障害物18 OL 罪子
あたしの名前は、月読罪子。
罪な女なの。
でもね、悪い人じゃないヨ。
あたしが優柔不断なせいかな、あたしの周りではいつもあたしを巡って男の人たちが争ってしまうの。
ううん、きっとあたしが優しすぎるせいね。
だって困っている人がいると放っておけないんだモン。
そのせいで勘違いさせてしまって……。
あたしってホント、罪作りな女の子。。。
あたしはその日、会社の書類を郵便局に届けるっていう重要な役目を背負っていたの。
きっとあたしの実力が認められてこんな大切な仕事を任されたんだってセンパイの男子に言われたわ。
ホント、男ってあたしがいないとダメなのね。
それでね、すごく陽射しが強かったから喫茶店で涼みながら郵便局に向かっていたの。
そうしたら、なんと、気弱そうな高校生ぐらいの男の子が、パンク系のケバい女に絡まれてるじゃない?
あたし、怖かったけど、勇気を振り絞ったんだ。
「おーい、勘太センパイ! またコンビニに行く所なのかい? 良かったらついて行っていいかな」
「くゆりちゃん。気持ちはありがたいんだけどやっぱり俺は一人で行きたいんだ」
原チャに乗ったパンクの女が男の子を追いかけまわしているわ。
あたしは書類を放り出して二人の間に割って入ったの。
「やめて! ひどいことしないで!」
決まったわ。
だって、そのパンクの女はぽかーんとしてたもの。
きっと邪魔されるなんて思っていなかったのね。
でもごめんなさいね。
あたしの前では悪は栄えないの。そういうことになってるの。
「えっと、勘太センパイの知り合い?」
「いや、知らない人……。まぁ、よくある事だけどね。俺がコンビニに行こうとすると」
ムム、やっぱり知らない人に絡まれてたのね。
大丈夫、あたしが助けてあげるから。
「来て! こっちよ!」
あたしは男の子の手を引いて走り出した。
「わっ、何ですか急に……!」
男の子は戸惑いながらもあたしについてきた。
きっと、人に優しくされた事が無いのね。でもあたしがいればもう安心よ。
「あたしは弱い人の味方なの」
安心させるためにあたしはそう言って、とにかくがむしゃらに走ったわ。
「ふぅ、ここまでくれば安心ね」
あたしは男の子を喫茶店の前まで連れて来たわ。
「ねぇ、走ったら喉がかわいちゃった。コーヒーおごってくれない?」
あたしは男の子を助けてあげたの。だからそれぐらいしてもらって当然よね。
「は……? えっと、ごめんなさい。お金あんまり持ってなくて」
男の子はあたしから目を逸らすとそう言ったわ。
高校生のくせに女の子にコーヒーをおごるお金も持ってないなんて。
気が効かないわね。
やっぱり男って、ダメね。
気がついたらその根暗そうな男はあたしの手を握っていたわ。
息も荒くハァハァ言っててすっごくキモいの。
手に汗がじっとりと滲んでて、もう最悪。
「キャー!」
あたしは怖くなって叫んだの。
「この人、痴漢です!」
「えー……」
根暗な男は自分の罪を認めたくないのか、急にあたしの手を払いのけると走り出して行ったわ。
あたしは周りの男の人に助けを求めたんだけど、そこには真っ赤な顔をしたセンパイがいて、
「ツクヨミさん、書類落としましたよ。やけに時間がかかると思って見に来たらあなたって人は……」
やだ、センパイったら激おこぷんぷん丸。
あたしは必死に、人助けをしていて遅れてしまった事を説明したわ。
センパイはわかってくれて、
「ハァ……郵便局はすぐそこですから、郵送に出したらすぐ会社に戻ってきてくださいね」
なんて、あたしを気遣ってくれたわ。
やっぱり、男は頼れる年上じゃないとダメね。
あー、良い事した後は気持ちいいな。
会社に帰る前に、頑張った自分へのご褒美にアイス買っちゃおーっと。
さっそくあたしがコンビニに向かうと、道の先からさっきの男子高校生の叫び声が聞こえたわ。
「俺だって、コンビニぐらいサクッと行きたい!」
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