第10話 お人形さん遊び
ラグドール国皇都にあるラグドール神殿は国内の神殿、教会の総本山。所属する神官達はエリート中のエリートで他の神官達の憧れだ。大神官である私の父もラグドール神殿にお勤めしてる。
そして、私の最終研修先。
次のコラット神殿とラグドール神殿で研修が終わる。といっても、今いるシンガプーラ神殿の研修は始まったばっかりだけどね。
「ラグドール神殿に行けばシュナンを知ってる人がいるのかな?」
神殿が描かれた手帳を見つめて私が呟いた。
「とりあえずの手懸かりにはなったわよね。神官だったとか?」
羽繕いをしなからビションフリーゼ。
「でもさ、シンガプーラとコラットの研修終わってラグドールに到着するのって、どんだけ頑張っても最低1ヶ月はかかるよね。
誰か他の人にラグドール神殿に連れてってもらったほうがいいと思うんだけど・・・。」
例えば お父様に迎えに来てもらってお任せしちゃう?
でも、ちょっとウザいんだよな。あの人。
私の言葉にシュナンがすがるように抱きついてきた。勿論、ウルウル仔犬eyesはもうデフォだ。首を横に振ってイヤイヤアピールも。
「まあっ!
なんて、可哀想なシュナンちゃんっ!!
拾った仔犬をあっさりドブに捨てるというような下衆の極みみたいなことをっ!!
無責任な小娘ねっ!
そんなコに育てた憶えないわよ!?」
いや、その前にオウムに育てられた憶えはありませんが?
「でもさ、この先誰にもバレずにコラット神殿行って皇都まで行くのって、結構至難の業じゃない?
移動はどうにかなるとしても神殿に出入りするのがねぇー。」
「ヴィダル様にお願いできないかしら?」
「ヴィダルお兄様に?」
コラット神殿には8歳年の離れた私の兄がいる。借りを作るのはなんだけど、この際仕方ないかなー?
何事にも動じないクールで優秀な兄には男女問わず隠れファンが多い。ビションフリーゼなんかは『自称ヴィダル様ファンクラブ会員ナンバー1兼ファンクラブ会長』らしい。
神官学校創設以来の秀才で次期大神官の証である『金色の瞳』を継承していないことを、周りの大人達は隠しもせずに落胆した。
私が生まれて間もなくの話になるけど、当時から神童と呼ばれたヴィダルお兄様推しの神官達による『反ロザリオ=ビアンコ』の動きもちょっとはあったんだよね・・・。実は。
大神官である父の力でその時は早々に鎮圧できたそうだ。
いや、私の事だけどね。アハハ。
愛情とは裏腹のスパルタ教育の反動なのか、二人の常軌を逸した愛情表現とスキンシップが一番の恐怖だったりする。
特に私に近づく男性に対しては幼児老人年齢関係なく容赦ない制裁を加えようとするのだ。
父から5歳の誕生日に貰った何の変哲もない私のビン底眼鏡は『悪魔から身を守る聖なる水晶で作った眼鏡』という曰く付きの代物らしいが、どう見てもただの硝子レンズにしか見えない。
お兄様。シュナンが女のコだったら協力してくれるかもだけど。
あっ、女装させるのは?
いやんっ。絶対可愛いわ~♡
「私のワンピ着られるかな?」
先に送っていた荷物の中にゆったりしたロングのワンピースが入ってるはず。
「あった。コレコレ。」
箱の中から水色のヒラヒラしたワンピースを取り出した。これまたお父様のプレゼントなんだけど、外ではとても着れないし部屋着代わり持ってきたんだった☆
頭からすっぽり被るタイプだったのでそのままシュナンに被せてみる。肩の辺りが窮屈そうだけど着られないことはない。
シュナンの腰まで伸びた黒髪をブラシで
あらっ♡
「まあー♡美人さん♡」
「お化粧もしてみましょうよ♡」
悪ノリする私達をされるがままにニコニコ見ているだけのシュナン。
まさかそっちの気が?
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