第15話 前世の夢

「ただいまー」


 帰宅して、自室に入る前にリビングに一旦顔を見せにいくと、ソファにセーラー服を着た般若がいた──間違えた。不機嫌で顔が歪みきった舞だった。袋から固い煎餅を次々と出してバリバリ食べている。トレードマークのツインテールから出ている短い髪の毛が逆立って角のように見えた。

 魂は成人済みであるせいか、見かけは若いくせにやってることはババくさい。


 舞は鋭い眼光を爛々と輝かせてこっちを向いた。足がすくむ。麻痺の魔法をかけられたようだ。変な汗も出てきた。一体何があったんだ。


 彼女は煎餅を食べていた口の両端がきゅうっと上げて白光りした犬歯がのぞかせると、地獄の底から湧き上がったような声音を響かせた。


「巨人の股間を蹴り上げた奴が『妹』で悪かったわね……」

「……あー、そういえば、そんな声が聞こえたなぁ」


 なんとか眼球だけは動かして舞の視線から逃れようとしたが、あっちの方が立ち上がってずんずん近づいてきた。


「とぼけるんじゃないわよ。そんなことを知っている奴がこの世に何人いると思っているのよ。私だってねぇ、もっとかっこよくて優しくて頭のいい爽やかエロくないお兄ちゃんが欲しかったのよぉ~」

「か、かっこ悪くても頭悪くてもエロの感性はあるのに、かっこ良くて頭も良いのにエロだけないなんて奴がいるのかぐえぇぇ!」


 万力で締め上げられるように襟元を片手で掴まれた。


「『この世にまずエロありき』みたいな論理で語るんじゃな~い」


「そうだよね。わかるよ」などの同意や他愛もない話で誤魔化せばいいのだろうが、わかっていてもついつい反抗してしまう。


「お、落ち着け。よく考えたらお互い様じゃないか。エ、エロい兄貴と巨人の股間をけった妹と……な!」

「どこがお互い様よ。私のは巨人を倒すための必要手段じゃない! まったく」


 ひと暴れして気が済んだのか、舞は急にパッと手を離した。

 喉が圧迫されて出る咳を、腹式呼吸を意識して治す。


「随分と騒いでいたみたいだけど、ミッションは無事クリアできたわけ?」

「あー、それが……大騒ぎしただけで終わっちゃってさぁ。もうなにがなんだか。舞さん達にはあまり関係ないことなので、もうこれでおしまいって事にはなりませんかね」

「私はそれでいいけど、そうもいかない人たちがね」


 舞はため息をついて、ポケットから自分のスマホを取り出した。スマホは舞の手の中でひっきりなしに震えている。メールやSNSの着信を知らせるバイブのようだ。


「ユミだけじゃない。知らない人からも問い合わせが殺到よ。『M様どうしちゃったの? M様に何があったの?』って。もう、ユミが私の連絡先教えたのかな。あまりの量に気色悪くなって嫌になっちゃう」

「だからそんな顔をしていたのか。たいしたことじゃないよ。『気にするな、ほっとけ』って言っとけばいいよ」

「たいしたことって、要するになにがあったのよ」

「まあ、今までのうっぷんがたまっていたのと、好きな人ができたってことだ」


 舞が目を見開いて息をのんだ。


「好きな人? ファンには大事件じゃん……」

「でも、現実にはいない人だから。ファンをがっかりさせるってことにはならないと思うよ」

「現実にはいない? 二次元キャラってことかしら。それはそれでガッカリ度は高そうだけど」

「そっちの方がまだいいって本人は言ってたね。憧れているのは夢の中にいる人だから。自分の理想の人を作ったんじゃないかな。だから、大したことないって言っとけばいいよ。あまり詳しいことは言わないでおいてよ。どうせがっかりするんだろ?」

