第11話 砂糖
世の中には人間を狂わせるほど魅力的なものがたくさんある。
人間はその魅力的な存在の魔力で『依存』という泥沼にはまり込み、なんとか抜け出そうともがき苦しむ。私も数ある魅力的なものの力に抗うことができず、日々悶えて続けている人間の一人だ。
人を狂わすものは数あれど、私が特に求めすぎてしまう物とは『砂糖』である。糖質と呼んだ方が正しいのだろうか?
とにかく甘い菓子や糖質が高いとされている食べ物が好きでたまらないのだ。そのため毎日菓子や米、麺類などの炭水化物を摂取したいという欲と闘いながら生きている。どれほど私が糖の沼に嵌まり込んでいるかと言うと、必要最低限の糖分以外は取らないようにと自分に言い聞かせた傍から無意識にカステラに手を伸ばしているような有様なのだ。しかも一日の始まりである朝からだ。
砂漠を彷徨い歩いた者がオアシスの水を求めるが如く、飢えた状況でカステラを求めたわけではなく、ごく自然に習慣であるかのようにカステラを食すのである。
呼吸をするかのようにカステラを口に入れる私は、最早カステラはカステラではなく『目に見える空気』だと無意識に思い込むくらい重度の糖質依存に陥っているのだということがわかる。
なんだかんだで割と自分を客観的に見ることができている割に、糖の摂取を全く止められないでいる。その客観性を活用できないところに作者の頭と意思の弱さがわかりやすく表れている。
そんな作者はもう若くない。若くないからこそ、これからは節制して生きるのか、老い先短いなら好き勝手生きるのか、沼に嵌まりながらこれからの生き方に悩まされている。簡単に言うなら『細く長く』または『太く短く』どちらを選んで生きるかだ。
私はできれば細く長くを希望しているのだが、節制して自分に厳しく生き続ける人生に耐えられるほどの根性はない。だからと言って「成人病ドンとこい!」と言えるほど肝が据わっているわけでもない。自分でもあきれるほどの優柔不断さである。
良いこと思いついた!
どうすればいいのか自分で決められないなら糖質に携わっているまわりの何者かが上手く糖質と付き合いながらも長生きできるように便宜を図ってくれればいいのだ。生きていく上で必要な糖分は据え置かれ、それ以上摂取しようとする糖分に関しては何らかの方法で糖質制限がかけられて購入できなかったり、糖質の少ないものを勧めるなどをして、私のまわりが都合よく糖分を調整してくれれば生き方問題は解決できそうな気がする。これならそこそこの年齢までぼちぼち生きられそうだ。きっとAIが発達すれば大丈夫、未来は明るい!!
・・・なんて愚にも付かないようなことを考えながらマドレーヌを食べている。
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