【特別編】あたしメリーさん。いま聖夜のメリー・クリスマスなの……。

【怪談ブラックサンタクロース】

 日頃から悪い行いをしている子供のもとへクリスマスの夜にやって来て、恐怖のサンタクロースのことである。

  ブラックサンタは黒いフード付きの全身隠れるマントを着ており、なおかつそのまま全身黒ずくめのサンタの格好をしています。そして、太ったサンタクロースに対して、ブラックサンタは細身で痩せ型だという特徴があります。

 ブラックサンタのお仕置き方法は、子供を灰袋で叩く、プレゼントに石炭やじゃがいもを置いていく、動物の内臓をばらまく、錆びた鎖や鞭などで満足するまで叩く、悪い子を袋に入れて連れ去り凍った川に落とす……という悪魔のような(悪魔と明言する説もある)サンタさんである。

 そのため悪い子には「ブラックサンタが来るよ」と言い聞かせるのであった。


 ******


「フハハハハハハハハハ!」

 異世界にあるヨーロッパ風の街並みを望む屋根の上で、ク○ウザーさんのように細身で白塗り眼光鋭い全身黒づくめのBサンタクロースが高笑いを放っていた。


 刹那――。その足元に美化250%(当人比)で修正を加えられ『Merry☆彡』と書かれたカードが突き立つ。

「あたしメリーさん。そこのサンタ! さっさとプレゼントが入った袋と身ぐるみ剝いで雪山に帰るの……!!」

 見れば同じ屋根の上にサンタドレスを着たメリーさんが、包丁を構えてサンタを狩る気満々で戦闘態勢を取っていた。


「クククククッ……さっそく悪い子を見つけたぞ。悪い子は聖夜にサンタさんに代わってお仕置きだ☆! サンタ・流星ホルモンっ!! ギャラクティカ・ポテト!!」

 即座に敵と認めたBサンタの袋から何かの臓物が噴射され、合わせてごつごつしたジャガイモが流星のように撃たれた。

「モツ、ジャガイモ……包丁の前ではただの食材でしかないの。メリーさんの華麗な包丁さばき、メリーさんが一番包丁をうまく使えるんだ! なの……!」

『アホロレイやめろ』

 どこからともなくツッコミが入った。


 一方その隣にある教会の鐘楼の上に仁王立ちをして、謎の大型犬を連れた覆面の少年が、狂気に満ちたゴキゲンな目で、クリスマスに浮かれる人々を睥睨してほくそ笑む。

「ハハハハハハハ、ごらんよパト○ッシュ。僕を虐げ蔑ろにした村人連中が、何も知らずに呪いのミルクを飲んでバカ騒ぎをしている。ふっふっふっ、だけど特定のキーワードを唱えた瞬間――」

 その独白に応じるかのように道端でホットミルクで乾杯をしていたモヒカン刈りの通行人が、

「「「メリークリスマス!」」」

 経絡秘孔けいらくひこうを突かれたモブのように、

「あべし」

「ひでぶ」

「うわらば」

 断末魔の悲鳴を放って爆裂した。

「ハーッハハハハハハハハッ! ザマー見ろ! ウチの村人はだいたい全員がモヒカン刈りで肩アーマーしてるから一発でわかるね」

 哄笑を放つ少年に同調するかのように遠吠えを放ちながら、なぜか隣から降って来る臓物を尻尾を振って食い漁る犬。

 と、高笑いしていた少年の脳天にどこからか弾き飛ばされて飛んできた中華包丁が、回転しながら豪快に突き刺さって、そのまま幸せな笑みを浮かべ棒のように倒れた少年を、ついでのように犬が食い漁るのだった。

