番外編 あたしメリーさん。いまお参りに行くの……。

 今年一番の寒波が襲ってきたということで、埼玉にしては珍しく『しんしん』と……ではなく、どかどかと降るドカ雪によって窓の外は一面の銀世界になっていた。

「う~~っ、寒ぃ寒ぃ……寒いと思ったら雪か。寒いのと雪は苦手なんだよなぁ~」

 エアコンの設定温度を28℃にして、なおかつボロアパートの隙間風に対応するため電気ストーブにプラスして、廉価で買ってきたドン.キ○ーテで売っていた南米謎メーカー製のファンヒーター(燃料に原子力マークが描かれていたような気がする)という甚だ信頼の置けない製品を全開にしながら、俺はそれでもまだ身震いしつつ独り言ちた。


「――つーか、アパート中でこんな感じで電気製品使ってたらブレーカー落ちないか? ヤバいかな」

 ちなみにこのアパートのTV・電気・ガス・水道などのインフラ・ライフラインは、全部一本で通っていてそれを各部屋用に分配しているらしい。

 そのため限界を超えると戸別ではなく、大本の管理人さんのところのブレーカーやら何やらが落ちる仕様だそうだ。


 と、アパートのどこかの部屋から、悲痛な中年女性の叫びとその息子らしい高校生か大学生くらいの青少年の罵声が響いてここまで聞こえてきた。

『やめてタカシッ! そのお金を持って行かないでーっ!! そのお金は大切な……』

『うるせえーーっ! 放せババア! こんなところに隠しやがって。手前てめーの事なんざ知るか!』

『あああああっ! 御願い、やめて! 今日入るパ○スロの新台が打てなくなる~~ッ!!!』

『生活費に回せって言ってるだろうが! 今日中に電気代を払わないと電気が止まるって通知見てないのか!? 見てないんだろ、どうせ!! この天気で電気が止まったら死ぬぞ!』

『この天気だからこそ客足を止めないためにリーチが出まくるんだよ。おまけに金タイトルだから大連チャンが約束されているも同然よ。タカシ、お母さんを信じなさい』

『その台詞で信じる阿呆がいるかーッ!!』


「……いろいろな家庭模様があるなぁ」

 垣間見えた逆・寺○貫太郎一家状態のよそ様の修羅場に寒さとは別の怖気が立つ俺であった。

 怪談や都市伝説なんかよりも、やはり人間が一番怖いわ。

 

「まあウチは公共料金は口座引き落としにしているから問題ないけど。万一ブレーカーが落ちたり水道管が凍結したりすると怖いよな」

 ちなみに地元の『ずんこ銀行』の普通口座からの引き落としである。

 あと関東では水道管に水抜き栓が付いていないことに軽いカルチャーショックを受けた。


“管理人さんのところなら大丈夫でしょう。絶対に東○電力を通さない、波動エンジンとか縮退炉とかの謎エネルギーで賄っているんでしょうから”

「……ああ、民間の新電力ってやつか」

“違うわよ! 宇宙パワーよ。宇宙人イーバの力よ! エジプトのピラミッドやイースター島のモアイだって、宇宙人イーバの力で造られたっていうし”

 樺音ハナコ先輩みたいなトンデモ理論を語る妄想。

 と、その時に何やらアパートの庭から騒々しい音が聞こえてきたので、何の気なしに結露で曇った窓をティッシュペーパーで拭いて下を覗いてみると、雪が降る中で全身灰色のやたら頭と目玉が大きい小男(?)たちが十人ほど直列になって、白い息を吐きつつ汗だくで一心不乱に自転車型の発電機を漕いでダイナモから電気を作っていた。


「さあさあ、必要な電力量をまかなうためにも、あと二公転半は休みなしですよ」

 その様子を監督しながら管理人さんが激励を飛ばしている。

“……いや、宇宙人の力ってそういうフィジカル的なものじゃなくてさ……”

 俺の頭越しにその光景を目にして幻覚女――霊子(仮名)――が頭を抱えて黙り込む。

「なるほど。あれが飯場いいばさんの力か。大変だなこの雪の中で、ほとんど裸同然の薄着で」

 ご苦労な事である。


 と、なぜかいろいろと吹っ切れた表情で霊子(仮名)はもそもそと炬燵に入って、自分で適当に昆布茶を煎れて話題を変えた。

 ――当然のことながらこれらすべては寒さに凍える俺の脳が錯乱状態になって、見えて聞こえている妄想なのだろう(これを疑似死ニア・デス体験と言い。『悟りを開いた』とか『死後の世界を見た』などというのは、この極限状態が見せる脳のヘブン状態を指す)。


“ま、それはそれとして、あなた出身は宮城でしょう? だったら雪とか寒さとか慣れてるんじゃないの??”