「それで納得してくれたらいいけど。ユミにだけ伝えたらそこから広まってくれないかな」


 さっそく舞はスマホに何か打ち始めた。

 俺は部屋に帰った。人気がありすぎるのも大変そうだ。俺も勇者だった頃はたいへんだったかな、あまりそうは思わなかったが……なんてことを考えながら一休みした。



      × × × × ×



 むかしむかし、儂らが子供の頃は──と、

 村の長老たちが、その枯れ枝のような膝の上で話を聞かされている俺たちぐらいの頃、魔物は今ほど数も多くなく、多種多勢で群れることはなかったらしい。


 それぞれの種族ごとにコミュニティーを作り、各々に合った地域で生活していた。

 人間を襲う種族もいたが、彼らが活発に活動する場所や腹を空かせる時間にさえ気をつけていれば、犠牲者が出るのは稀だったそうだ。


 だが、六体の強力な魔物が王を名乗り、魔物を統率し始めたころから様子が変わってきた。


 俺が生まれた時には、人の未来には殆ど絶望の幕が下されていて、俺は幼い頃からどうせなら魔物に一太刀浴びせてから死にたいものだと思っていた。

 だから、国境から離れた王都の衛兵になることが決まった時には、嬉しいというより気が抜けた気分になったのを覚えている。


 だが、それは杞憂だった。

 国取りにきた魔物軍はあっという間に俺たちを追い詰めた。


 六人の魔王のうち、最も好戦的と言われる第三魔王軍に囲まれ、王都はもはや陥落寸前。

 突撃玉砕前の最後の杯は、今夜の酒かそれとも明日のものか──城内の衛兵たちにそんな会話がささやかれ、皆が悲嘆にくれていた時、俺は隊長から密かに呼び出され、ライカ将軍直々にある作戦を聞かされた。

 俺に選択の余地はなかった。そんな自由があっても断らなかっただろう。


 そのまま彼らに案内されて城の地下室に行くと、参謀や大司祭様など王の側近の中でも特に近しいといわれる方々と、その作戦に合わせて集められた人々が待っていた。


 王や王妃に仕える選りすぐりの忠実な侍従である成人男女が一組。

 さる将軍の娘で剣の腕が立つと噂されていた少女。

 大司祭を補佐していた若い弟子。

 みんな城内の者とは思えない地味な村人の服装で、革袋などを背負っている。


 そして、城内の顔見知りの衛兵が数人──俺もその中の一人だ。年齢は壮年から十代の若者まで。共通点は健康で槍や剣の扱いに定評のある者、というところか。俺が一番若かった。