 勿論、そこへ天使は降りてこない。


 その教会玄関前では、貧しいながらも清く正しく生きてきたカップルがプレゼントの交換していた。

「君のために父の形見の金時計を売って買った、君の長くて美しい髪に合う装飾品だよ!」

 青年が懐から取り出した髪飾りを恋人に向かって捧げると、

「貴方のために私の髪を切ってカツラ屋さんに売ったお金で手に入れた、貴方の宝物の金時計に合う鎖よ!」

 同時に彼女も荷物の中から金の鎖を取り出した。

 刹那――。

 飛んできた内臓が髪飾りを弾き飛ばし、錆びついたチェーンが金の鎖をバラバラにして代わりに手の中に納まるのだった。

「「――おい、ちょっと待て!!」」

 お互いに最初に目にしたのは、「君の髪にピッタリだ」という臓物であり、「貴方の金時計に合う」という錆びたチェーンとなった。

 その後、激しい痴話喧嘩は流血の騒ぎとなり、教会の玄関前は凄惨な戦いの舞台と化したのである。

 

 さらにその教会の裏手では、

「おじさん、マッチ買って……」

「いらんいらん、儂は煙草は吸わんのだ」

「そう言わずに、サービスするから――ほら」

 そう言いつつスカートの下からズロースを脱ぐマッチ売りの少女。

「おっ……おおおっ!?」

「マッチ一本で500A・Cアーカムコイン。その代わり消えるまでの間、スカートの下を照らし放題」

「二十本買った!」

 即答するオッサン。

 マッチが売れなさ過ぎて方向性を変えたマッチ売りの少女は、ウキウキとマッチを擦ってスカートの下を覗き込むオッサンを冷めた目で見ながら、血のこびり付いた石を振り上げるのだった。

 なお、少女の背後の暗がりには頭から血を流して撲殺されたオヤジ連中が河岸かしのマグロのように転がっていたのだが、しんしんと降る雪で覆い隠されている。

 一心不乱にマッチを擦っていたオッサンが、消えかけたマッチを捨てて新たなマッチに火を灯した……ところで、まだ完全に火が消えていなかったマッチが、なぜか周囲に散乱している石炭に燃え移り、やがて勢いを増した焔が猛烈なファイアートルネードと化して次々と近隣の家屋や街路樹に燃え移るのだった。


 聖なる夜は始まったばかりである……。


 ◇ ◆ ◇


「悪魔が降臨しているな、異世界のクリスマスに沸き立つ街に」

『確かにBサンタの正体は悪魔説があるけど、サンタクロースの裏の顔だという説もあるの……』

 ♪あーくまーが町をねーらーってるー メーリーさんの町をねーらーあってる♪ と、鼻歌を歌いながらメリーさんが他人事のような口調で同意する。

「お前も同類だ、同類! なんで良い子にして真っ当にプレゼントをもらおうとせずに、まずサンタクロースを倒して身ぐるみ剝ごうとするのかなぁ!? 他の連中もとばっちりで地獄を見ているし」

『お互いに理解するには話し合いなんて迂遠うえんなので、まずは理性的に殺し合いを先にして力関係を明確にするのが大事だと、メリーさん緊迫する国際情勢を眺めて理解したの。だいたい逆恨みして無差別テロを行う牛乳配達員とか、クリスマスに破局したカップルとか、火遊びをする未成年とか滅びても問題ないの……』


「したり顔で言っているけど、だいたいがお前にブーメランで突き刺さっているぞ、わかってるのか? 捨てられた腹いせに男に復讐しようとかが行動原理な時点で。復讐なんてマイナスがマイナスになるだけで不毛なのでやめたらいいんじゃないのか?」

 この際、訳の分からん俺への執着をやめるように説得をする。

『あたしメリーさん。確かにメリーさんがあなたのことを刺殺したところで、心の中では悲しみでいっぱいだと思うの……』

「……と言いつつ、絶対に顔では満面の笑みを浮かべているんだろう?」

『顔で嗤って心で泣いているの……』

「だったらやめろよ!」

『議論の置き換えなの。ひろゆき理論なの。とりあえず復讐は復讐として、復讐すれば復讐したという達成感は生まれるので、別な部分でプラスになると思うの……』


 いかん。メリーさんコイツアホのくせに、ワールドカップの勝敗を預言するタコ並みに変なところで有能で、何も考えずに物事の本質を突いてきやがる。


『それがメリーさんの愛なの……』

「クリスマスに女の子に愛を囁かれても、お前の愛は軽すぎて鼻紙一枚ほども頼りにならないよな」


 妙に現実世界とシンクロしている異世界(という設定の場所では)、どういうわけかクリスマスを祝う風習があるらしい(多分、異世界転移とか転生した能天気な阿呆が何も考えずに定着させたのだろう)。