 何事もなかったかのように話題を変えてくる霊子(仮名)。

 この節操のなさはさすがは妄想。


「いや違うぞ。東北なのは確かだけど」

“……佐○先生のSNSには『宮城県出身』って書いてあるけど?”

「それは漫画版の設定だろう。俺が生まれ育ったのはS市ア・オバァー・区にある森王町という町で、昔はS市のベッドタウンだったところだ。ちなみに人口五万人くらいで、年間の行方不明者が100人くらいなので、大都会東京にある米花町に比べれば平和な町だな」

 仙台ってなにげに節分の豆まきで「福は内福は内、鬼は外鬼は外、天打ち地打ち四方打ち全方位攻撃、鬼の目ん玉ぶっつぶせ!」と『鬼絶対殺すマン』の巣窟なので、節分が終わると鬼の屍骸が累々と転がっているのでも有名なのである。


 そこへすかさずメリーさんからの電話がスマホに入った。

『あたしメリーさん。漫画版はメリーさんの魅力のお陰で、コミックも増刷が決まってZ世代に刺さりまくりなの……! そのうち漫画家さんも「オラが町の有名人」としてFM RADI○3ラジ○ スリーに出演するの……』

 う~~む、微妙にリアリティのある話だが、俺がツッコミを入れる前にスマホの向こう側でスズカが首をひねって問い返す声が聞こえてきた。

『Z世代ってマジ○ガーZを見て育った世代のことですか~?』

 ……いや、それはこっちの原作を読んでる層のことだろう。

 俺の内心の呟きをトレースするかのようにメリーさんがやんわりと否定する。

『あたしメリーさん。さすがにそれはないの。Zと言えばΖガ○ダムとかDBZとかの懐古厨あたりと相場が決まっているの……』

 だが、それをさらに否定するオリーヴの声。

『新たなる歴史を刻む開闢が此処に集いし時、始まりの鐘は鳴り響く! 違うわよ! アメリカ由来の呼び方で、産まれた時からインターネットが普及している2000年代に生まれた世代をZ世代と呼ぶのよっ』

『本当なの……? 命賭ける? 明日学校で広めても責任持てるの……???』


「なんでお前はいちいち日常会話とか雑談にプレッシャーをかけてくるんだ!?」

『この間、スズカが“ザ○ボット3のラストって最後に唯一人生き残った主人公(CV:旧ドラ○もん)が、守った地球人たちに取り囲まれる感動のあのシーン……実はハゲの頭の中では、「この宇宙人野郎」と宇宙人扱いされて、寄ってたかってリンチされる救いのない予定だったんです”――なんていうから、メリーさん吹聴して回ったら法螺吹き呼ばわりされたから、責任の所在を確実にしないと気が済まないの……』

「いや、それは真偽はともかく、知ったかぶりで喋ったのがメリーさんお前だったから信用されなかっただけじゃないのか? 仮に俺が同じ場所にいても100%疑うぞ」


 歴史にしろ科学にしろ結局のところ素人には真偽なんて不明なんだから、最終的に信じるかどうかは言ってる人間が信用できるかどうかになるわけだ。

 ま、身も知らぬ学者や有識者の言うことなんぞ、民○書房の記載と同じで所詮は日常生活に関わりない与太話も同然で、ほとんど考慮に入れていないが。


「俺のポリシー的に『ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない』というのが指針だからなあ。宇宙人とか超常現象とか超能力とかの可能性は――それはそれとして別に議論すべきことであって――除外するのと同様に、日常においては関与しないだろう? 関与しないということは存在しないと同義なんだから、関連する可能性が高いものを優先するのは至極当然だと思うけど」

 そう俺が口にした途端、

『都市伝説はあるの……!』

“幽霊はいるわよ!”

