恋人アプリをアンインストールしますか?イエスorノー

 驚くべき通知が入ったのはその日の夜だった。


『相手が恋人アプリをアンインストールしました。あなたも削除しますか? イエスorノー』


 どうしよう、憤った碧さんがアプリを削除してしまったんだ。おれ碧さんの電話番号もメールアドレスも知らない。アプリでしか連絡とれない。


『相手が恋人アプリをアンインストールしました。あなたも削除しますか? イエスorノー』


 ポップアップが拍動して催促してくる。

 一旦『ノー』を選択した。イエスにしたらおれたちが別れる未来を選び取るような気がしたのだ。


『サブ端末からメイン端末へ変更されました。アクションの排出率を変更できます。いますぐ変更しますか? イエスorノー』


 イエスを選択した。

 別の画面が現れ『メイン端末/サブ端末』と出てくる。

 これは以前に莉奈が言っていたメイン端末なら相手の排出率を変更できるという画面だ。おれはサブ端末となった碧さんの排出率を見てみた。


「……なんだよ、これ」


 六つの排出率が一律十六パーセント、一つが三パーセント、他の八つは〇.一パーセント台で設定されている。

 アクションの内容までは見られないけど、可能性で考えれば十六パーセントの高確率で排出された六つは既出のアクションだ。三パーセントの一つは『莉奈を突き飛ばす』アクション。でも他の八つは……?

 時間を置いてしまったせいかアプリが初期画面に戻ってしまった。慌ててあちこちのボタンを押してさっきの画面に戻す。


『アクションの排出率を変更できます。いますぐ変更しますか? イエスorノー』


 アプリが悪魔のごとく囁いてくる。

 おれは今度も『イエス』を選び、サブ端末の排出率を真逆に変更した。


『排出率が変更されました。ガチャを回しますか? イエスorノー』


 『イエス』を選んでガチャ画面に進み、ハート型のボタンを押した。

 ピロリーン。


「――……」


 現れたアクション。それこそ、彼女が心から望んでいたアクションなのだ。


『相手はアプリを削除しています。メール機能を使って結果を通知しますか? イエスorノー』


 答えは『ノー』だ。おれは上着を掻き抱いて家を飛び出した。

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