第71話「たまには働きますか」

クラークが書斎に入り浸るようになってから早数日。


ラクサ村ではとある問題が発生していた。



「最近、巨大生物が活発になってきたわね」


いつも通りアレンを見送ったあと、書斎でクラークが読み終わったとおぼしき本を棚に戻してから今日は何しようかなーと家の中をふらっと歩いてたら、エイミーが地下室の鍵を開けてるとこにばったり出くわした。


ちょっと早くに来ちゃったからお茶しましょ、というエイミーの誘いに乗って二人揃って客室で優雅に紅茶を飲みながら談笑していたときのことだ。


唐突に切り出された物騒なワードに耳を傾けた。


「そうなの?私基本ラクサ村から出ないけど、近くで見かけることはあんまなかったよ?」


「地上からは見えないのかしら?結構近くまで来てることが多いわよ」


へぇ、知らなかった。


でも最近兵士がよく村に来て巡回してるのは知ってたから、もしかしたら巨大生物がここらを闊歩してるのが原因だったりすんのかね。


ちなみに仕事モードのアレンとは一度も会ってない。というかラクサ村で仕事してるとこ見たことない。もしや出身村で仕事しちゃいけない決まりでもあるのかな。初めて仕事中のアレンの姿を見たのだってここじゃなくてハルバ村だったし。まぁ私には関係ないか。


エイミーは空中で商売してるから、地上の動きにいち早く気付いたんだろう。


「心配だわ……ラクサ村で戦える人なんてブラッドとクラークくらいしかいないし、しかもクラークは今本の住人だから戦力外だし」


「アレン以外に戦える人がいるの?ブラッドは……まぁ初対面のときに弓構えてたから戦えるのは知ってるけど、クラークは意外」


戦う姿が想像できない。


「クラークもブラッドと同じで弓使えるわよ。どちらかといえばブラッドの方が上手だけどね。クラークは一通りの武術を嗜んでる分、専門の人には少し劣るって感じかな。それでも充分戦力になるけどね。本が絡まなければ」


両腕を組んでうーむと唸る。


巨大生物ってアレだよね。蜘蛛とかのでっかいバージョンだよね。忌々しい昆虫やらが生意気にも巨大化して暴れまわってる傍迷惑な奴等のことだよね。


私が倒した巨大蜘蛛と巨大ミミズを思い出す。


他の巨大生物もあの程度の強さだったら私にも倒せるな。ミミズはもう御免だけど。


武器がないから村の住人に借りよう。あとここらで出る巨大生物の特徴も聞いておけば完璧だ。


よし、そうと決まれば。


「じゃあちょっと殲滅してくるわ」


「待ってミノリちゃん!そこら辺ちょっと散歩してくるわ的なノリでそんな物騒なこと言わないで!ていうか話飛躍しすぎよ!」


がたっと立ち上がるとエイミーに止められた。何故だ。


「ここに来たばっかの頃、巨大蜘蛛倒したの見てたでしょ。あの程度なら殺れる」


「確かにスキュラム倒したのはこの目で見たけど……まさかミノリちゃんが自分から動く気になるなんて思いもしなかったから完全に度外視してたわ……でもなんで急にやる気に?」


そりゃ普段のぐうたら具合見てたらそんな感想も抱くよな。


別にたいした理由じゃないけど……


「もし巨大生物が現れたら私の家が壊される可能性もある訳でしょ?私一人なら別に構わないけど、今は同居人もいるし、一応守るためにも動いた方がいいかなって。あと安眠妨害防止」


「絶対後者が本音よね」


あとついでにラクサ村の住人を守るためでもある。


エイミーが自分で言った通り戦力になる人はあんましいない。クラークは御覧の有り様だし、ブラッド一人で全て対処できるか怪しいし、巨大生物来たら長くは持たないと思うんだ。


この村の人達には世話になってるからね。少しくらい恩返ししとかないと。


てな訳でいっちょ働きますか。



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