している。


 しかし隠れて付き合っているという内容の噂のせいで否定した分、信憑性が増していってしまい、ほとんどの人がこの噂を信じてしまっている状況だ。



 秀也くんと仲の良い皆口でも、真相を知らないらしく、先ほどの発言も本気なのか冗談なのかわからなかった。


 ちなみに、今はこうして隠されていることが真学校七不思議の一つとされている。



 ただ転校生である彼女はその噂を知らなかった。


 それに噂だとわかっても2人がお似合いだというのは変わらないし、そのポジションになれる自信というのは誰もないだろう。



 つまり噂が流れた時点で、誰も秀也くんと高嶺に告白することができなくなってしまった。


 だからこそ好きな人がいるという秀也くんも、初対面の女の子に告白されることがないと思い、お昼ご飯を食べてくれたのだろう。



 平本はこの噂のおかげで秀也くんとご飯が食べれた。


 しかしこの噂のせいで秀也くんが遠くなってしまった。



 一歩進んで二歩下がる。そんな日もあるさ。



 なんて。冷静に平本の現状について考えている自分も似たような状態だった。

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