賑やかになるぜ、的な。
第81話「二人の学者」
「ふわぁーーー!何これ?何ここ?どういう仕組み!?どうなってんのよもう訳分かんない!でも面白い!」
大きな家の中をあっちこっちさ迷いながら興奮している、紫色のウェーブがかった長い髪に濃紺の瞳が特徴の女。頬には蛇の鱗のようなものがある。
「この子、地竜?初めて見た」
口数は少なく、表情も乏しいが、若干鼻息荒く興奮してるのが分かる、新緑色のボブヘアに眼鏡を装着した女。こちらも手の甲に蛇の鱗のようなものがある。
「キャウゥ……」
舐め回すようにじろじろ見られて後退りするルイス。助けを求めて私を見ている。
ええっと……なんでこうなったんだっけ?
―――――――――――
遡ること数時間前。
「ありがとねぇミノリさん。これでうちの村も安泰だよ」
「どーいたしまして。ついでにハイ、今日の分の薪」
「おお!またこんなに貰っちゃってすまないねぇ。助かるよ」
森の中に点在する小さな村をいくつか回り、巨大生物から守るための措置を施していく日々を送る私。
道も整備し、ほとんどの村で安全強化対策を実施したため巨大生物に襲われる心配もなくなった。ただ、全部を見て回れたかは定かではない。もし地竜の村のようにあまりにも遠い場所とかに村がある可能性はなきにしもあらず。とりあえず人に教わった場所は全て回ったけどね。
あ、ちなみに言うと巨大生物は最近あんまり見かけない。あのとき殲滅する勢いで狩ってたからかな?
「罠に引っ掛かった巨大生物は兵士さんになんとかしてもらってね」
「分かった。大したもてなしはできないが、いつでも遊びにおいで。儂らは歓迎するよ」
つい今しがた最後の村の安全強化を施し終わり、村人達に見送られてラクサ村へと帰還した。
「ただいま」
しぃん。
あれ。おかしいな。いつもならラクサ村残留組が「おかえりー」って言ってくれるのに。
首を傾げつつ自分ん家に入る。
「いい加減にしろお前ら!」
そして突如響く怒号。
この声、ブラッドだ。
「他人の家を勝手に物色するのはどうかと思うわ」
今度はエイミーの冷ややかな声。珍しい。
「えー?鍵かけない家主が悪いんじゃない」
耳に馴染みのない声が次いで聞こえてきた。
「くっ……!否定できねぇ!」
否定できねぇ。
エイミー達に防犯がどうのと散々言われて鍵をかける習慣をつけるよう努力はしてるのだが、ここの人達善良すぎるもんだから警戒心なんて皆無なんだわ。
だから鍵かけるのついつい忘れちゃうんだよねぇ。
会話からするに泥棒でも入ったかな。盗まれたら困るものなんてこのだだっ広い家に極僅かしかないので問題ないのだが、どうやらブラッドとエイミーが頑張ってくれてるみたいだ。
そんな無理に取っ捕まえなくてもいいのに。いらないものを泥棒さんが貰ってくれるなら万々歳じゃないか。
「こんにちは泥棒さん。両親の部屋と私の部屋以外ならどこでも物色していいよ」
「ミノリ!」
「ミノリちゃん!」
玄関の少し先、二つの螺旋階段のすぐ近くでブラッドとエイミー、そして近くにいたルイスと対峙している泥棒に声をかけた。
「ふわぁーーー!何これ?何ここ?どういう仕組み!?どうなってんのよもう訳分かんない!でも面白い!」
「この子、地竜?初めて見た」
ブラッドとエイミーとルイスが壁になってて見えなかったけど二人いる。
どうやら物色するのに夢中で私の言葉聞こえてないっぽい。
こうして冒頭に戻る訳だが、物色されるのはいいとしてもルイスが困っているので助け船をば。
「あんまりじろじろ見ないで。この子が嫌がってるでしょ」
「……はっ。ごめん」
緑髪の眼鏡女子の方は話が通じるようだ。
名残惜しそうにルイスをチラ見しながらも私へと向き直る。
「貴女が家主?」
「そーだよ。で、あんたらは何?見たとこただの泥棒とは思えないけど」
「泥棒じゃない。学者。私はアデラで、あっちはベティ。よろしく」
「よろしくー」
「こんな状況で軽いなオイ!」
ブラッドが喧しい。
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