 メリーさん、霊子(仮名)が口をそろえて反論して、ついでに窓の外では管理人さんの鼓舞に従って、

『さあ、地球人に宇宙人の力を見せつける時ですよーっ』

『『『『『EEEEEEEEEE!!!』』』』』

『『『『『TTTTTTTTTT!!!』』』』』

 自転車部の皆さんが掛け声を放っていた。


 またそれに呼応するかのように、アパートの隣の部屋ではこの雪に負けじと宴会が繰り広げられているらしく、

『諸君、今宵はフォーマルハウトが梢の上にかかる星辰の夜である! この寒さを跳ね除けるためにも、あの偉大な神を召喚する時が来た!!』

『『『『『おおおおおおおおおおおおおおおーーーっ!!!!』』』』』

『召喚に必要な触媒として、惑星Cの隣にある惑星Eから追放された宇宙猿人の生首を準備してある!』

『『『うお~~~っっっ!!』』』

『あの首を手に入れられたのか!?』

『さすが……我が組織の力は大したものだな』

 賛嘆の言葉に続いて全員の唱和の声が薄い壁を貫通して響いてきた。

『『『『『『ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ほまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!』』』』』』

 なぜか俺の脳裏で、マッチ売りの少女が暖を取るために「とりあえす核弾頭を爆破させとけ」的なアメリカンな行動をしている光景がよぎった。


『あたしメリーさん。あなたの日常って思いっきり非日常が堂々と関与してると思うの。あとそのオッぺリアの剃刀理論は、剃刀自体が白象を一刀両断する斬鉄剣的な代物な時点で成り立たないと思うの……』

「何を言ってるのかわからんが、それを言うなら『オッぺリアの剃刀』ではなくて『オッカムの剃刀』だ」


 色々と混じっているそう訂正をしたところで、こちらの話とは無関係にスマホの向こう側からオリーヴの叱責の声がメリーさんに飛んだ。


『そこっ、着物の前合わせが違うっ! 左前は死に装束よ!』

『オリーヴこそ間違ってるの。男は左前で、女は右前に決まってるの……!』

『それは洋服のマナーよ! 着物は男女ともに右前なの――ってそもそも、それ大人用じゃない?! もう着物じゃなくて長襦袢になってるわよ! 花魁かアンタは!? それに第一……ちょっとバンザイしてみなさい』

『『『はーい、バンザーイ!』』』

 すかさず幼児マスコットを愛でる女子と化して、ローラ、エマ、スズカが寄ってたかってメリーさんを抱き上げて、ついでに両手を摘まんで万歳させる。


『袖に遊びがない! ちょっと脱いでみなさい――って、やっぱり腰紐一丁で着てたわね。男ならそれでいいけど、女の場合はそうじゃないわよ。肌襦袢に裾除け、腰ひもも4~5本必要だし、伊達締めを2本に帯枕、三重仮紐、衿芯、前板、後板ってのが常識じゃない! スズカ、あんたも元日本人ならそれくらい気を付けなさいよ』

『いやぁ、私は着物なんて生前に七五三と成人式くらいにしか着なかったし、着付けされただけですから……』

 スズカの苦笑いにメリーさんが面白くもなさそうにぶつくさぼやく。

『オリーヴが着物警察なの。ぶっちゃけ結婚式にしろ成人式にしろおとことおんななんて、最終的には裸になるんだしどーでもいいと思うの……』


 こいつらは何をやっているのかは不明だが、少なくともメリーさんは日本の神を挑発しているのは確かであった。


 ◇


 さて日本では怪談と言えば夏が定番だが、ヨーロッパでは冬場、悪霊うごめき呪い飛び交うような暗闇と北風が吹きまくるシュチュエ―ションのもと、マジで怖い話をするのが伝統らしい。


 そんなわけで俺もその例にならって、大雪の降る中、寒さに震えながら樺音ハナコ先輩から借りた『見る時は自己責任で』と但し書きが付いているホラー映画のDVDを眺めていた。

 ちなみにタイトルは『ITS/エルム街の生贄はサイコなローズマリーのはらわた』という――。

“どう見ても、B級じゃないの!”

 俺の深層心理である霊子(仮名)がツッコんだが、案外そういうのが面白いのだ。


 なお、霊子(仮名)コイツは俺がテレビを付けたら画面から這い出るという――俺に喧嘩を売ってるのか!? 下手な這い出し方をしやがって――嫌がらせをしたので、無理やり掴んで引き摺り出して、泣くまで連続スカートめくりの刑に処して置いた。

 今日日きょうび、3Dサイネージごときで驚嘆していては都会――特に魔界都市〈新宿〉は歩けないので、常に脳内シミュレーションとしていただけに、即座に排除できたわけだ。


樺音ハナコ先輩曰く『15・デビ○マン(≒ヒドイ映画の単位。他の謎単位として1ガンプラ。1松岡君とかがある)くらいなので、十分鑑賞には耐えるレベルよ』とのことだ」

“それは安心材料なのかしら?”

