第4話
こんな生活を続けてどのくらいになるだろう。
もともとは、よく居酒屋で見かける客だった。その店で仲良くなったわけではない。
最初はホームレスかと思った。風貌がまんまだった。だが、俺とほぼ同じ頻度で居酒屋に通う金があるのだから、そうではなかったのだろう。店主に聞いてもみたが、たまに来る人だねーとだけで、それ以上話題に上ることはなかった。
ある雨の日、いつものように店へ行くと、シャッターが閉まっていた。臨時休業の張り紙の下で、雨に打たれながらうなだれ座り込んでいたのが、あいつだった。
知らないフリもできた。死んでいるようにも見えたから、その確認でもあった。言い訳をしようと思えば他にもいろいろできるが、とにかく、俺は声をかけ、冷え切った体を温めさせようと、俺の家にあげてしまったのだ。
それが最初だった。
名前も年も住所も仕事も何も知らないヤツが俺の家に入り浸り、
俺もそれが当たり前になっているという異様な状況が、だんだんおもしろおかしく思うようにもなった。
俺にとっては、いい話相手だ。一人だと、休日気づけばずっと声を発してないことも珍しくない。それがなくなった。
お互い女もいないし、いい暇つぶし相手になったのだろう。
いや、違う。俺の家でダラダラ過ごすだけなのだから、暇に変わりはない。
ただ、俺の家にあいつがいることが、いつの間にか当たり前になり、いない日は心なしか部屋が広く感じてしまうようになった。
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