第5話 開けてびっくりなんとやら
「待って。ロザリオ。
因みに聞くけど、ソレって爆発とかしたり急に襲ってきたりしない感じ?」
オウムのビションフリーゼがブルっと身震いした。
私の目にははっきりと見える黒い塊。
よく見ると黒い布は黒い羽根でびっしり覆われているようだ。
黒い羽根のひとつをつまみあげる。
摘まんだ指にピリっと刺激が走った気がしたが、ほんの一瞬だけだった。
「黒い羽根??鳥なの?」
「私が持った黒い羽根は見えるみたいだね。黒い布に包まれた何か、なんだけど。」
どうやらこの黒い羽根ではなく、その下の黒い布に何らかの魔法がかけられていて、通常周りから見えない様になっているみたい。
もし、あの衝撃音の後の見回りで礼拝堂にやって来た時にコレがここにあったとしても、見回りの先輩神官の目には映っていなかったのかもしれない。
それか、そもそも『異常なし』と言った先輩神官の虚偽の証言という可能性もあるか。
羽根の下の黒い布を
「ヤダ!!ヤダ!!
ちょっと待って!!
アタシ!恐い!!ムリ!!ムリよ!!」
ビションフリーゼが大声で
罰当たりな鳥だわぁー。
薄情なオウムに置いていかれて一人になる私。それでも意を決して、恐る恐る捲った黒い布の下に黒い物が見える。
髪の毛?
「人?」
獣とは明らかに違う毛並み。
艶のある長い漆黒の髪の毛が川の様に大理石の床に静かに波打つ。
黒髪を手で少し払うと血の気のない青白い陶器の様な肌が露わになった。
わっ!やばっ!全体的な顔のパーツの配置が黄金比率で完璧~。
閉じられた瞼。小刻みに震える黒く長い睫毛はか弱く幼い少年?少女?を思う。
ズッキューーン。
撃たれたよ。私。
何よ。この生き物ぉー。
天使?妖精?
キレイーっ♡
「ねえ、大丈夫?」
声をかけても反応がない。黒い布の下の黒い頭を持ち上げるとヌルリとした感触。
触った私の白い皮手袋が血で真っ赤に染まっている。
え?このコ、ケガしてる?
気がついたら大理石の床に赤黒い血溜まりが広がっている。人間ひとりの出血量としては明らかに致死量とも思える血の量。
キレイな顔は血の気を無くし蒼白している。
死んじゃう・・・!
「ロザリオ!これ、報告とかしてるバアイじゃないワよ!!?」
「わかってる!」
ビションフリーゼにもこのコが見えるようだ。
一刻を争うことをビションフリーゼも察知したようでバッサバッサと大慌てで頭上を飛び回る。
うん。とっても目障りで邪魔だね。
出血している箇所を探り当てて、傷口を塞ぐ治癒の魔法をかけた。
ここだけの話、実は私、神官なのに治癒の魔法はあまり得意ではない。
「とりあえず傷口は塞がったようだけど。
どうすんの?」
ビションフリーゼがまた私の肩にとまった。
どうやら傷口は後頭部だけのようで他に大きな外傷は見当たらない。出血の割りに後頭部の傷口が浅かったのでホッとしたのだが、もしかしたらこの血液はこのコだけのものでは無いような気がする。
「神官長に報告、でしょ?」
神殿に仕える神官の身である私には当然の義務である。
ああ、でもほんとに連れて帰りたいわぁー。ダメかなー?
とりあえず神殿内にいるであろう先輩に報告しようと立ち上がろうとした時、弱々しい白い手が私の袖を掴んだ。
黒髪の彼?彼女?がゆっくりとその瞼をあげアメジストのような紫色の瞳でこちらをじっと見つめている。
目が合っていても男か女かまだ判別できない。ほっそりとした面立ち。切れ長の形の良い瞳に長い睫毛とスッと通った高い鼻筋。痛みに耐えていたのか、歯形の残る唇からは血が滲んでその唇を赤く染めている。
中性的な顔立ちは頭上のクリシュナ神像を思わずにいられなかった。
「はわっ!!?」
紫色の瞳をうるうるさせてこちらを見つめる目は、正に捨てられた仔犬の様な目!!
乱れた黒髪が青白い顔に掛かり苦しそうに必死に呼吸する姿がなんだか色っぽい。
ゴクリ。
無意識に生唾を飲み込む私とビションフリーゼであった。
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