第4話 駅

 最近、駅ナカという駅の中にある商業スペースが充実していて楽しい。切符を買って中に入らなくても構内に入って買い物できる方法はないのだろうか・・・。


 というわけで、今回のテーマは『駅』である。私は普段あまり電車に乗らない。たまにしか駅は利用しないのだが、たまにしか利用しないから駅構内の変化にいちいち驚く。特に最近の都会の駅はすごい。昔は駅の中にあるものと言えばキオスクか立ち食いそば屋くらいのものだった。今はキオスクがコンビニに変わり、スイーツ店、アパレル店、デリカテッセン、クリーニング屋まで出店している駅もある。これだけいろいろあれば寄り道せずに駅構内から出るなんてことはできない。目新しさから、ふらふらと店から店へと漂い、買う気がなかったシュークリームなんぞをうっかり買ってしまったりしている。このように人が電車に乗る合間にも稼いでやろうと息巻く企業の勢いに圧されて、まんまとその勢いに飲まれてしまっている私は企業にとって最優秀なカモなのであろう。


 そんな日々進化しつつある駅について語ろうと思っていたのだが、日本中の駅が進化しているわけでもないということが最近分かったので、進化している駅と対極にある駅の話しもしてみよう。


 私は都会生まれ、ほんのちょっとだけ田舎暮らしも経験した都会育ちな人間である。一時住んでいた場所は、どことは言わないが、自然の多さに胸焼けしそうになるほどのハイレベルなカントリーサイドであった。そこに住んでいた時の最寄り駅は無人駅だった。自動改札さえなかった。今から二十数年前の状況といえど、なかなか衝撃的な場所であった。そんな駅員もいないし自動改札もないような駅で、どうやって乗客は切符を買うのかというと、『電車の中』で買うのである。電車の中には当然車掌さんがいる。その車掌さんが1~2両編成の電車の中を行ったり来たりしながら自己申告して切符を求める乗客から運賃を受け取り、首からぶら下げたがま口に入っている切符やおつりを渡すのである。田舎らしい味わいがあるとも言えるし、手間とも言えるようなシステムに則った駅と電車を私は六年近く利用していた。


 最近ふと思いついて、当時住んでいた地域をグーグルマップで検索してみた。住んでいた家の辺りは大きく変わっていた。新しい家ができていたり、かつて同級生が住んでいた家が取り壊されて駐車場になっていたりする画像を見て少しセンチメンタルな気分になった。そして駅である。当時歩いていたようにグーグルマップで当時の家から駅に向かってみた。


 その駅はほぼそのままであった。ホームからは田園風景が見渡せて、駅舎は古いままで改装などをされた様子もなかった。当然自動改札もなかった。まだ小さかったころの私が見ていた風景が、大きく変わらないまま残っていることに感動した。この駅の画像を見て、世の中には進化を続ける駅もあれば、時間を止めてしまったような駅もあるのだということを知った。

 

 個人的な我儘ではあるが、これからも想い出の駅は古くて不便で利用者数も変わらないまま存在し続けていてほしいと思う。都会の駅の煌びやかな変化は胸を躍らせる楽しさがあるが、懐かしい田舎の駅の変化の無さは癒しだ。だからこそ時代に流されることなく、そこに在り続けてほしい。


 変わる駅と変わらない駅。正反対な二つの存在は、どちらも私にとって目が離せない存在である。

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