前編

「あなた、リーダーやりなさい!」


おかしな奴が来た。

それともこれは孤独をこじらせた私が見た夢なのか。

だとしても訳がわからない。


「り、リーダー…?よく分からないが君は見たところ私の同族ではないペンギンだろ?自分の群れに…」


言いかけるとツインテールの彼女は距離を詰めてくる。


「ちっがう!!私が言ってるリーダーはアイドルのリーダーよ!アイ、ド、ル!」


余計にこんがらがった。

聞いたことのない単語の羅列をとりあえずやめて欲しい。


「ふむ…ところでその、あいどる?ってなんなんだ?」


気になるとこうして聞いてしまうのも私の悪いところだった。

言うと彼女は目を輝かせ始めた。


「アイドルっていうのはね!みんなの前に立って歌って踊ってキラキラして、見てるフレンズに元気や希望を与えるものなの!」


彼女は嬉嬉として語っているが私はみんなの前に立つということだけで気絶しそうだった。

そして疑問が浮かんだ。


「ま、まぁアイドルが何かは分かった!しかしそれなら君がリーダーをやったらどうなんだ?」


誘ってきたのは彼女。

なら普通にアイドルをやろうと誘えばいいのだ。

なのに何故リーダーをやれなんて言うのか分からなかった。

呼吸を置いて彼女は口を開く。


「わ、私じゃダメなの…私はリーダーにはなれない」


「何故だい?誘ったのは君だろ?」


声を震わせる彼女に言葉を返す。


「私は出来ないの!!…私にそんな資格はない…」


「でも…」


「うるさい!!」


叫ぶと彼女はどこかへと走っていってしまった。

なんだというのだ、いったい…。

私は仕方がなくなったのでそのまま待つもののいない縄張りへと向かった。


夕日は酷く輝く。

まるで私を見下すようだ。

退屈な時間は止まることを知らない。

ふと、先ほどの彼女の声が脳に響く。


「アレは誰なんだろう…」


気になった。なってしまった。

頭の冠羽と思われる黄色の毛からマカロニペンギンの仲間か。

尻尾はペンギンだったから多分そうだろう。

急に来たと思ったら急に叫んでどこかに行った彼女を私は覚えていた。


「また会えるのかな…」


もし同じペンギンならまた話してみたい。

この姿になってから誰とも会話ができなくなった今、そんなことを考え始めて私は眠った。

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