第1話 粘着系魔術師の願い 五頁

「なんで私があんたに付け回されなけりゃならんのよ」

「付け回すとは字面が悪い。ただ、貴様が協力させてくださいと申し出るまで、俺の魔術の全てを生かし粘着しようと言うだけだ」

「脅迫的ストーカー!」

「更に悪くなったな」

「その通りだろうがくそ魔術師!」


 これだから魔術師は何を考えているのか全く解らない。そんなんだから呼び出した精霊がデュエル前に気軽に買い物に行ったり、「面倒臭いから百年後に呼んで」とか言われるんだわ。事実この偉そうな男だってゲルフォルトにお会計させられてたし。

 精霊や妖精、天使や悪魔はフリーダムだ。例え召喚されても言う事を素直に聞くことの方が稀。

 そして私もそうだ。そんな理不尽なストーカー行為で日常生活、否、キャンパスライフに支障が出たらどうしてくれる。責任取れるのか?責任取ってマンツーマンで成績上げてくれるのか?いや、こんな野郎とマンツーマンなんてお断りだけど。


「貴様に課す課題は三つ」

「話し聞いてた!?」

「まず、『黒鉄の蘇術』そのものを発見する事」

「それはやぶさかではない」

「やぶさかではないのか」

「高く売れるからね」

「売るな。第二にその内容をアラム語から英語に訳す事」

「読めない魔術書追い求めてんじゃねーわよ!」

「第三に」

「これ以上まだ何か押し付けようってか!」

「『蘇生の儀式』の進行を務める事」

「!?」


 は?

 最後なんて言った?

 私が?『蘇生の儀式』の進行をしろ?

 それって即ち、限りなく私が『死者を蘇生させる』ってこと?

 ふぁ?

 どゆこと?

 それは目の前のこの男がやるべきこと…いや、やりたいことであって、私には一切関係ないだろう?私、まちがった事言ってる?え?え?


「…意味が解らないんだけど。あんたがやればいいじゃん、それ」

「いや、事情がある。故に頼みたいのだ」

「頼みたい?一歩間違ったら自分が『生ける屍』になりかねない、くっそ危ない儀式を?」

「ああ。…他に、あてがない」

「どうして?あんたほどの魔術師なら、私なんて一般市民に頼むより自分で執り行った方が確実的でしょ?本当に死者が蘇るかは知らないけど、蘇らせたい人がいるんでしょ?」

「ああ。だから貴様の力が必要なのだ」

「話が全然読めない」

「儀式には当然俺も参加する。だが、蘇らせたいのは他の誰でも無い」

「ん?」

「『』だ」


 男は至極真面目な声でそう言った。

 『自分を蘇らせたい』と。

 常識破りのこの頼みごと。そう。そう、自分は蘇らせられる対象だから、蘇らせてくれる人が必要な訳ね。

 ふぁ?


 私はよく意味も理解できないまま、その「ふぁ?」を口にしていた。

 ええと…


「どゆこと?」


 今はそれしか言えない。


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魔術書セドリの受難 戮藤イツル @siLVerSaCriFice

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