第2話 はじめまして、シンガプーラ神殿
「初めまして。先輩方。
ロザリオ=ビアンコです。」
座り込んだ姿勢から立て膝をついて長いお辞儀をした。私につられて先輩方も傅いているのが衣擦れの音でわかる。
「はっ!
さっきの轟音はもしやビアンコ神官の力だったのか!?」
誰かが突拍子もないことを口にした。
「え!?」
私は慌てて首と両手を同時に横に振る。
「随分派手な登殿だ・・・。
さすが大神官ご息女」
「いや、次期大神官だからだろ?」
「神殿が崩壊したかの如くだったな。」
「いえいえ!?
私じゃないですって!?」
必死の抵抗も虚しく、各々納得しだす先輩神官たち。
とんだ濡れ衣ですっ!
「報告!神官長殿!!
神殿内部に異常なしであります!」
「報告!
神殿外部も異常なし!」
「宿舎、異常ありません!!」
私の回りを取り囲んでいた十数人いる先輩神官たちの他に見回りを終えた先輩神官たちが続々と報告にやってきた。
先程私の身元をズバリ言い当てた髭もじゃ神官はシンガプーラ神殿の神官長様でしたか。
「あれほどの衝撃がありながら、どこも異常がないだと??」
神官長は顎髭に手をやりながら唸り声をあげた。
私の方をチラリと一瞥した目を見るとまだ疑いは晴れていない模様。ビン底眼鏡をクイっと上げて目を反らした私。
ははは。
でも、確かにシンガプーラ神殿の方から凄い衝撃音がしたんだけどなー???
頑丈だから何ともなかったのかなー?
「まあ、今後何か異常があればすぐ報告するように。持ち場に戻れ。
解散!」
「了解!」
神官長の言葉に神官たちは神殿にゾロゾロ戻っていく。その場が急に寂しくなる。
残ったのは神官長と私とオウム。
ビションフリーゼはさっきからただのオウムと化して私の肩で大人しくしている。
「ロザリオ神官。
改めて、私はシンガプーラ神殿の神官長カッタ=クルガンだ。ここに滞在する当面の間の指南係を紹介しよう。付いてきたまえ。」
「了解です。」
クルガン神官長に続いてシンガプーラ神殿の中に入る。神殿の内部構造はどこの神殿も同じような造りになっていて大きなエントランスの右奥に礼拝堂があり、エントランス左奥に神官達の社務所や訓練所がある。
エントランスから左側に進んで行くと突き当たりに訓練所が見えた。神官長はその手前の部屋のドアを無言で開けて私に中に入るよう促した。
「失礼致します!」
神官長と応接室で向き合って他愛もない会話をしながら指南係を待つ。もう7箇所めの神殿研修となるけど、この瞬間がとてもソワソワして落ち着かない。
指南係の先輩次第で研修後の正式な配属先が決まってしまうからだ。
サイベリアン神殿では理由なく嫌われて意地悪されたなー、とか思い出してくる。
理由なくではないか。大神官を約束された私へのヤッカミとかヒガミみたいなものなのだろう。
未だに男尊女卑が残るラグドール皇国では女は特にナメられる。歴代の大神官に女性がいなかった訳じゃないけど、割合でいえば男9で女1(泣)貴重な女大神官。
意地悪されたり、パワハラされたり、セクハラされたり、ジェンハラされたり、モラハラされたり。。。
もちろんやられたらやり返すのがビアンコ家のモットーだったりするので、地味に仕返ししたりしたけど。
反面あからさまにオベッカを遣ってくる方が多いのも事実。現役大神官の娘で次期大神官だからね~。
神に仕える神官も人間だってことかしら。
あっ!神官の名誉の為にフォローすると、神官に選ばれる位だから心根が真っ直ぐなひとがほとんどで理知的で優しい方ばかりです!!
いや、ほんとに。
コンコンっ。
「フィアーノです。失礼致します。」
不意にドアがノックされ、神官長と同時に音のした方に目をやった。
「入れ。」
神官長がドアの向こう側に向かって言うと、すぐにドアが開かれ小柄な男性が入ってきた。
おおっ、この方が指南係かな?
素早く私は立ちあがり指南係とおぼしき男性に居直った。小柄とか言ったけど私よりは大きいな。
「ロザリオ=ビアンコ神官。
当面の間はこのアイレン=フィアーノの指南に従い学ぶように。精進したまえ。」
「了解です!」
「アイレン=フィアーノです。
よろしくね。」
親しみやすい微笑みを浮かべてアイレン先輩が言った。
よかった。優しそうな先輩で。
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