第9話 ココはドコ?ワタシはだあれ?
ずっと食堂で女子トークしてたら夕食の時間になってしまった(笑)
食堂隣のオープンキッチンから料理当番の先輩神官達数人の冷たい視線は感じていたんだけどね。
制服のまま夕食を済ませて自室に戻った。
とりあえず着替えてシャワー。
早めに寝よう。
「おかえりー。」
オウムのビションフリーゼと天使(仮)が私の荷物の中にあった大量のお菓子を引っ張り出して、床の上で貪り食っていた。
仲の良いことで。
それまでビスケットを夢中で食べていた天使(仮)の顔が私の姿を見つけてパアッと輝く。まぶしっ!!
「天使(仮)もだいぶ元気になってきたみたいね。」
二人の間に食堂からペットのオウムと仔犬の為にと貰ってきた、ハムと玉子のサンドウィッチと余り物のおかずを置いた。
オウムの食べる物じゃないと思われたよねー。自分で食べるんだろー?どーせ。みたいに思ったよね。大食い女決定だけど気にしない!
「天使ちゃん♡さっき起きてシャワー浴びたとこよ♡」
目がハートでうっとりしていたビションフリーゼの表情がみるみる変わっていく。
「・・・・って。
何なの?あんた達の距離感。」
「私が聞きたいよ。」
ビションフリーゼが半眼でこちらを見ている。
シャワーを浴びようとクローゼットを漁る私の後ろから、天使(仮)の腕が私の腰辺りに巻き付いている。これ、甘えられてんのかな。
てか、やっぱり身長おっきいな!!
細身なので寝てると小さく見えるけど、私より頭ひとつ分ほど高いようだ。
「チョットチョット!離れなさいよぉ!!」
私達の回りをバサバサ飛び回り引き離そうと頑張るビションフリーゼ。
「これって『刷り込み』みたいなやつなのかな?雛鳥が一番最初に見た物を親鳥だと思っちゃうやつ。」
「そんなワケないでしょ。人間なんだから。」
私の言葉をバッサリ断ちきる冷たいオウム。
ちょっと真面目に言ったんだけど。
「ビションちゃんと、ちょっと待っててね。すぐ来るから。」
天使(仮)の腕をはずして床に座らせた。
おっ、意外に聞き分けがいい。
「ぶふぉ!」
私を見上げる紫色のウルウル仔犬eyesリターンズ。
反則です。
後ろ髪惹かれる思いで高速湯浴みと部屋着に高速着替えを済ませ、濡れた髪をタオルで巻いて高速で戻った。
「アンタ、ちゃんと洗ったの?」
「洗ったわよ。」
ふと、今まで天使(仮)の声を一度も聞いていないことに気づく。あー、絶対イケボだよね☆
「喋れないみたいよ。天使ちゃん。」
「え!?そうなの!?」
薄々そうなのかなー?とは思ってたけどね。
筆談ならできるだろうかと鞄から手帳とペンを出し天使(仮)に渡した。
ベットに腰掛けた私にピッタリくっついて天使(仮)も隣に座った。
うん。近いね。
「じゃあ、まず名前を教えて?」
いつまでも天使(仮)では呼び辛いもん。
私の質問に一瞬泣きそうな目をした天使(仮)は、目を閉じて首を横に振った。
「じゃあ、何処から来たのかわかる?」
またフルフルと首を横に振る。
「ねぇねぇっ。ビションっ。」
私はコソコソとビションフリーゼの耳元で囁いた。
「天使(仮)ってもしかして残念なコなのかなぁ?」
もちろん天使(仮)には聞こえないつもりで言ったんだけど。
「んなわけないわよ。
だって、シャワーは普通に浴びてたもの♡」
覗いたんじゃないでしょうね?
このエロオウムーっ!!
裸体でも思い出してるのか、目の前のビションフリーゼは「きゃっ♡」とか言いながらバサバサ悶え飛び回っている。
「ってことは、記憶喪失?」
頭をぶつけた事による一時的な記憶障害かもしれない。
「でも、名前はないとだから、とりあえず私がつけてもいい?」
コクりと頷いて目をキラキラさせる天使(仮)。いつの間にかまたしても私の腰に腕を回している。
「クリシュナ神様のお側で見つけたから・・・・」
「クリリンは?」
我に返ったビションフリーゼが横から口を挟む。可愛いけど、それは、なんか色々マズいような。天使(仮)の顔を見てみるとなんか嫌そう。
「シュナンとかは?」
「ま、いいんじゃない?」
腕の力を少し強めて更にキラキラの瞳でこちらを見る天使(仮)改めシュナン。心なしか回りにピンク色のお花が飛んでるのが見える。
ああっ、何なの?可愛いすぎっ!!
悶絶死させる気か!!?
「ねぇ、シュナンはどうしてあそこにいたの?何か思い出せない?」
シュナンは暫く私の顔を見つめてから手帳とペンを手に持ち、サラサラと何かを描き出した。
風景?
「あ、これって・・・。」
「「ラグドール神殿?」」
私とビションフリーゼが同時に呟いた。
てか、めちゃくちゃ絵が上手いんだけどっ。
記憶もなくて喋れないって意思疎通できるかな?結構キツいな。
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