第13話 素敵な勘違い。

 場違いだし、間違いもあった。

 ただでさえここでご飯を食べるのはおかしいのに、この空気は耐えられない。


 左からギャル、ギャル、美少女、チャラ男、イケメン、イケメン、転校生。そしてリア充の中、まるでライオンの群れにお弁当だけ持って入れられたうさぎの様な自分。



 その唯一の武器であるお弁当のメインと言えるハンバーグも、緊張のせいで味がわからなくなっていた。

 そんなハンバーグを食べながら考える。


 どうしてこうなってしまったのか。



 それはいつもの休み時間だった。


「春日井くん、今日ってお弁当?」

 突然、隣の席の転校生に尋ねられた。


「うん、そうだけど。」


「よかったぁ!じゃあお昼ご飯一緒に食べようね。」



 えっ?!ええええ?!えええっっ!!!?!!!


 今日話したばかり女子にご飯に誘われてしまった。


 嬉しい。嬉しすぎる。


 学校で女子と一緒にお昼ご飯を食べるなんて初めてだ。というか、誰かと食べること自体初めてだった…。



 舞い上がってしまい二つ返事したのだが、これが失敗だった。

 もう少し疑えばよかった。今ならそう思う。



 そして、問題の昼休み。


 チャイムが鳴り終わり、転校生の平本が声をかけてくる。

「じゃあ、行こっか。」


「え?行くって、どこに?」


「どこって…」


 どこに行くのか理解できずに聞き返すと、彼女はそちらを指差した。


 そこにいたのは学年の人気者、『板東ばんどう 秀也しゅうや』だった。


 運動もでき、イケメンで頭も良い彼はよく、んと呼ばれている。


 文字通り、まさにこのクラスの主役だ。


 まさか……。



「秀也くんと一緒に食べたいから手伝って!」


 無 理 。



「なんで俺なの?!他にもっと適任な人いたでしょ!?」


「だって私、他に話したことある男子いないし。女子だとライバルになっちゃうでしょ?」


 なら一人で直接誘えよって思った。



「それに、龍ヶ崎さんもいるから。」


「どういう意味?」


「とぼけなくてもわかってるって!大丈夫、私も手伝うよ。」


 この時は、この言葉の意味もわかっていなかった。



「とにかく、早く行こ!」


 そう言って腕を引っ張ってくる彼女の手をどうしてか振り払うことができなかった。


 それは優しさというより、女子とのふれあいを楽しんでいただけだった気がしている。

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