「――というか、さっきの話に出てきたそのカードは何なんだ?!」

『都市伝説カードなの。名刺みたいなもので、誰がソイツを倒したかわかるように死体の上に置いておくのが掟なの……』

「ああ、序盤で出ていたけど途中で作者が設定を忘れた聖○士カードみたいなもんか。つーか、カードの絵柄美化しすぎて原型を留めていないぞ、これ。お前、これ作るのにいくら袖の下払ったんだ? それとも漫画家さんの家族を人質に取ったのか??」

 スマホに表示された『メリーさんカード』を眺めながら、思わず本音を漏らすと不本意そうなメリーさんの声が返ってきた。


『単行本が発売される記念に好意で描いてくれたの! ありのままのメリーさんでメリーさん大満足なの……!』

「そうかぁ~? ま、なんでもいいけどさ、ちょっと疑問なんだが名前の綴りで『Merry』ってのは間違いじゃないのか? 姓で『Merry』ってのはあるけど、女の名前で『メリー』の場合は『Mary』だろう」

“メリーさんのひつじ ”も原題は『Mary Had a Little Lamb』だし、メリー喜○川だって『Mary Kit○gawa』だったし、メリー・ポピンズも『Mary Poppins』だぞ。

 まあ『夢喰○メリー』のヒロインは『Merry Nightmare』だけどさ。けどMerryってのは本来「楽しい・陽気な」って意味なので(「メリー・クリスマス」というのは「陽気なクリスマス」)、人類の名前では使わないのが一般的である。


『F91が厳密にはガ○ダムにカウントされないように、ネロがどー見ても青セイバーなのに別人なような、編集が「Merry-san」、「Mery-san」と勝手に書いて収拾がつかなくなっただけで、些細な違いなの。そもそもメリーさん人類じゃないし……』

「……まあお前が納得しているならいいんだけど」

 某新型君ウイルス――これも正確にはC○VID-19とかいう名称があるらしい――ワクチンを接種したせいか、断続的な寒気と節々の痛み、倦怠感、頭痛、眩暈めまいが続いている俺は、床にゴロゴロしながら、テーブルに置いてある管理人さんが差し入れしてくれた丸鶏入り参鶏湯サムゲタンを一口頬張る。


『あたしメリーさん。これがナーロッパの日常なの……! 風邪ひいた時にお粥の代わりにサムゲなんちゃを食べるファンタジーに比べれば、よっぽど真っ当なの。だいたいアレは当の半島からも「風邪の時にこんなん食えるわけないやろ。精が付くからと鰻丼食わせられるようなもんや。普通のお粥食うわ」って梯子外されてたし……』

「……そうなのか? これが都会の日常、人情かと思って普通に受け取ったけど」

 ちなみに鰻丼もある。下の階の井上いのうえ 那智なちさんが差し入れで持ってきてくれたもんだ。

「昔、思いがけずに強制収容所ラーゲリ――もとい、日雇い作業場でウナギの養殖を試みたところ、人肉……とある特別な餌を使うことで、瓢箪から駒で他にはない味わいのウナギを生み出すことに成功して、結構な名物になっているのだよ表向きは。まあ、それはそれとして、最高級の鰻丼だ。ぜひ味わって滋養をつけてくれたまえ」

 と、まあ気持ちはありがたいのだが、実際メリーさんの言う通りどっちも体調が悪い時に食うと胃もたれするようで、喉を通り過ぎない。


“ネギと卵でお粥作ったわよー”

 そこへキッチンでなんかガサゴソやっていた霊子(仮名)が、ひとり用の鍋を持って戻ってきた。

 さすがは幻覚、都合のいい展開を見せてくれる。


“ついでにあんたの田舎から送られてきた梅干しもあったから付けといたから”

 見覚えのあるクタクタの梅干しをレンゲですくって、お粥と一緒に口に運ぶ。

「……いまいち味がせんな」

 やはり幻覚。

“いや、それ副反応で味覚や臭覚が変になっているだけだから。てか、アンタって身体能力だけならバイオ4のレオンくらいあるかと思ってたんだけど、不死身ってわけでもないのねえ”

 こいつは俺を何だと思っているんだ? 


 異世界同様にアパートの外ではイルミネーションが飾られ、

「「「商売繫盛、笹持ってこい!」」」

 と練り歩く商店街のオッサン連中が持つ笹の木には、子供たちの願い事が書かれた短冊やパンダが吊り下げられ、そこかしこで爆竹が鳴らされ、金色で三つ首のキング○ドラを模した龍踊りが繰り出されるという……なんかいろいろと入り混じった賑わいを見せているらしい。


 併せてスマホから聞こえるのは、景気よく燃え盛る街を背後に、文字通りのヤケクソになった町民たちとともに、クリスマスを楽しむメリーさんたちの口ずさむクリスマスソングの歌声だった。


『『『『『♪チャチャチャ チャチャチャ チャチャチャーのチャ♪』』』』』

『『『『『♪チャチャチャ チャチャチャ チャラララランのラ♪』』』』』

『『『『『♪チャーチャーチャチャチャ チャララララ♪』』』』』


「……おい、ちょっと待て」

 俺がツッコミを入れるのと同時に、メリーさんに釣られて歌っていたオリーヴもまた微妙な違和感を感じたのか、待ったを入れる。

『ちょっと待った! 混沌と秩序のレゾナ~ンス! いつの間にかクリスマスソングが青○山脈の冒頭イントロに置き換わっているわよ!!』


『あたしメリーさん。オリーヴは形式にこだわり過ぎてるの! クリスマスなんてとりあえずケンタッキー食べて歌って踊っていればなんでもいいの。怪獣のとりあえず火を吹いておけっていう風潮みたいなものなの……』

『そーですかぁ? ですが『倒せ火を吐く大怪獣』と歌われた割には、セブン本編で火を吐く怪獣ってラストに出てきた一匹か、せいぜい二匹くらいだったような……?』

 ふむ? と微妙な表情で異義を唱えるスズカ。


『名古屋人が東名阪高速道や名古屋高速を日常的に鈴鹿サーキットの延長と思っていて、ギリギリオービスに引っかからない速度でかっ飛ばすのが、他の土地の人間からは非常識と思われているようなものなの……!』

 牽強付会けんきょうふかいなメリーさんの言い分にスズカが「なるほど」と納得した。


『確かに、私も日本で生きていた当時は東名でブイブイ鳴らして、イニシャルPと呼ばれてました』

「名前か苗字か知らないけれど、日本人でイニシャルがPで始まるのって相当珍しい部類だぞ、おい!」

 生前はどんな名前だったんだ、スズカ!?


『あたしメリーさん。昔の常識はいまの非常識なの……』

『ああ、まあ確かに昔はこれが普通に行われていたんだ……って聞いて現代っ子が驚く話とかありますよね』

 ローラも思いつくことがあったのか、なるほどという顔で首肯するのだった。


 列車の中で皆が煙草を吸っていたとか、昔の男って野良犬みたいにどこでもションベンしてたとか、水泳の授業で男女合同だったとか、メリーさんの都市伝説でキッズが恐怖に震えていたとかとか……。


『あたしメリーさん。昔はみんなエラ呼吸だったのに、いまはほとんど肺呼吸が主流になったみたいなことなの……』

「億年単位の昔のことを引き合いに出すな~~っ!」

 いつの間にかほぼ食べきったお粥の鍋を前にして俺は頭痛とともに激しいツッコミを入れるのだった。


『そーいえばメリーさん、クリスマスに合わせて異世界から戻る予定だったんだけど、まだドラゴンポールが全部揃っていない上に、ヒヨッコリ大魔王が部下の宇宙猿人とともに宇宙から襲来して妨害しているので、99%まで準備は整ったのに最後の1%が上手く行かないの……』

「本家のDBにハリウッド版の訳の分からん設定が紛れ込んでるな~。つーか昔のWindows Updateみたいに、99%から何年経っても進まない状況を彷彿とさせるなぁ」

 俺の感慨を無視してメリーさんがスマホに変な画像を送ってきた。


 ◇ ◆ ◇


血脇ちわき 鬼怒子きぬこさん、大富豪の毒島ぶすじま 地獄左衛門じごくざえもん氏を殺したのは貴女ですね?」

 海辺の断崖絶壁で薄幸そうな若い女性を、同年配だと思えるヨレヨレの白衣を着た年の頃なら二十代半ば、長い髪を紫色のグラデーションカラーにしたやたら胸の大きな(IカップかJカップはある)美女が問い詰めていた。

 その背後には人畜無害そうな――良く言えば真面目そうな。悪く言えば自分からは良いことも悪いこともなんもせんタイプの――二十代後半と思える毛脛丸出しの半ズボンにサスペンダー、蝶ネクタイというイカレた格好をした青年が、とりあえず付いてきました助手です……という顔で待機している。


「……何を言っているのかしら探偵さん。毒島あの男が殺されたあの日、私はメキシコのアカプルコにいたのですよ? あの時間に日本へ帰る飛行機はなかった。なら、どうやってどうやって殺したのかしら?」

 淡々と問い返しながら小首を傾げて薄ら笑いを浮かべる鬼怒子きぬこさん。

「ええ、警察は重要参考人だと挙げてはいたものの、完璧なアリバイの前に早々に貴女を容疑者から外してしまった……だけどその完璧なアリバイがかえってあだになりましたね。このワタクシ霊感探偵・グロースアルティヒ=ユキコこと佐藤雪子の目は誤魔化せないわ。そう、貴女は事件発生五時間前に――」

 余裕に対しては余裕で答える爆乳美女探偵グロースアルティヒ=ユキコこと佐藤雪子。

 指パッチンをしながら被疑者を指さす。ちなみに『グロースアルティヒGroßartig』というのは、ドイツ語で『素晴らしい』という意味である。


「短大時代にバイトのAV主演で習得した時間停止能力を使って……ほんだらこんだら……貴女は冷凍マグロの体内に……あらかじめ手なずけていたシャチの群れで証拠隠滅……途中のアカプルコで貨物便にどうたらこうたら……そして日本上空で爆破……南米にあるブラジリアン伊賀忍法で習い覚えたムササビ飛行術を使って……」


 佳境に入っている崖の上のふたりを尻目に、松林の中から白髪を振り乱し、白装束に鉢巻きを締めて極太の蝋燭を二本燃やした老婆が、手に持ったかねを鳴らしながら現れた。


「祟りじゃ~~っ! 誰もここに来てはならんっ! 祟りじゃ、厄麦やくばく村の祟りじゃ!!」

 鉦を鳴らしながら狂ったように踊り狂う老婆。


 ◇ ◆ ◇


『メリーさんの愛らしいブロマイドなの。クリスマスプレゼントなの……!』

 (`・∀・´)エッヘン!!

 とドヤ顔を浮かべているであろうメリーさんとは別に、俺の脳裏には崖に追い詰められたメリーさんの周囲で『聖母たち○ララバイ』が流れているシーンしか去来しなかった。


「あー、アリガトウ……?」

 有難いんだか有り難くないんだか、微妙なクリスマスプレゼントをもらった俺は、いよいよもって体力気力の限界が来たのでベッドへ這いずって行く。

“異様に這いずるのが上手よね~”

 感心したように言いながら霊子(仮名)が、空になった鍋やらを持ってキッチンで洗い物をする。

 その音とスマホから聞こえるメリーさんたちのバカ騒ぎをBGMに俺は眠りにつくのだった。

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