 俺たちは着ていた衛兵の鎧を脱いで、持ってきた自前の服に用意されていた鎖帷子を服の内側に着るように指示された。

 俺たちが着替えている間、城の神事を司る大司祭が、俺たちに魔物除けの『祝福』の言葉を浴びせ続けた。


 着替え終わると、将軍がまた誰かを連れて入ってきた。

 いつも遠くから眺めていた立派な身なりの王と王妃だ。


 王妃は薄汚れた服の幼い少女を抱いていた。

 服だけじゃない。美しい金髪は肩あたりでわざとぼそぼそに切られたうえに泥まで塗られ、顔には白く高貴な肌を隠すように炭がこすりつけられていた。

 だが、王妃は自分の顔や服が汚れることも構わずに少女を何度もぎゅっと抱きしめ、彼女の顔にキスの雨を降らせていた。


 姿は変わっているが、少女はカトレア姫だ。城内の花と謳われ、皆に可愛がられていた姫はまだ五歳と聞いている。


 王に肩をそっと押されて、王妃はようやく目に入れても痛くないほど大事にしていた姫を下ろした。

 王妃の後ろでかしこまっていた侍女が、手に持っていた炭をキョトンとしている姫の顔にこすりつけた。王妃の涙とキスで、姫の顔の汚れがすっかり落ちてしまっていたからだ。


 王妃は溢れる涙をぬぐうと、姫の顔の高さまで屈み込みもう一度抱きしめた。そしてすぐ体を離すと、姫の目を見つめてしっかりとした口調で言った。


「姫、母からの最後の贈り物です。あなたの新しい名前は『リリア』。古い名前は忘れて、今日からリリアと名乗りなさい。いいですね」


 小さな姫も母親を見ながら黙って頷いた。

 王は腰を下ろし、小さな姫の手を取って、潤む目で見つめながら静かに話しかけた。


「私達の大事な姫、今日からはこのアトキンとセアラがお前のお父さんとお母さんだ。二人の言うことをよく聞くんだぞ。そして、レティシアはお姉さん。前からお姉さんが欲しいと言っていただろう。仲良くしなさい。他の者たちも、みんなお前の家族だ。お前を守ってくれる。ご挨拶をしなさい」


 姫は俺たちの方を向くと、両手でぼろぼろのスカートの裾をつまんで丁寧に頭を下げた。

 宮廷風の挨拶だ。この作戦が落ち着いたら、別の挨拶のやり方を教えた方がいいだろう。ボロをまとう娘に相応しい庶民流の挨拶を。


 王は決戦前に秘密の通路から姫を逃す決心をしたのだ。王家の血を絶やさない為に。そして強い聖属性の力を持つが故に『人間の希望』と言われた姫を中心に、いつか再び我らの国を興盛する為に。


 城の精鋭から選ばれた俺たちは『とある村から逃げてきた、いち村人家族とその親戚たち』となって、姫の身分を隠しながら一生命をかけて守る任に就いたのだ。


 まずは東の地域を目指すことになっている。その辺りは、俺の剣の最初の指導者であった戦士レグルスの活躍もあって、比較的魔物が少ないと言われているからだ。


「急ぎましょう。サイラス将軍が魔物軍の気を引いているうちに」


 ライカ将軍に促され、王は姫をアトキン夫妻に引き渡した。

 俺たちも支給された荷物とブロードソードを持ち、姫と仮の家族を取り囲んで立った。俺は後方に陣取った。


 姫は周りを見回していたが、ふと俺の顔をじっと見始めた。まだ幼いのに、こんな状況でも思慮深そうな冷静な目をしている。王家の姫とはこんなものなのか……姫の視線を受け止めながら俺は思った。


 将軍が部屋に積んであった荷物をどけると、重そうな石のドアが現れた。これが秘密の通路らしい。二人がかりで引っ張ると、カビ臭い風が吹き出して、暗いトンネルが現れた。


「頼んだぞ」

 将軍が松明を先頭の兵士とアトキンに渡して声をかけ、いざトンネルをくぐろうとした時だった。


「待って! お父様、お母様」

 姫が振り向いて声をあげた。


「だめです。お行きなさい」

 王妃が泣き声で叫んだ。


「違うの。お母様」姫は俺の袖を引っ張った。「お願い。この人は置いていってください」


 俺も驚いたが、周りも不意をつかれた表情をしていた。


「姫、この兵士が何か?」将軍が尋ねた。


 俺は何か失礼をしただろうか──俺の心臓は緊張でドキドキしていた。

 姫は俺を下からじっと眺めながら言った。


「この方はきっとお城の役に立ちます。私は平気です。だからここに置いてください。お願いします」

「しかし、姫。この若者はかの有名な戦士レグルスの弟子だそうです。腕も立ちますし、かの者の顔を知っています。お役にたつでしょう」


 将軍が優しく諭したが、むくれた姫は首を振って動こうとしなかった。ふむ……と将軍は唸って自分の顎に手をやった。


 俺としては、怪我したおっさんを助けて友達になったら強かっただけだったのだが。

 でも、田舎から城の衛兵に抜擢された訳は、徴兵の時ちゃっかりそうふれこんでいたからだ。


 もちろんレグルスとは仲が良いし、剣も習ったから役に立つつもりだ。期待は裏切らない。でも、このままではすんなり出発できそうにない。


 俺は姫の前に跪いて、姫と視線を合わせた。恐れ多いことだが今は仕方がない。


「姫、俺は国の役にたつならどこで戦ってもいいのです。ですが、今は姫がここから旅立たなくては皆が困ります。この時の為に戦っている者もおります。私は、姫が城を無事に出るまでついていって、そこから引き返して城に戻ります。それならどうでしょう?」


