第8話 月夜のお散歩。
目を覚ますと、夜になっていた。
キッチンでは母が料理の仕込みをしている。
「今日はカレーよ。」と、聞く前に教えてくれた。
まだ出来上がるまで時間がかかりそうだったので、部屋の片付けをしようと思い、自室へ戻る。
30分ほどかけ、ある程度までキレイにできたので、満足だ。
しかし、動いた分お腹が空いてきた。
もう一度リビングへ行くと、カレーは出来上がっていた。
中学3年生になったばかりの妹と、仕事終わりの父もテーブルにつき、家族揃っていただきますの挨拶をする。
やはり家族で食べるカレーは最高だ。
口には出さないものの、そんなことを思いながらカレーを食べ終える。
そして、母にごちそうさまと伝え、お風呂に入ることにした。
まだお湯が溜まってないとのことで、シャワーで済ませることになったが、それでもスッキリしたので充分だ。
それから歯を磨き、完全にすることがなくなったので少し散歩をしようと思い立つ。
たまに行っているこの散歩には、特に目的もなく、時間制限もない。
気の向くままに歩くだけだ。
早速、準備をして家を出る。
どこへ行くわけでもなく、適当に歩いていると公園があった。
あそこで休憩しよう。と思い、中へ入る。
すると、1人の女性がブランコに座っていた。
よく見ると、その女の人は涙を流している。
「どうしたんですか……?」
勇気を出して聞いてみた。
「……恋人に、フラれたの。」
「そ、そうなんですね。」
ありきたりなやつだった。
話を聞いた以上、無視はできず。
とりあえず慰めることにした。後援することにした。公園で。
「それは辛いかもしれないですけど、元気出してください。」
「……」
「またきっと、いい出会いがありますよ。」
「……」
「ほ、ほら、まだ人生これからじゃないですか。」
「……」
「だから、その、どうにかなりま」
「うるせぇんだよ!!!」
「ヒッ!?!?!?!?!」
話している最中に急に怒鳴られ、変な声がでてしまった。
「さっきから黙って聞いてたら綺麗事ばっかり並べやがってよぉ!!!」
「え、いや、あの…」
「どうせお前みたいなやつは恋愛の一つもしたことねぇんだろ?!」
図星を突かれ、何も言えなかった。
「そんなクソみたいなアドバイスいらねぇんだよ!!」
そして、この人が恋人にフラれた理由がわかった気がした。
「お前みたいなやつはさっさと消えろ!!」
彼女はそう言って、鞄を振り回し始める。
さすがに怖くなり、その場から走って逃げた。
散歩のはずが散走になってしまった。
そう思いながら辺りを見渡す。
すると、女の人の姿はなくなっていた。
そして、見たことのない風景だった。
つまり、迷子になっていた。
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