第106話 何かしら付いてきました? (38)

「(いっ、いや、お蝶さん? 少し静かにしようよ? そんな大きな声だしたらフレイヤに本当にばれてしまうから……)」


 俺はね、お蝶さんが余りにも大きな声を出すから。いえのカミさんにばれてしまうと思ってね。半ベソをかきながら彼女に静かにしてとお願いをしたんだよ。

 それにさ、とにかくお蝶さんには、冷静になってもらいたい。

 だって俺は別に、お蝶さんと別れたいとも思っていないから。


「(ん? あれ? 魔王様。良く考えると何で私の事がフレイヤ様に、ばれたいけないの?)」


 お蝶さん、涙を一杯浮かべた目をね、大きく開けて──俺にこんな事を尋ねてくるんだよ。

 ……だから俺は、どうしたら良いだろうか?


 と、本気で悩み始めた。


 た、確かにさ、お蝶さんの述べている通りで、うちのカミさんに隠す必要性は無いとは思うよ。無いとは……


 でもね、今の状況は不味いよ、本当に不味い……この状況をカミさんに見られたら、家族会議をする前に血の雨が降りそうだ。特に今のフレイヤの状況からだとね。


 と、思うから、取り敢えずは、お蝶さんの気を落ち着かせないといけないと思うから。俺自身、冷や汗をかきながら又口を開いて彼女の説得を試みる。


「(えっ? いや、ばれても不味くはないけれど……とにかく、今の状態が不味いよ。せめて一度はこの場をやり過ごして、後で外でゆっくりとフレイヤと話しをする方がいい……)」


 まあ、とにかくね、俺の心の中では。


『お蝶さん堪忍してよ。マジで許して……取り敢えずは、今は黙っていて──フレイヤとは俺が後でゆっくりと話をするから……消して君を悪いようにはしないから、俺を信じて欲しい……』


 と、まあ、こんな感じで心の中で、お蝶さんに嘆願したよ。許してくださいと。


『はぁ……』と、溜息まで漏れた。


「(なんで? なんで?)」


 う~ん、お蝶さん、"なんで?"


 お嬢ちゃんになってしまったよ。


 それも力強い言葉で迫ってくるし、顔も近い、近いよ……


 だから俺は、更に冷や汗をかきながら口を又開く。


「(う~ん、お蝶さん、"なんで?" と、尋ねられても)」

「(ん? どうしたの教えてよ、魔王様? 早く! 早く!)」


 はぁ、困り果てている俺に、こんな感じで "なんで?"


 お嬢ちゃんを繰り返してくる、お蝶さんに、俺は本当に困り果てているから。こんな感じで又述べた。


「(う~ん、実はね、昨日からさ、フレイヤには。お預けしているんだよね)」


 まあ、この件は先程述べた通りだよ。家臣達にちゃんと意思もあるし、性欲もあると分かったから俺は、カミさんに憤怒して雷を落としたんだよ。バスの中では禁止で、家が決まる迄、夫婦の仲良くはお預けだからと。


 するとさ、お蝶さん、「(えっ? 何を?)」と、とても不思議な顔をするからね。


『もう、白々しいな』と、思いながら、ニヤケ面してお蝶さんに答え始めたよ。


「("えっ? 何を?" って、そんな事聞かなくても解るじゃん、夫婦の仲良くだよ。フレイヤが家臣達が沢山いるのに甘えてくるから、屋敷が手に入る迄は、お預けだと俺が述べたんだよ)」


 まあ、大体こんな会話を二人で続けていたんだが。急にお蝶さん顔色が変わり出したよ。涙目も止まっている。その後はね、妖艶な目つきで俺を見て微笑したのだ。


 何かね、まるでさ、俺自身はお蝶自分のモノだとでも言いたい素振りだし。先程の妖艶な笑みは、フレイヤに対しての優越感にも似た、微笑みと表情だった気もするよ。


 だってさ、お蝶さん、妖艶な微笑と仕草をしながら。


「(魔王様、抱っこー! 抱っこー! 抱っこはー!)」


 と、叫んでくるんだよ。

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