第12話 担任と転校生。

 朝のホームルームでは、昨日されなかった新担任の自己紹介が行われた。



「今日からこのクラスの担任だから、皆よろしくな。」


 新担任の『赤木あかぎ 新汰あらた』が名前を言わなかったのは、彼が去年このクラスの授業を担当していたことがあり、既に皆が知っていたからだろう。



「いや、昨日からじゃん!」という生徒のツッコミと共にクラスが笑いに包まれた。



 この通り彼は、生徒と仲が良く、友達のような距離感の先生だ。


 そのため、生徒からは大人気でかなりモテる。こんなにも女子高生からモテるのならば、全ての男子が高校の教員になりたがるのではないだろうか。というくらいにモテる。羨ましい。



「昨日までは仮で今日から正式に担任なんだよ!」


「はいはい、わかりましたー!」

 また誰かの返事でクラスに笑いが生まれる。


 このクラスに居たくない。


 きっと、新担任の自己紹介を聞き、こんな風に思ったのは自分だけだろう…。



 そしてその後出席をとり、朝のホームルームは終わった。




「あの、春日井くん。」


 授業が始まるまでの間を寝て過ごそうと思っていると、急に隣の席から名前を呼ばれ、驚いてしまった。


「えっ?あ、なに?!」


 このキョドりっぷりは流石に自分でも引く。



「そんなに驚かないでよ。私、昨日転校してきた『平本ひらもと 実咲みさき』。これから隣の席だし、よろしくね。」


 は?抱きついてこい。それかキスしてこい。それができないのならよろしくなんてできないな。


「あ、えっと、よろしく。」


「うん。じゃあまたね、春日井くん。」



 …何はともあれ、自然な会話はリア充への第一歩だ。

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