第3話 うどん

 今日の昼食は『簡易すき焼き風うどん』であった。具はもやしと生玉だ。すき焼き風などと謳ってはいるが、肉も無ければ白菜もない。味付けだけがすき焼きっぽいだけの質素そのものな悲しいうどんである。しかし私はこの普通の人間ならあまり作らないであろう個性的すぎるうどんが大好きだ。今日はうどんを二玉使った『簡易すき焼き風うどん』を十五分ほどで平らげた。特に予定らしい予定がなかった私だが、時間に追われるサラリーマンのおっさんに負けないくらいの速さで啜り倒して腹に収めたのだった。


 昼食にはよく麺類を食す。私がよく食べるメニューは、具なしナポリタン、具なし焼きそば、素うどんである。今日の『簡易すき焼き風うどん』にはもやしや玉子が入っているだけ普段よりも上等であった。たまに具なしオムライスというイレギュラーなものも食べるが、基本は麺類が多い。昼に食べる麺類で回数の多いものは断トツでうどんである。


 私はうどんが大好きだ。健康を気遣わなくていい体になったら一日二食うどんでもいいと思えるくらいのうどん好きである。三食と言わないところに似非感が出ているが、米も負けないくらい好きだから笑って許しておいてほしい。


 うどんのいいところは、味もさることながら、とにかく価格が手ごろであるというところだ。とにかく安い。コンビニでおにぎりを買うより安く手に入る。もちろん買った後に軽く茹でたりしなくてはならないが、だいたい十分もあれば器に盛って出汁をぶっかけて啜り始めることができる。


 今は冷凍うどんも一般家庭で普及して、長期間冷凍庫で保管しつつ気が向いたときにレンジで温めて食べられるようになった。茹でる手間も省くことができるなんて、うどん好きとしては、初めて家庭の中で冷凍うどんに出会った時は革命が起こったと思ったほどだった。うどんはあまり賞味期限が長くない。愛しい存在に欠点など認めたくはないが、うどんは賞味期限だけが残念だった。それならば乾麺を買っておけばいいのだが、乾麺はゆで時間が長くかかるのだ。腹を減らしている時の待ち時間は拷問に等しい。短気である私はそのゆで時間がもどかしくて仕方がない。そこで冷凍うどんである。ぱっ(レンチン)ぱっ(盛って出汁がけ)の二工程だけで食すことのできるうどん・・・マジ尊い。


 賞味期限は長く、鍋さえ使わずレンチンするだけで食べられるうどんは、まさにパーフェクトフード(PF)と言えよう。素晴らしい。日本人に生まれてよかった・・・と、言いたいところだが、今うどんは『UDON(Noodle)』として世界進出し、私の知らないところで有名になっているらしい。日本人ではなくても食べられるようになっているうどんだが、うどん専門店や職人までは流石に海外に揃っていないだろう。うどん県と呼ばれる土地があるのも日本だけだ。本場(日本)のうどん好きとしては、どうだ参ったかと、うどん様の地位に乗っかりながらふんぞり返りたくなる。


 偉大なうどん。おいしいうどん。幸せを運ぶ白い使者は、今この瞬間にも世界のどこかで誰かの腹を満たしているのだろう。私の明日の朝食は釜玉風うどんに決定している。うどんの魅力に憑かれて食べまくっている私を、白い使者は器の中から白い目で私を見ているに違いない。うどんだけに・・・白い目・・・・・・。


 とにかくうどん愛が止まらない幸腹な日々を私は生きている。

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