与えた花は致死量か

韮崎旭

与えた花は致死量か

 信じがたいほど散らかった部屋をみて、これを片付けたのなら、気分が少しはましになるのかと考えた。曰く、部屋を乱雑なまま放置すると、鬱が悪化します。

 知ったことか。こっちはエブリディエブリタイム鬱病だし、だからきれいに整えられた部屋で自殺することだろう。

 

 与えた花は致死量だったか、常用するべきでないのが市販薬で、空に浮かべた花輪はまるで檻を飾る弔花か、可塑的な詩を連ねる造花か、ここには誰もいないのだ、自分もいない。当然のように。

 覗き込んだ内面はその瞬間から作られる妄想の類だ。人間が自分自身の中身を知れるはずがない。それは妄想だ。そもそもこのような有機物に内面だと?笑わせる。何もない。何もないことを知るのが恐ろしくて、見え透いている故に目をそらし、そらした先には乱雑と混乱が厚かましく横たわっている。あらゆる空気の想像だったと雨が上がった空に投げたレモンは側溝に落ちて潰れた。拾わなかったので、多分今頃側溝の中でカビが生えていることだろう。

 

 恐れが視野を飾って、けばけばしい鳥の羽が夏至を祝っている。空々しく遊歩すると歩くことが自分にとって不可能な造作だと知られ、シートごと噛み砕いた頭痛薬はなにも改善させなかった。頭痛を感じているわけではないので当然である。ましてシートは噛み砕かれることを想定していないので。

 

 視野の端でカスミソウが揺れているような気がした。もしくは終わりに誘うための言伝。

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