第2話「新聞はいらねぇ」
「……ぃ」
微かに誰かの声が聞こえる。
「……ぉい……」
うるさいなぁ。私は今寝てるんだよ。用があるなら起きてからにして。
「おい!起きろ女!」
うちに来るってことは新聞の勧誘かなんかかな?にしても随分口が悪いなぁ。教育がなってないぞー。そんなんじゃ誰も買いたがらないって。
まぁ世間の情報なんて頗るどうでもいい私にとっては口調が悪かろーが丁寧だろーが熱烈だろーが全てお断りしますけどね。ご苦労なこって。
「起きろ!いい加減起きてくれ!……ったく、どうなってんだよ……いきなりこんな馬鹿デカい屋敷が現れるなんて……しかも家主は呑気に寝てるし」
おーなんかぶつぶつ言い出した。
そいや私の家、どっかにお引っ越ししたんだったね。
あーもう、段々目が冴えてきちゃったじゃないか。……起きるしかないのか。
嫌だ。意地でも寝続けてやる。
だから新聞勧誘(仮)の人、諦めてさっさとお帰りくだせぇ。
「意味わかんねぇ……玄関のポストに『御用がある方は勝手に入って下さい』って張り紙と一緒に鍵が入ってたし……不用心すぎるだろ」
えーだって、一々玄関まで行くの面倒じゃん。
私に用がある人なんて新聞勧誘の人くらいだし、向こうは私が聞く耳持たないことをとっくのとうに痛感してるから今や誰も訪ねて来ないし。
親戚の人達は私のこと社会の役に立たないからってゴミクズかなんかだと思ってるらしくて絶縁状態だし。
友人なんて生まれてこのかたできたことないし。不便じゃないから別に構わないけど。
あ、親には泣かれたな。『もっと人として成長して!』って。
成績は文句なしのオール5だったんだからいーじゃんか。
話が逸れたけど、そんなわけでだーれも私のもとには来ないのだ。
だから自然と誰かが来たら玄関に行くという極々当たり前なことすら億劫になって、とうとう鍵を玄関のポストに放り投げて張り紙したのだ。
それにしても久々の来客だ。全然嬉しくないけど。むしろ早よ帰れって思うけど。
「全然起きねぇこの女……叩き起こすか?」
綾瀬 実里、緊急事態発生。
安眠妨害を企む不埒者がいるようである。
ただちに排除せねば。
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