第6話 思ってたんと違う!
危うくキュン死してしまうかと思った私とビションフリーゼ(オウム)。
「もしかして神官長のところに行きたくないの?」
答える代わりに天使(仮)は黒い布を体に巻き付け直して小さく身を縮めてガタガタと震えている。
もしかして神官長に何かされたのかな?
震える程の恐怖を与えることって。。。
神官長があらゆる拷問や折檻をこの天使(仮)に与えているのを頭に思い巡らせてみたら気持ち悪くなった。
「こんな天使みたいに綺麗なコになんてヒドイことを!!あの髭もじゃオッサン!!」
私が急に叫んだので天使(仮)とビションフリーゼがビクっと飛び上がる。
「あのー、ロザリオ?
妄想膨らんでるとこ申し訳ないんだけど、このコただ単に寒くて震えてんじゃないの。」
「あ、そう?」
少なからず天使(仮)が嫌がっているようにみえたので、神官長や先輩神官に見つからないようにこっそり自室に運ぶことにした。
衰弱が激しいから元気になってから今後のことを考えても遅くはないよね?
たぶん目眩ましの魔法がかかっているであろう黒い布を天使(仮)の頭からすっぽりかぶせてみた。
「うーん、どうやって運ぼうかなー。」
台車を探してるよりこのまま運んだ方が早いよね。オウムは役にたたないし。
ここは。。。
お姫様だっこするか?
「よっこら、せっ」
また黒い塊になった天使(仮)を抱えてみる。
あれ?意外にヒョロ長いし、重たくね?
いや、私は力には自信があるし、そこまで重い訳じゃないけどさぁー。
「思ってたんと違う。」
思わずついて出る。
ふと、天使(仮)がモゾモゾと蠢いて器用に私の首に腕を絡ませて背後に回る。そして自分の体を覆っていた黒い布を私の頭から被せた。
黒い布が大きいので二人が頭から足元まですっぽり隠れる形になる。
「ん?おんぶが良かったの?」
コクリと頷く天使(仮)。
ぐはぁっっっ!
かわいーっ♡♡♡
ん?
どうでもいいけど天使(仮)。。。
地面に足ついてんじゃない?
「思ってたんと違う。」
同じ言葉を呟く私。
気を取り直して天使(仮)の両足を抱えておんぶしてみた。
「思ってたより回復してきたみたいだし、少しくらい揺らしても大丈夫みたいね。」
「アンタの『少し』が恐いわよっ。アタシの天使ちゃんに乱暴に扱わないでよ!?」
それまでハラハラ見ていただけのビションフリーゼがついに口を出した。
おいおい、いつからアンタの天使ちゃんになったんだ?
「つーか、このスプラッタな床は誰が片付けんの?」
おーーっ?
大理石の床に残った大量の血溜りとこれまた大量の黒い羽が散らばっているのを忘れてたー。
「ビション、お願いね♡」
「いやいやいや。アタシただのオウムだし。」
「しょうがない。ダッシュで天使ちゃんを部屋に置いてから片付けに戻ってくるかぁー。」
「怪我人ダッシュで置いてくるのマズくない?」
「大丈夫!あんまり揺らさないように頑張るから。」
言い終わるか終わらないうちに私は勢いよく礼拝堂を飛び出した。天使(仮)は振り落とされないように私の首にしがみつきながらも、黒い布もしっかり押さえているようだ。
幸い誰にも会うことなく自分の部屋までたどり着くことができた。途中、社務所のあたりから「誰だー!廊下走ってんのはー!!」って叫んでいる声が背後に聞こえたけど、黒い布のお陰でどうやら見つからなかったみたい。
明らかに私の身長より大きい天使(仮)をベットに寝かせて、再び礼拝堂へ向かう。礼拝堂の床の始末をしている間、天使(仮)はビションフリーゼに看ていてもらうことに。
掃除用具片手に2回目に開けた礼拝堂のドアは、何の障害もなくすんなり開くことができた。
鳥だったら何羽分もありそうな大量の羽を麻袋に詰めて、血を跡形なく拭き終える頃。。。
「何してんの?」
突然、背後から話しかけられ、ギクリとする。
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