第36話「切れ伐れ斬れ」

私の家は村の入り口を塞いでいる。横幅も結構あるため木々と家の間に隙間はなく、そこから村の外に出ることもできない。


なので村の入り口付近の木々をなくして道を作るとのことだ。


南と北に出入り口があり、私の家が塞いでるのは北の入り口なのだがこのままだと北の国に行けない。アレンは役人だし当然村の外でやらねばならない仕事がある。他の人も何やら村の外に出て商売したりしてるようでこのままの状態だと稼ぎに行けないとのこと。


今日は南に出稼ぎに行ったが南にはあまり村がなくほぼ稼ぎにならない仕事ばかり。このままだと金が底をつき餓死してしまうので至急北の入り口を通過可能状態にせねばならない。


クラークは不死鳥の子孫なので食べなくとも死にはしないが不死鳥の血が薄れているので食事は必要らしい。不便な身体だなぁ。


エイミーの食事は空気と水なので食事の心配はないらしい。羨ましいな。食事しながら寝ることができるなんて。寝放題じゃんか。


ブラッドは大地の妖精なので土を食べれば済むらしいが本人曰く純血の妖精ではないため普通の食事の方が身体に合ってるとのこと。ややこしいわボケ。


その他住人達は普通の人間と同じく人間の食事が必要。畑の作物だけで生活するにも限界がある。


北の入り口を塞ぐ私の家をどうにかするとこの世界では珍しい素材や見たことのない代物が数多くあり、希少な研究材料がなくなってしまうためその案は却下。


なるほどね。


私の家は色々と利用価値があるから取り壊すことは避け、周りの木々をぶった切ることで道を開けるのか。


村の面積も広がるし神聖な空間(寝所)も取り壊されずに済むからとてもいい案だと思う。


「もう夜だけど、皆でやれば早く終わるわ。さぁ、早速取り掛かりましょう」


エイミーの号令で各々動き出す。


ブラッドは斧を片手に意気揚々と歩いていき、クラークとアレンは私の家への倒木防止要員として構える。チェルシーの肩に乗っているアドルフが燃やし尽くす勢いで火を吹き、真っ暗な夜に明かりを灯した。


山火事になったらどうすんの。私の枕之助を塵にする気か。


だがその心配は杞憂に終わった。絶妙な距離感で火を吹いているため木々に燃え移ることはなかった。


私の家ごと燃やし尽くされるかと思ったじゃんか。まぁそのときはそのときだ。枕之助が無事ならばなんでもいい。


村が焼き付くされようがここら一帯が更地になろうが、枕之助と共に有れるのならどうぞお好きになさって。


「ミノリちゃん、何ボーッとしてるの?そこに斧があるでしょ?ブラッドと一緒に木を切り落としていってね。ミノリちゃん力あるから」


「えー……私もやるの?」


「当たり前だアホ。お前もこの村の住人なんだから協力しろ」


協力という名の強制労働を強いられた。


全く面倒なことこの上ない。


「ゴルァミノリ!!そこで寝るんじゃねぇぇぇ!!」


枕之助を抱き締めながらその場に横になればアレンの怒号が響き渡った。


「チェルシーも一緒に寝よ」


「えー地面固いから嫌にゃー」


「枕之助を一緒に使えば問題ないよ」


「そっかー!じゃあ寝るにゃー」


「チェルシーを巻き沿いにすんな!」


アレンの足が華麗に私の腹部にヒットした。この野郎。男女差別がないのはいいことだがこれはアカンぞ。


「ミノリもチェルシーも自分の仕事をきちんとやれ!じゃねぇと飯抜きだ!」


それはもっとアカンやん。


「ちっ。しょうがない……」


「残念なのにゃ……」


二人揃って重々しく腰を上げた。



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