 首をひねる持ち直したらしい霊子(仮名)だが、ホラー映画なんてだいたいが勢いとグロ描写がすべてだろう。


「……とはいえ、ホラー映画ってのは前振りがタルいな。さっさと悪霊でも呪いの人形でも出てくればいいのに」

“現実にすでに悪霊も呪いに人形も宇宙からの侵略者も出揃っているんですけど!? 今更だけど、この環境でフィクション観る意味あるの?! てゆーかホラーってのは臨場感や恐怖感を徐々に高めるのが肝だから仕方ないでしょ。四谷怪談なんてお岩爆誕まで一時間半の前置きがあるんだから。――てゆーか、あなたにホラー映画に恐怖する情緒なんてあるわけ?”

 幻覚女(自称地縛霊)が炬燵に入ってミカンを剝きながら失礼な暴言を吐いている隣で、メリーさん(都市伝説の呪いの人形を自称する阿呆な幼女)からの電話に適当に話を合わせつつ鼻で笑った。


「あ? ホラー映画ってバラエティの一種だろう。シリアスなふりをしたお笑いじゃないのか? 馬鹿馬鹿しい演出や質の悪い特撮、あり得ない血しぶき、バラバラにされる直前に人形とすり替わる役者――笑い所が幾つもあるんだよなあ。実際、この映画もどこにでもいる平凡な……実はパラダイ星人であるというモナルッポの日常が、徐々に壊れていく恐怖を描いたものだけど」

“いやそれ、最初っから主人公が平凡でも日常でもないわよ! てゆーか、そんな無理くりな存在がいたら逆に周囲が怖いし、なにがなんでも排斥しようとするのは当然じゃないの!?”

「まあホラーなんてツッコミどころ満載だからな。だから笑えるし、ぶっちゃけこの季節なら『蟹工船』の中身の方が怖いわ」


『「おい地獄さぐんだで!」と言ってオホーツク海だかベーリング海だかで、ビームを放つ巨大カニと戦う過酷な資本主義の犬たちを描いた実話プロレスアーツの傑作なの……』

 すかさずスマホからメリーさんの合の手が入った。

「それを言うならプロレタリアート。あとお前、タイトルを『蟹光線』と勘違いしてないか?」

 流氷の海で光線を放つカニ怪獣に群がる漁師たち。それで実話だったら大正時代のカムチャッカ洒落にならんわ。


 ついでに言うと原作がノンフィクションというのも嘘。

 過酷な暴力、虐待、過労、病気、ついでに男同士の強姦とか、ゼロではないけど当時の資料を見るとそんなものはごくごく一部だったのがわかる。だいたい日本人なんだから、当時でさえも初等教育を受けている以上、雇う側雇われる側ともにそれなりの倫理を持っているのが当たり前だったわけで、そのあたりは作者の極端な思想によって歪曲されているわけだ。

「まあそういうツッコミどころを愉しむというのもオツだが」


 そう締めくくると霊子(仮名)は釈然としない表情で、

“ホラー映画や残酷描写の鑑賞方法としては邪道だと思うんだけど……? それともあなたの故郷ってみんなそうなの? 雪に埋もれた中で残酷描写を眺めながら、ゲラゲラ爆笑する集落。――ある意味ホラーより恐怖なんですけど!”

 失礼なことをポンポンと投下する。


「さっきもちらっと言ったが、東北が押しなべて雪国だと思うのは偏見だ。北部や内陸部、日本海側は確かに豪雪地帯だが、太平洋側はさほど雪が降らない…‥とはいえ年に何回かは降るので、その時は呑気に駄弁っている暇はないな。さすがに屋根の雪下ろしはしないけど、庭や道路の雪かきをしないと後々大変だからなぁ」


 ついでに俺は以前――大雪が降った中学の時に、『雪中稽古だ』と突然に巨大馬黒邑号に乗ってやってきた祖父じじいに無理やり拉致された挙句、雪山に放置させられ、身ひとつで山を越えた温泉地まで単独走破するという、修行という名の荒行というか体のいい虐待させられた思い出をしみじみと口に出して述懐した。


 都会人は雪が降ると雪国の人間が「これくらいの雪で交通がマヒするなんてヤワだな」とマウントするとSNSとかで呟いているけど、実際問題アレに比べりゃ暖を取って吹雪に耐えられるだけよほど楽で天国みたいなものである。

 何しろあん時は誰もいない雪山の奥地で、白いほとんど裸と変わらないほど薄い着物を着たスレンダー美少女に出会う……という無茶苦茶なリアルな幻覚を見るくらい頭が変になっていたからなあ……。


“いや、それ雪女じゃないの……? 確か本物の雪女ってほぼスッポンポンで男を惑わす妖怪よ。よく氷漬けにされなかったわね”

 なぜかドン引きしながら霊子(仮名)が呆然と言葉を呟く。

「そんな馬鹿なことがあるわけないだろう。極限状態で脳が見せる妄想以外のナニモノでもない。真冬の雪山に裸同然で出歩く痴女ちじょ存在するいるわけないだろう。俺も自分の正気を保つために、咄嗟に跳び膝蹴りかましてパイルドライバーから、アイアンクロー(片手でパイナップルを潰せる握力)で頭掴んで掘り出して締め上げる……というリアルシャドーを実行したけど」


 頭蓋骨の接合部分がきしみを上げ、もうちょっとで頭潰せるってところで、

「助けてください! 貴方のお嫁さんになりますので、どうか許してください!!」

 とか、思いがけずに織田裕二と橋本信也の濃厚なフレンチキスの現場を目撃したかのような、脳味噌が凍るような意味不明の提案をする頭のオカシイ雪中女。

「――はあああぁ!?!」

 思わず怯んだところで俺の腕から逃れて、逃げ出した寒さが見せる幻覚だか妄想だか。ともあれ雪の上だというのに足跡ひとつないのだから実際のところは実体はないのだろうが、寒さで頭が若干変になっていた俺は雪をラッセル車みたいにはね飛ばして追いかけ、気が付いたら目的地の温泉宿まで着くことができたのだから、アレは俺の生存本能が形となって見せた幻影だったに違いない。


“懐かしい思い出話風に語っているけど、いきなり飛び蹴りだのアイアンクローだのかけられ、正気を失った男に雪崩みたいな勢いで追いかけまわせられるとか、雪女にしてみれば恐怖以外のナニモノでもなかったでしょうね……というか、ナニゲに『雪の新妻○僕と溶け合いたい』的なフラグ立ててたわけ、貴方?! その後、会って所帯を持ったりしてないでしょうね、その雪女とは? もしくはその面影がある女が突然転がり込んできたとか”


「会うわけないだろう。――ああ、そういえば翌年のやっぱり大雪が降った日に、ウチの玄関の扉がノックされて」

『雪に降られて難渋しております。土間の隅で構いませんので、今晩一晩泊めてくれませんか?』

「という若い娘の声がして、家族一同顔を見合わせて『いや、警察行けよ』という事件があったな」

“今時そんな日本昔話的なベタな登場の仕方とか、怪し過ぎてお釣りがくるレベルよ!”

「とりあえずちょうど家にいた義妹いもうと真李まいが、なぜかメリーさん(人形)を連れて対応に当たったが」


『あたしメリーさん。あの時は大変だったの。雪の中というアウェイで、雪女相手に悪魔義妹とメリーさんがふたり掛りで撃退したの。普通は第三勢力が出てきたら敵同士が協力し合うものだけど、お互いドサクサ紛れにフレンドリーファイアで二枚抜きしようと虎視眈々と狙っていたので、余計に時間がかかったの……』

 ああ、そういえば二~三時間くらい返ってこなかったから、よほど粘られているのかと心配したものだ。

『始末するのに一時間くらい。あと処理をするのに時間がかかったの。普通なら穴掘って埋めておけばいいけど、冬場だとさっさと復活しそうだったから念入りにバラシて、カキ氷器で粉砕をして熱湯ぶっかけて文字通り溶かして、湯沢温泉の原泉に捨ててきたの……』

「……気のせいか、さらりと身内も関わった殺人事件の自供を耳にした気がするんだが?」

 与太話だとは思うが、あの義妹いもうととメリーさんならやりそうで怖いわ。


『大丈夫バレなきゃ殺人じゃないの。第一相手は妖怪だし、それにこの手の小説や漫画で新キャラ出すのはネタに詰まってる傾向とも言うから、いちゃもんつけられる前に不安要素は潰しておくの……』

 いや、とっくの昔にネタ尽きてるのだが。

「まあ冗談はさておき、実際問題一~二㎝の雪で天変地異みたいな大騒ぎしている都会人を見れば、馬鹿にしたくもなるだろう。例えるならマニアの集会でクトゥルフ神話マニアを自称しているのに、S・T・JoshiヨシをS・T・ジョーシンとか読む奴とか、アニメマニアを自称する癖にイジー・トルンカも知らない素人に辟易する周囲の反応みたいなものだ。――それはそうと異世界にはさすがに雪女はいないだろう? 仮にも中世ヨーロッパ風(というかテーマパークみたいなハウ○テンボス的)異世界だから」


 とりあえず血生臭い話題から、メリーさんたちの日常に話を振る。

 馴れ合いというなかれ、メリーさんこいつとは適当に呼吸を合わせないと、すぐにお互いにギスギスした会話になってしまうのだ。

 あと関係ないとは思うが、田舎にいた時はたまに朝起きると耳の穴に味噌が詰められているという嫌がらせを受け、わざとらしくメリーさん(人形)の両手が味噌で汚れていたが、あれは多分真李の悪戯だったのだろうが、そのせいで何となくメリーさん(人形)が疫病神に見えたのは確かである。


『あたしメリーさん。冬はトロルが出没する季節なの……』

「ああ、トロルって北欧原産ってイメージだからな。ムー○ンとかもそうだけど。――もっともあれは、実は最終戦争後に放射線で変異した人類の姿……という都市伝説もあるんだよなぁ」

 他にも超長寿アニメでお馴染みの某海産物一家のラストは、家族旅行で海外に行く飛行機が墜落して、全員が文字通り海の藻屑もくずとなるという……考えた奴は変な薬でもキメてるんじゃないかっていうものだったが。


『あたしメリーさん。確かに異世界のトロルって、若い時には妖精美少女なんだけど十代後半から一気に劣化して、最終的にトロル化するという驚異の生態をしているの……』

「そのあたりはまんま地球世界と同じだな。つーか、そっちも冬なのか? 前から思っているんだけど、時差とか季節のズレとかはないのか異世界には? 同じ太陽系内の一番ご近所にある金星でさえ、自転が地球と逆で“西から昇ったお日様が東へ沈む”を実践しているというのに」

 なぜか世界中がこぞって火星を目指すけど、距離といい気温といい(場所によっては25℃)金星に目を向けた方がいいと思うんだけど、なぜか執拗に目を逸らせているのは不思議だ。


 ◇


「世界は欺瞞ぎまんに満ちているわ! 超古代文明! アメリカが極秘に行った宇宙人との密約! 月空洞説を裏付ける月震! 火星の熊岩! 千葉に開館されあっという間に閉館になった『麻雀博物館』の謎! 地震も噴火も台風も来る試される列島日本っ!!」

 いつものファミレスで男だが紫色の口紅をつけた店員が去るのと同時に、バニラアイス&フルーツのセットメニューを前にして言い放つ樺音ハナコ先輩。俺はランチメニューのハンバーグを頬張りながら、ふと疑問に思ったことを尋ねた。

「どこにでも水と森があるだけで国土ガチャSRだと思いますけど……そういえば超常現象研究会って、廃部を免れたんですか?」


「ふっ……我らいざ征きて永久とわなる安寧を得る。生命の守護者たらん我らには遍く天の配剤がもたらされるのよ」

 余裕綽々の態度で腕組みする『神々廻ししば=〈漆黒の翼バルムンクフェザリオン〉=樺音かのん』こと佐藤さとう華子はなこ先輩。

 冬場なので羽織っている黒の上着はいかにも高そうな、明らかに天然の毛皮――キツネやタヌキの毛ではないのでミンクとかだろう――漆黒のファーが付いたコートになっている。

「ああ……思い出した。そういえば新型君ウイルス流行の影響で、クラブや同好会の活動実績や参加人数の減は問わないというお触れが大学から出ているという噂ですから、それで廃部が免れたってわけですか?」

 勿怪もっけの幸いというか、不幸中の幸いとはこのことだな。

「それだけじゃないわよ! ちゃんと部員も六人になったし」


 見覚えのある入部届をミニバッグから取り出して、鼻高々に提示する樺音ハナコ先輩。


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【 入部届 】

団体名:超常現象研究会     分類:サークル

活動内容:超常現象の研究、超能力の実践。

活動日:月、火、水、木、金

会員:6名

 会長  神々廻ししば=〈漆黒の翼バルムンクフェザリオン〉=樺音かのん

 副会長 内原ないばら=〈狭間のトワイライト守護者ガーディアン〉=平和ひろかず

 会計  山嵜やまざき=〈理想と真実ドラグ二ティの追求者ジェネシス〉=伊久磨いくま

 書記  Nevaeh=〈始まりと収束の奇術者ガガ・ドロンパ〉=Cavello

 会員  四十四院つるし=〈領域外部アウトサイドフォース〉=斗真とうま

     西園寺さいおんじ=〈無我の境地ワールドダイブ〉=筋肉てぃあどろっぷ

部室:未定

使用施設:図書館、中庭



 上記の内容に従い入部することを申し出ます。


 氏名:_______


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「へ~っ、ヤマザキってこういう漢字を書くのか。名前も初めて知ったな。つーか、留学生に書記が務まるんだろうか? ――と、色々ツッコミどころはありますけど、なんで!?!」

 そう非難すると逆に心外そうな目で見返された。

「何をいまさら。これだけ私……じゃなかった我と悠久なる時を共有しておいて。あと副会長の件は多数決ね。ほぼ全会一致で決まったわ」

 うっ……普段から何となく講義の合間や終了後にツルんでるせいで、俺まで樺音ハナコ先輩の同類に見られていたのか(※実際は彼氏だと思われて、周囲から温かい目で見られて距離を置かれている)。


 つーか多数決ってことは、親友だと思っていたヤマザキやドロンパにも裏切られていたわけだ。

 文句を言おうにもドロンパは『USA! USA!』に帰省中だし、ヤマザキは冬休みを使って浜松市の遠州鉄道沿線に旅行中、終電でキサラギハニー駅とやらに置いてきぼりにされ、その後どこかで確実に聴いたことがある――初代以来何度もシリーズやリメイクが作られているが、編曲や歌手を変えながらも、一貫して歌われ続けているク○ード・Qの軽快な音楽が流れてきたかと思うと、

「黒覆面にスーツと帽子姿の男たちが乗っている車に同乗させてもらうことになった。(五分後)――っっっ!! なんだあの赤毛の痴女ちじょはっ!? うわっ、フラッシュで目が目が……?!」

 という連絡を最後に携帯も通じないなしのつぶての状況だし、怒りのぶつけようもない大学生活だった。


 ◇


 そんなことをつらつら思い出していると、

『あたしメリーさん。いま神社にお参りに来ているの……!』

「――神社にお参りって……旧正月?」

 若干時期がズレている気もするが、念のために確認すると即座にメリーさんから否定の言葉が返ってきた。

「節分?」

『とっくに終わっているの……っ!』

「バレンタインデー?」

『そーいえばバレンタインデーとかいう、チョコレート屋の陰謀で始まったイベントもあったの……』

『ああ、バレンタインデーですか。こっちの習慣では元になった古代アトランティスだか、レムリアだかミケーネ文明だかに倣って、二月半ばに豊穣ほうじょうを祈願する儀式として行われていますね』

 メリーさんの独り言にローラがどことなく投げやりな口調で補足してくれた。

『ちなみに儀式の内容としては、ムキムキの男どもが素っ裸になって、ヤギと犬を神にささげぶっ殺し。次に、未成年者の男子たちが生贄いけにえにされた動物の皮を剥いで即製の鞭を作り、その鞭で意中の少女たちを打擲ちょうちゃくして、エキサイトしながら豊穣を祈るという誰得だれとくな祭りです』


 げんなりした口調のローラの溜息に合わせてエマもしみじみと慨嘆する。

『あー、今年もバレンタインの季節が来るのか~……』


『ちなみに地球の歴史ではローマ帝国起源で、なおかつ数百年間大人気過ぎて、キリスト教がやめさせようとしても聞き入れられず、しょうがないからキリスト教のイベントに取り入れて、聖ヴァレンタインとかいう存在しない聖人と逸話を創設したりして、二千年かけて原型を留めないほど換骨奪胎した歴史があるのよ。異世界こっちではまだ現役だけど』

 したり顔で(そんな雰囲気で)解説するオリーヴ。


『あたしメリーさん。そーいうスプラッターとSM趣味が混在一体となった変態趣味は、いきなりハードルが高いと思うの……』

メリーさんお前にスプラッターがどうのこうのと文句を付けられる謂れはないが」

 普通に商業的なバレンタインデーとか祝う気持ちはないのかこの似非えせ幼女は?


「しかしバレンタインデーでもないとなると……ああ、三月三日の雛流しと合わせ技で各地で人形供養もしていることだし、浄化される覚悟を決めたのか?」


 人形供養で特に有名なのは和歌山県の淡嶋神社あわしまじんじゃなのだが、異世界という設定で実は和歌山から電話しているのだろうか、メリーさん?


