第1話 粘着系魔術師の願い 四頁
関係ないじゃねーわよ、思いっきり危ない魔術書の名前聞いたわよ。
私は魔術書がどんなものか一発で解るし、中身も大体の見当はつく。何故って野生の勘よ。じいさんに鍛えられた私の眼力を舐めるんじゃないわ。でも、決定的に足りないものがある。
それは魔術書への知識。
私が入手した魔術書を自宅で確認する事は前述したとおりだけど、それには本物か偽物か調べる他に、どんな魔術書なのか調べると言う理由もある。
じいちゃんは私に魔術書を見つける『いろは』と、様々な文字の読み方を教えてくれたけれど、その魔術書が実際どんな危ない物なのかは教えてくれなかった。転売するのが目的と言う以上、私が将来セドリになると確信していたじいちゃんは、自分の持っている魔術書のノウハウは教えてくれなかった。商売敵になるからね。
そうなる前に死んじゃったけど。
注意してほしいのは、そんな私でも知っている有名どころの魔術書が何冊かあると言う事だ。
『黒鉄の蘇術』。これは魔術書の中でも結構マイナーな方。そして、マイナーだけど有名でもある。大体この街ではそんなやばい魔術書の類は拝んだこと無いけど、最近はインターネットと言う便利な物がありましてね。
みなまで言うな、高価で売りつけられる魔術書を調べているとトップに食い込んでくるのがこの『黒鉄の蘇術』。
実在しないとまで言われている死者蘇生の為だけの魔術書。私の通っている魔術書図書館と言うサイトでも、いかにその方法が優れているかなど、詳しく解説されていた。
だから私でも知っているのだ。滅多な事では魔術を使わない私には魔術書の価値ってもんは金銭面が大幅を占めるのだ。
「まぁ、いいけど。それで?二つ目の質問は?」
「貴様、アラム語は読めるか?」
「あったり前でしょ。三歳でヘブライ語の魔術書で遊び相手召喚していた女よ」
「そうか。ならばいい」
「?ならばいいって、どゆこと?」
「『黒鉄の蘇術』はアラム語で書かれていてな」
「まさか私に翻訳させる気か!」
「そのつもりだ。覚悟しておけ」
なんの気なしに言うけれども、魔術書の翻訳なんてできるわけないでしょ。専門用語どれだけ出て来ると思ってんのよ!しかもうっかり呪文でも口にしちまった時にゃ私はどうなるのよ!
「全力拒否する」
「そう言うと思ってな」
男は私の手を取った。背もデカければ手もデカいな。その手には金色の指輪が輝いている。
速攻で手を引いた。これは嵌められたらやべぇもんだ。私の野生の勘がそう告げる。
「無理矢理の契約いくない!」
「チッ、ばれたか」
「あんたがホストかなんかだったら喜んで嵌められるけど!魔術師だからね!?知ってるからね!?」
「まぁ、いい。俺がこの土地に来たのには何か理由がありそうだ。…貴様と言うイレギュラーを含めてな。『黒鉄の蘇術』は近い将来、必ず手に入れる。そうでなければ…チヒロに…」
「チヒロ?」
「いや、気にするな。貴様は常日頃の様に魔術書を求めて本屋を巡っていればいい。なけなしの金を稼ぐためにな」
「だからいちいち気に障る発言しかできねーのか」
「貴様がどこに居ても場所を特定する魔術は掛けさせてもらった。これからは四六時中行動を共にさせてもらうぞ。無論、拒否権は特にない」
「なんだってー!?」
はぁ?この魔術師、一体何を考えてるのか一切わからん。
四六時中ってどゆこと?場所を特定されるのは百歩譲ってシカトすればいいけど、四六時中て。
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