第3話 アイレン先輩はいい人
指南係であるアイレン先輩に神殿内を案内してもらうことになった私。
そんなに複雑な造りでもないし、今までの神殿とほぼ同じ設計なのですぐに覚えることができた。
神殿と寄宿舎を繋ぐ渡り廊下をアイレン先輩に続いて歩いている。
「えっ?
ロザリオさんって16歳なの?」
アイレン先輩が目を丸くした。
「実はそうなんですよ~。」
すみません。ビン底眼鏡のせいで年齢不詳ですよね?私。
通常神官になるためには15歳まで一般の学校で学び、その後3年間神官学校で神官としての教養を身につける。神官学校を修了して新米神官研修を受けるのは順当にいけば18歳。
中には落第したり浪人する人もいるしね。
神官学校に入学した際に30人程いた同期も卒業時には9人になっていた。
学問も厳しいけど武闘派な神官学校のカリキュラムについていけず脱落する生徒が多い。
シンガプーラ神殿の超長階段の比じゃないくらい地獄だったなー。等と回想してみる。あー、走馬灯のように駆け巡る地獄の日々。
「えっと、8つ離れた兄と競うように育てられまして、、、。負けず嫌いの性格もあってというか、教師の手に終えず一般課程を皆より2年早く卒業させられたんですよね~。進路も決定してますし。あはは。」
「君のお兄さんのヴィダルも優秀だよね。」
「兄をご存知でしたか。」
「うん。だって同期だし。
あ、ここが食堂だからね。」
「えっ!?」
おお、兄の同期。アイレン先輩、童顔ですね。因みに私の兄のヴィダルも神官で次に行く神殿でお勤めしてます。
「何かね。君の指南係もさ、
ヴィダルのご指名らしいんだよね。僕。」
「はぁ?」
ビン底眼鏡がズレる。
「で、ここが君の部屋。
先に届いてる荷物は中にあるよ。
なんでか女性部屋だけ一人部屋でトイレとシャワールームつきなんだよなー。不公平だよなー。」
口を尖らせて不満を訴えるアイレン先輩。
女性の立場が弱い神官社会。それ位優遇されても罰は当たりませんて、と心の中で呟いてみた。
「昼食はまだだよね?
皆は済んでるけど、君の分もあるはずだ。」
「あ、じゃあ、お言葉に甘えてよろしいですか?」
お腹が空いていたのを思い出した。
自室に荷物を置いてアイレン先輩とさっき通りすぎた食堂に向かう。
先輩にスープを温め直してもらい、お皿に肉野菜炒めとパンを用意してもらった。恐縮です。何から何まで、本当にいい人。
温かいスープとアイレン先輩の温かい人柄に思わずホロリとなってしまった。
「とりあえず、今日はゆっくり休んで大丈夫だそうだから。あ、でも17時の終礼には参加してね。顔合わせがあるから。場所は訓練所。
夕飯は19時、22時就寝、6時起床、7時朝食、9時に就業。
・・・はどこの神殿も一緒だね。」
「了解しました。」
アイレン先輩の業務連絡に、持っていたスプーンを置いて答えた。
「何か質問ある?」
「いえ、ありません。」
「そう。じゃ、僕は業務に戻るから。」
「あ、ありがとうございます!!
アイレン先輩!」
にっこりと微笑んでアイレン先輩は食堂を出た。
「はぁー、いい人だったなぁー。
笑顔可愛いし。ちょっと安心。」
アイレン先輩が出た扉を見つめて呟く私に、それまで鳥の剥製と化していたビションフリーゼがバサッと羽を伸ばしてストレッチをした。
「そうね。まあまあってとこね。
でもアタシはもっとこう、色気のあるオトコが好きだわ~♡」
いや、ナニ目線だし。アンタ。
鳥目か。
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