幕間2

 ノゾミさんに出して貰った替えの服を着て、ようやく気分が落ち着いた。

 俺はベッドに腰掛けて、窓の外を見た。

 どうしてこんなことになってしまったんだろう。

 俺はコンビニに行きたかっただけなのに。

 色々な考えが頭を巡る。

 しかし、現状を打破する様なアイデアは浮かばなかった。

 まず受け入れなければ。

 今俺の目の前に広がっている光景を。


 窓からの風が頬を撫でた。

 ちゃんと呼吸ができる。どうやら地球と同じ大気組成であるようだ。

 あまりにも基礎的だが重要な事だ。

 俺は、当たり前のように呼吸ができる事に感謝した。


 身に纏う服を見る。

 服にタグは付いていないが、綿とポリエステルの肌触りだ。

 どうやらここは地球の文明と近しいのかもしれない。


 住居に関してはよく分からない。だが木目調のタンスがあった事から、この世界にも年輪のある植物は自生するようだ。

 そもそも眼の前にいるメイドのノゾミさんがどう見てもホモサピエンスに類する人類であることから、この世界自体ある程度は地球と同じ様な作りになっているのだろうと推察する。

 こうして何気なく座っていられるのも地球とおなじ重力があるからなわけで。

 元いた地球からかけ離れた世界ではないようなのでひとまず安心した。

 ではあれは一体何なのだろうと、窓の外を改めて眺める。

 見間違いではなかった。

 窓の外、目視できる程度の上空で空飛ぶ自動車がドラゴンに追いかけられているのだ。



「勘太さん、ご心配なく。屋敷には結界が張られていますのでトカゲは入ってきません」


 ノゾミさんは当然の事の様に言ってのけた。

 いや、……きっと当然の事なんだろう。この世界では。


 何故、というのは分からないけれど……。

 俺はあの寧寧とか言う女の前で熱射病で倒れた後、この異世界に降ってきてしまったらしい。

 あの女、こうやって俺が狼狽することを予見してあんな風にニヤニヤしていやがったんだな。

 俺は無性に腹が立った。


 俺はただコンビニに行きたかっただけなのに、面倒なことになったな。

 そう感じた。

 この世界の料理は地球と大差ないと良いな。

 そう思った。

 文明レベルから考えるに、この世界にもコンビニぐらいはあるんじゃなかろうか。

 そう楽観した。


 嘆いていたって仕方ない。

 異世界に召喚された瞬間に大気組成が違って窒息死しなかっただけありがたいと思わなければ。

 なんとかして、元の世界に戻ってコンビニに行こう。

 もしくは、この世界のコンビニに寄ってから元の世界に戻ろう。

 そうだ。

 例えどこに行ったって俺のやるべきことは変わらないのだ。


 さぁ、行こう。コンビニへ!!



 

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