第83話「学者とは、爆弾である」
「ちょ、待っ……」
「じゃあそういうことで!家主さんも鍵かけないくらいだし誰が出入りしても気にしないっしょ」
その通りだけど、ちょっと待って。
「あの、」
「じゃあそういう訳だから!」
ベティが疾風のごとく立ち去った。話を聞きやしない……!
「お世話になる。よろしく」
律儀にも軽くお辞儀して後を追うアデラ。
あとに残されたのはブラッドとエイミー、そしてぴったりくっついてくるルイスと呆然と立ち尽くす私。
まるで嵐のようだった。
「やっぱりこうなったか……」
頭を抱えるブラッド。
「ああなったら止まらなくなるのよね……」
頬に手を当ててため息を吐くエイミー。
どうやらこの二人はあの学者コンビのことを知っているようだ。
「なんなの、あの人達?」
「ノクト国の学者だよ。大方、異世界から来た純血の人間と幻の地竜、それと別の世界の文明を調べに来たんだろう」
「それは見てれば分かるけど……どうにかしてくんない?」
「ミノリ。俺達は一介の村人なんだ。爆弾の処理なんざできる訳ねぇだろ」
学者コンビを爆弾呼ばわり……
はぁ。面倒なことになったなぁ。
両親の部屋に入りさえしなければあとは好きにしてくれて構わないけど、喧しい。どこの部屋を探索してるのか知らないけどもう少し静かにしてほしい。
廊下の先から「何この丸くて薄い板!?」とか「いっぱいあるこの紐みたいなの何!?」とか興奮気味な声がこっちまで聞こえてくる。
丸くて薄い板ってのはCDかDVDで、紐みたいなのは配線コードかな。
自分の持ちうる知識を遥かに凌駕する文明の一端に触れて興奮するのは分からないでもないけどさ、騒ぐのもほどほどにしてよね。寝れなくなったらどうしてくれる。
睡眠時間は順調に減ってきてるし多少の物音なら平気だけど、やっぱりうるさいのは好きじゃない。
アレンにも同居人が増えたこと報告しておこう。ついでにどうにかしてもらおう。
うるさいのは嫌だけどあの二人は放置で。
あ、自室と両親の部屋に鍵かけとかないと荒らされるかな。念のため鍵かけよう。
あの二人、特にベティは知的欲求を満たすためなら人の家だろうとお構い無しに色んなもの漁る気がしてならない。壊れたら直すのに苦労する精密機器がごろごろあるからあとで注意しておくか。
いい加減マジで鍵かける習慣つけようかな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます