第2話

 どのくらい時間が経ったのか、目が覚めるとあいつは新聞を読んでいた。

「まだいたの」

「ダメだった?」

 コーヒーの匂いがする。あいつが勝手に湯を沸かしていれたのだろう。缶コーヒー派だったが、あいつがいつのまにかインスタントの瓶を持ち込んでいた。

「いや、別にいいけど」

 今度こそちゃんと起きる。窓から入る日差しを受けて、気持ちよく背伸びをした。

「今日仕事は?」

 といっても、あいつが何の仕事をしてるかは知らない。

「休み。お前は?」

「休み。あれ?マックは?」

 さっき俺が半分食べたマックがなくなっている。テーブルに置いたはずだ。

「食っちゃったよ」

 もともと、あいつの朝飯になるはずだったマックを俺が横取りしたのだ。

 でも、先に手をつけたのは俺だった。当然、残ってるはずだと思っていた。

「寝起きにマックなんて食うもんじゃないだろ」

 言われてみれば確かにその通りだが。

 じゃあ俺の朝飯はどうなるんだ。冷蔵庫に何もなかったのは、昨夜の時点で判明している。

「しょーがねーな、ちょっと待ってろ。今なんか作ってやるよ」

 それでも、その中から、適当に見繕って皿に飯として出してくれるのがあいつだ。

 俺が何分前に食いかけたかわらかないマックよりも、あいつの作ってくれる飯の方が何倍も嬉しかった。

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