第24話 オスかメスか
「とりあえず落ち着きましょう!お兄様!」
「凛々しいお姿♡ステキ!!ヴィダル様!」
煽るな。オカマオウム。
何とか兄を
「そもそも、ビションフリーゼはどうやってコイツが女だと確信した?」
可哀想に、シュナンは兄の敵に決定したようだ。
「メスの臭いがしたので。」
「・・・・。」
ビションフリーゼの言葉に沈黙する私と兄。
「・・・なんか、エロいな。」
「匂いで男女を判別してたの?」
「間違えたことないわよ。アタシ。」
得意気なビションフリーゼ。
『メスの臭い』って私もするのかな?
・・・気になってきた。
兄は考え込むような仕草で顎に手をやった。
「そういうことか。
・・・お前、脱げ。」
「はあっ!?」
シュナンに向かって放つ兄の冷徹な言葉に私は素っ頓狂な声をあげた。
シュナンも驚いている。
あっ、ビックリ顔2回目っ可愛い♡
「お兄様!?シュナンは女のコですよ?」
「じゃあ、俺は目を塞いでるからリオが確認すればいいよ。」
そういって目を瞑る兄。
確かにシュナンとは女湯に一緒に入った。
でも、裸は?
・・・見てないかも。湯気凄かったし。
てか、もしも男のコだったら?
服を脱ごうとしているシュナン。
それはそれで見ちゃいけないような・・・。
思わず目を背けてしまった。
「ロザリオ!
アタシが確認するわっ!!」
上着を脱いで下着姿になっているシュナンに悶々とする私を押し退けて、割り込んできたビションフリーゼ。
「ビション。お願いね。」
はーっと力が抜けた。
ビションフリーゼの鼻息が少々荒いのは気になるが、大役を任せることにした。
「下だけでいいぞ。」
早くしろと言わんばかりの兄の横で、両手で顔を覆う私。
ゴソゴソ。
・・・カチャリ・・・パサッ。
沈黙。
「おい、どっち?」
「お・・・女デス。」
ホッと胸を撫で下ろす。
「チッ、男だったら叩っ斬ってやるのに。」
カチャンと長剣を鞘に戻す兄。
ホントにやるから怖いんだよね。
「おっきくなったリオと風呂に入るなんて許せん。俺でさえ入ったことないのに。」
ボソッと呟く兄。
ある意味怖いですって。
てか、ビションってあんなにオウムっぽい喋り方だっけ?う~ん。いや、オウムなんだけど。独りツッコミしてる私の隣に、シュナンが衣服を直してまた座ってくっついてきた。
「じゃあ、シュナンはセラフィエル様じゃないってこと?」
「一概には言えないな。」
「え?」
兄は答えなかった。
性転換の魔法?
「でも、魔法だとしても効果が長すぎます。」
どんなに高名な魔法使いだとしても性転換等の高度魔法の効果は長くて数時間だ。
だとしたら呪術?
でも、どの呪術の本にも記述はなかったはず。でも、広い世界、遠い東の国には忍術というものがあったり、遠い西の国には常識はずれのとんでもない薬品を作る学者がいたりするようだけど。
「何にしてもコイツがキャルロット=セラフィエル=ソーヴィニヨンだと明確にする方法はまだある。」
兄の目にはシュナンがセラフィエル様であるとしか映っていないようだ。
「一番手っ取り早いのは皇女に会わせることだろう。現時点でコラット近辺に滞在しているとの情報が入ってるし。」
言いながらもシュナンの反応を観察している。シュナンはというと、『皇女』という単語にも眉一つ動かない。
セラフィエル様が将来を約束した女性。
美しくて聡明な方だと評判だけど・・・。
皇女様ならシュナンがセラフィエル様かどうか確実に判断できるかもしれない。もし、シュナンがセラフィエル様だったとしたら皇女様のところに帰るのかなぁ?
とはいえ、ずっと私と一緒にいる訳にはいかない。私にできることは、唯一、シュナンが憶えているラグドール神殿に連れていくだけしかないのだから。
「じゃ、俺は業務に戻るけど。」
兄が立ち上がって制服を正す。精悍な顔立ちに神官の制服が本当によく似合う。
「ロザリオ=ビアンコ神官。
今後の予定は?」
「1週間後にはコラット神殿に到着予定です。」
「コイツは?」
シュナンを見下ろして兄が言う。
本当は例の黒い布を使って潜入するつもりだったけど、シュナンの存在自体がバレちゃったしなぁー。
「シュナンも一緒に・・・。」
「はあっ!?
連れてきてどうすんだよ。」
あからさまに不機嫌になる兄。シュナンの事をまるで毒虫でも見るかのような顔で見ている。
そんなにシュナンが嫌い?
それともシュナンをセラフィエル様だと思ってるようだから、セラフィエル様の方と何かあったのかな?
「仕方ありませんね・・・。」
この技はあまり使いたくなかったんだけど・・・。
一瞬、
見上げる様な体勢も完璧。
「ロザリオの~♡、一生のお・ね・が・いっ♡♡♡」
「うがっっ!!」
兄は雷に射たれたように体を仰け反らせて、そのまま倒れこんだ。
私の『おねだりの術』炸裂中。
ムックリと起き上がった兄が、私の目の前で跪いた。青味がかった栗色の瞳がトロンとしていて、私の金色の瞳から反らさない。
「お兄様?
ロザリオのお願い聞いてくれる?」
金色の瞳を見つめたまま私の両手を取って微笑む兄。
「当たり前じゃないか。
どんなことでも、リオの望み通りに。」
「シュナンを連れてコラット神殿研修に行きたいなぁ。」
「お安い御用だ。」
「わぁっ、ありがとう!お兄様!」
兄の手を握り返して最後に耳元で囁く。
「お願いね♪」
「・・・了解。」
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