第67話「これが本当の魔法アイテムだ」

「信じらんない……天才って言うなって方が無理でしょこれ」


頭を抱えて唖然と呟くクラーク。また天才などと言いやがったので鉄拳の刑に処した。


「私はどーせ異常だよ」


あの家に引き取られてから幾度となく言われてきた言葉だ。今更傷付きはしないけど、ラクサ村の人に言われると、なんか嫌だ。


クラークは私の顔を見て一瞬固まり、そして優しい顔をしてふわりと頭を撫でた。


「凄いなぁとは思うけど、異常だとは思ってないよ。だからそんな寂しそうな顔しないで?」


今度は私の身体ががちんっと固まった。別にクラークの優しい顔に乙女心が反応したとかそんな理由じゃない。頭撫でられたことに固まってしまったのだ。


子供扱いされたのが気恥ずかしくてむず痒くて、ちょっぴり嬉しいような。久々なそれが嫌なものではなくて。なんとも複雑な気分だ。


にしても、寂しそうな顔してたのか、私。そんな顔ができたのか。ほぉ、知らなんだ。


「さーて、俺も異世界語勉強しますかー。ミノリちゃんみたいに物覚え良くないから時間かかるけど、付き合ってくれる?」


「ふぁぁ……寝かせてくれ」


「口も身体も正直だねー」


「それが私の長所だ……ふぁぁぁ」


「短所の間違いでしょ」



いやもう冗談抜きで寝かせろ。さっきから欠伸止まんないんだよ。クラークも見てたでしょ。


目をごしごしと擦っていると「しょうがないな~」と諦めた声が耳に入る。


「ミノリちゃんが起きるまで自力で頑張るよ。彼氏クンに癒してもらいなー」


彼氏クン、と指差したのは私の腕の中にすっぽり納まっている枕之助。彼氏……カレシか。悪くない響きだな。もうこの際枕之助が恋人でも良いんでない?


「人間の彼氏なんぞ……いらぬ……」



Q、綾瀬 実里の恋人は?


A、夢の世界へ羽ばたける魔法のアイテム。



「リアルを生きて欲しいなぁ、切実に」


クラークが遠い目をして真面目な声色でそう呟いていたが知らん。


床に寝っ転がって数秒後には夢の中に誘われていた。


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