 俺は将軍の方に向き直った。


「俺がいなくてもレグルスにはきっと会えます。優しい男ですから、困っている人はほっとかないはずです」


「本当? 本当にここに残ってくれるのですね!」

 姫は嬉しそうに身を乗り出した。


「はい。俺は魔物をぶっ飛ばすことができれば、それでいいのです」


 俺は姫を安心させるために優しく笑いかけた。

 言葉に嘘はない。それに、この過酷な包囲の中、姫を脱出させるために戦うのと、この城を守るために戦うのとでは、どちらも命の保障は同じくらいなのだから。


「よかった。私、お母様達にも助かって欲しいの」


 姫は小さい両手で俺のごつごつした両手をくるんで目を閉じた。そこから心地よい温かさが伝わってくる。体温だけじゃない、不思議な、大きく、強い流れが。


「あなたに眠る宝石を、つるぎに変えることをお許しください。あなたの宝石は大きい。立派な剣になるでしょう。どうかその刃を私に磨かせてください。美しく、強く、そしていかなるものにも折れることのない気高き剣を、どうか私達のために掲げてください」


 そう呟く姫の顔は、まるで大人の女神のように神々しく輝いていた。


 手から伝わる流れは益々強くなり、熱く光り輝きながら俺の中に入り込んだ。頭の中へ腹の中へ足の先へ……螺旋を描いて周り巡りながら今まで気づかなかった体の底の得体の知れない何かに触れて、存在を意識させて、湧き上がらせた。


