11 昏睡
最初に眠ったのは、妙子だった。
妙子は育枝と組んでいたのだが、眠くなった、と言ってゲームを抜けると、部屋のテレビを点けてチャンネルを変えていって、ドラマで止めた。
それをしばらく見ていたようだったが、いつの間にか、すぐ脇にどけてあった紀雄の布団に潜りこんですやすやと眠っていた。
「ああ、俺の布団…。まあ、いいか」
それに気付いた紀雄は、そう言いながらもたいして気分を害した様子もなく、自分の駒の帽子を刑務所から出した。
次に眠ったのは辰也だった。
「ふわぁあ、なんか、眠い…」
辰也は、駒を賢司に渡した。
「ごめん、賢司、ちょっと代わってやってて。ぼくもちょっとだけ…どうしても…」
辰也が妙子に続いて眠ってしまったので、賢司は彼の駒とお札を代わりに使うことになった。
「そういうことだから、由里。お前、一人で続けろ」
賢司は、なぜか由里にペアを組まされていたので、いいチャンスだとばかりにさっさと由里のそばを離れた。
ほっとした気分だ。由里といるとどうも心が休まらない。
「なんだよ、辰也までよ。こんな時間におねんねなんてガキだぜ」
「う~ん、でもほら、ご飯食べたばっかりだし…ほんと言うと私もすごい眠くて…えっと…あっ!」
育枝の使っていた軍艦が、由里がパシフィックに建てていたホテルで止まった。
「あちゃ~、これメッチャ熱いよ! 私、お金ないし、抵当もいれらんないし…。これって破産ってヤツ?」
「そうだな。ゲームオーバー」
「ちぇっ」
育枝は軍艦を横に倒した。
「あ、でもいっか。そしたら私、一抜けだから、寝ていいでしょ?」
「あぁ?」
紀雄がうめいた。
「ったく、どいつもこいつも。寝ろ寝ろ、さっさと寝ちまえ。その代わりあとで犯す」
「えー! 若林君はやだ。橋本君ならいいかな?」
「え、ほんと、マジ?」
「ウソ」
「ちぇっ」
「あーあー、くだらねえ話してんなっての! 寝るならさっさと寝ちまえ!」
「はい、はぁい。寝よっかな! 由里、気を付けなよ、橋本君と若林君、ケダモノだから」
「おいおい」
「そんなことはわかってるから、心配しないで」
「は~い。そんじゃおやすみぃ」
育枝も眠った。
それから間もなくして、モノポリー狂いのはずの紀雄まで、眠りに落ちた。
彼は、ホテルをペンシルベニア通りに建てようとして、ホテルの駒を持ったそのままの状態で、ぐらりと盤面に突っ伏してしまった。
紀雄が盤面にぶっ倒れたので、盤面は再現不可能に乱れてしまった。
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