第146話 何かしら付いてきました? (77)

 う~ん、何かしら、俺としては納得出来ないのよ。

 だって俺は、女神フレイヤの主人で、魔王様と呼ばれている身分だと思うのだけど? 何かしら、皆俺に対しての尊敬の眼差しが無いというか……うちのカミさんを皆が見るときみたいな、『敬い奉る』と、いった感じがないのよ。


 だって先程から町の町長達も、俺に聞こえないように小さな声で、「儂らも、はよぉ~、うさちゃんになりたいの」と、町長が皆に述べるとね。

「あああ、そうじゃ、そうじゃ……」「うむ、そうじゃの」と、周りにいる、爺さんと婆さん達が述べると。またもや町長が一言余計に、「儂は絶対に、魔王様ではなくて、フレイヤに精霊にしてもらおうと思うんじゃよ」と、述べやがったら。

 爺さんと婆さん達の中にいる一名が「町長──魔王様とフレイヤ様とでは、精霊になる種族が違うのか?」と、尋ねたんだよ。


「あああ、違うぞ──フレイヤ様だと今の吾作みたいに、ウサギ男になれるから、可愛い! 可愛い! と、女性受けするからいいけれど……魔王様だと、彼奴らみたいに、骨男にされてしまうぞ。だから機嫌を取るならなら、魔王様では無くて、フレイヤ様にした方がいいぞ……」


 まあ、こんな感じでね、俺に聞こえていないと思っているんだろと思うが。町長の奴、周りの奴らに述べているんだよ。馬鹿だから……だって俺は、人だった頃とは違ってね。俺自身に付いている、二つの大きな耳のお陰で、大変に良く聞こえるんだよね。


 だからやっぱり……先程はうちのカミさんに、大人気無いと言われて辞めたけれど。町長あの爺……本気で仕留めてやろうと思うから。町長の近くに寄って、二度と転生出来ないようにしてやるから。『そぉ~っと! そぉ~っと!』と、近づくよ。それでさ、背後から俺の手刀で──〈シュン─!〉 だよ〈シュン─!〉町長あの爺に刹那を喰らわせてやる!


 と、思っていると。〈ドン──!〉〈ダダダダ……〉と、扉が開き──人の慌てた足音が聞こえてきたから。『何?』と、俺が思っていると。


「たっ、大変です魔王様──!」


 と、骨仕様の家臣が、うちのカミさんでは無くて、俺を最初に名指ししたから、『こ、こいつ可愛いやつめ!』と、ついついと本気で思ったよ。


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