「国に剣と盾が揃いし時、魔物との境が解かれ、穏やかなる大地への扉が開かれるであろう……」


 部屋にいた大司祭が茫然と唱えた言葉に、王が驚いて言った。


「それは、隠されている予言の章の一節ではないか」


 姫は目を開けると、にっこり微笑んだ。

「さあ、皆さん参りましょう」


 姫は俺の手を引いて暗いトンネルに飛び込んだ。慌てて松明を持った兵士とアトキンが追いかけ、他の者もそれに続いた。


 トンネルは、たまに枝分かれしたり城の下水道のような場所を横切ったりした。

 将軍の話では、道の見分け方はアトキン夫妻しか知らないはずだったが、姫は迷うことなく進み続け、ついに森の中の茂みに隠された出口に到達した。


 俺たちは注意深く辺りを探りながらトンネルから出た。城からはだいぶ離れ、人もほとんど訪れることのない山深い場所で、魔物の包囲網からも抜けているはずだった。


 しかし、磁力感知式方位指示器コンパスを見ながら草叢をかき分け進んでいると、当たり前のように数体の魔物のグループが現れた。

 武装に描かれたマークによると、今城を包囲している軍の奴らだ。


 大小様々な姿態の魔物たちは大喜びしていた。陣の外で半分サボりながら棚ぼた的な手柄を探していたところ、思いがけない数の人間を見つけたということらしい。


 元兵士は皆剣を構え、姉役の少女は自分の後ろに姫を隠した。


 俺は皆の前へ出た。

 魔物を目の前にした時、初めて自分の成すべき事を悟った。


 姫の力が触れて精製したものを、今度は自分が揺り動かし奮い立たせる。

 片手で掲げたブロードソードに、熱い力と魔物への怒りが乗り移り、吹き上がる。

 魔物の余裕が恐怖に変わっていく。

 神職でもない人間に、何故我々がここまで恐怖するのか──そう問たげな奴らに答えを探させる時間はやらなかった。


 目の前全ての魔物を、一刀両断だ。

 魔物の体が、溶けるように崩れていく。

 並みの武器では司祭の祝福を受けてもなかなか刃が立たないのに、姫のお陰で発現した力をまとった剣は、他の武器とは比べものにならない破壊力だった。


「もう一本剣をください!」

 壮年の兵士から投げられた剣を受け取って、俺は森の斜面を駆け下りた。


「がんばって!」

 姫のかわいい掛け声が聞こえた。


 俺は思うがままに突っ込んだ。

 数にものをいわせ、俺たちを舐めくさった装備と陣形を組んでいた魔物たちは、思いがけない恐怖と力に出くわして、総崩れとなっていった。


 俺は魔物の中を走り続けた。


「そなたは何者か!」

 サイラス将軍が血まみれで盾と剣を振るいながら問う。


ヴウォッ、ウブォッお前は何者だ!」

 でかい図体で鉄槌を振り回し、将軍と対峙していた魔物が喚く。魔物の言葉はわからないが言いたい事はだいたい伝わる。


「俺は、姫の剣士だ!」

 鉄槌をくぐり腹に突き刺した剣は、巨体を周りの魔物もろとも粉々に吹き飛ばした。


 城の門が開いて、高らかなラッパと共にライカ将軍の軍が出てきた。

 馬に乗った十騎足らずの騎士と城内の兵士をかき集めてきたらしい兵装ばらばらの集団が、将軍の号令と共に混乱して逃げ惑う魔物たちを追い立てていった。


 最後の魔物が地平線の奥に消えた時、ライカ将軍が剣を振り上げて叫んだ。


「勝鬨をあげろ!」


 まだ土煙が漂う戦場に人間の勝利の咆哮が響き渡った──。


 一息ついて、俺たち動ける者が負傷者を助けるために城外を歩き回っていると、城壁で見張りをしていた兵士が遠くを指差して何か話していた。

 襲撃ではなさそうだ。


 血の匂いが漂い、時折うめき声が聞こえる戦場跡を、小さな金色の風がかけていった。

 城の門からも人影が走って出てきた。ロングヘアを編み束ねて、簡素な鎧に弓矢を背負った王妃だった。


「お母様! お母様!」

 走ってきた姫が王妃の胸に飛び込んだ。王妃は別れる時よりも強く抱きしめていた。


「お母様、私もうおうちに帰っていい?」

「ええ! お帰り、私のカトレア!」


 国の救い主、小さくて偉大な聖女!


 俺たちは姫を讃える歓喜の声を上げて、不思議な力を持つ姫に感謝の意を伝えた……。



    ×  ×  ×  ×  ×




 歓声を遠くに聞きながら、だんだんと目が覚めていった。

 俺の部屋まで温かい夕ご飯の匂いがする。母さんが帰ってきたらしい。


 一旦ベッドから体を起こしたが、さっきまで漂っていた血煙の匂いと荒廃した景色とのギャップに頭がクラクラして、また倒れこんだ。

 どちらが夢でどちらが現実なのか……それを確かめるために、今までいた世界の記憶をもう一度反芻する。


 あの後、俺たちが魔王軍を破ったことはたちまち周辺の国々へ広まり、俺は『聖なる姫の剣士』として助けを求める地域や町へ赴いて、次々と魔物の支配から解放していった。


 それと共に同盟を結ぶ国や都市が増えて、人の国はかつてない大きさの連合国となり、人の脅威を認知して再編強化された魔物の軍に一丸となって立ち向かうことになった。


 長い間、一進一退の攻防が続いていた。

 今思えば、お互いがこの状況に疲弊していた頃の、姫の魔王との会談の申込であった。


 そして、俺は第六魔王と会って死んだ。

 そのあとのあの世界の記憶はない。やはり、俺は一度死んだのだ。


 俺が死んだあと、姫はどうしただろう。

 それが一番気にかかる。何か知る方法があればいいのに。


 腹が減ってる。夕ご飯の匂いが呼んでいる。

 部屋から出てリビングに行った。


「ママぁ、お願い。新しいスマホにしてよー。もうこれキモくて使いたくない」

 剣とは無縁ののんびりした世界に相応しい、舞の甘えた声が聞こえた。

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