『核の炎で……?』

「そっちの“浄化”じゃない! お前本当は和歌山にいるんだろう? 白浜アドベ○チャーワー○ドでパンダでも見てるのか、いま?」

『なんでメリーさんが和歌山なんていう本州の秘境、ギアナ高地ポジションの場所に行かなきゃならないの!? パンダ見たけりゃ上野に行くの……!!』

『ああ、白浜あそこは名古屋から車で四時間近く、特急で六時間、新幹線で六時間半、高速バスで七時間ですからねえ。泊りがけ覚悟しなければならないし、ぶっちゃけパンダよりもイルカショーが目玉なだけで、他に名物と言えば和歌山ラーメン? だったら東京に行った方が早いんですよね~』


 メリーさんの暴言に同調してスズカが頷く気配がする。


「ちなみに大事にしていた人形やヌイグルミを捨てる場合には、罪悪感を覚えないように顔のところに袋を被せて捨てるのがいい――と、ウチの真李いもうとが言っていた」

“……それってゲリラが人質を処分する時にやるやり方と同じじゃない?”

 炬燵に入ってミカンを食べていた霊子(仮名)がドン引きした様子で唖然とこぼす。


『メリーさん、無理やり目隠しをされて運ばれたあの時には、ベトコンとかタリバンに拘束される捕虜の気分を味わったの。お陰で麻袋を見るとトラウマが刺激されるから、珈琲コーヒーは飲めななくなったし……』

 幼女に麻袋かぶせるとか、そいつヤバいヤツだな。

「そんな奴とは関わり合いにならない方がいいぞ?」

『お前なの……!!』


「まあそれはそれとして、なんで神社なんかに。いや、異世界に神社があるのか?」

『メリーさんの一生の問題を軽くスルーされているけど、異世界こっちにある神社が本当の日本古来の神の神社なの……』

 ああ、どこも自分のところが本家とか元祖とか、形式を競うんだよなぁ。

「んじゃ、いま日本にある神社はなんなんだ?」

『神社とは名ばかりの偽者なの! その証拠に神なんて居ないし……!』

『ふっ、歴史なんて所詮は為政者が自分に都合よく書き替えたものばかり。この世はすべてまやかしに満ちているわ!』


 オリーヴが樺音ハナコ先輩みたいな陰謀論を口に出した。

 流行っているんだろうか?


『教科書で習っている、大和朝廷とか平安時代から江戸時代なんてものは実際には存在しないわ! あとからそれらしい建物を建てただけの辻褄合わせに過ぎないのよ!! その証拠に大阪城にエレベーターがあっても誰も疑問に思わないでしょう!?』

「なかったとしたら何があったんだ?」

 俺の質問をメリーさん経由でぶつけてみた。

『タルタリア帝国に決まっているわ! 日本人はニン○ンドーDSに操られてしまっているのよ!!』


 高らかに言い放つオリーヴを前に、俺とメリーさんは囁き合う。

「さすがはお前のともだちだな」

『ともだちとかそういうフワフワした言葉で丸め込もうとするな、なの……!』

「心の友と書いて“心友”じゃなかったのか?」

『ぶっちゃけ感応して分かるなら苦労はしないし、むしろムカつくってハ○ーンが言ってたの……!』

 まあ相手の本音が分かったからといっても理解できるかどうかは別だからな。天パとララァだってお互いに「あなたは守る人も愛する人もいないのになんで戦えるの?」「戦争で戦うのに理由なんてあるんか? なら君は?」「大佐のためです」「……なんでそんな理由で戦えるの?」と最後まで分かり合えなかったのに、理解し合っていたように思い出補正がかけられてるし。


 いまだに俺もメリーさんが何考えてるのかわけわからんし、知りたいとも思わん。


『あと御神籤おみくじやっていたので試しにひいてみたんだけど微妙なの。どう思う……?』


※どんな運命でも受け止められる覚悟があるのでしたら続きをお読みください。なお内容に関しましてはクレーム等の受付はしておりません。自己責任でお願いいたします。

【運勢】すっごく普通

【願望】39番目くらいの願いが叶う

【将来】勢いだけはある

【待人】アレするとアレになる

【恋愛】そんなには嫌われていない

【健康】うん●が上昇する!

【仕事】油断して背中を取られないよう注意しましょう

【総括】このくじを人に見せると不幸になる


「玉虫色過ぎないか!?」

『メリーさんお賽銭を損したの! 特にこのメリーさんに「油断して背中を取られないよう注意しましょう」とか屈辱なの!! 自慢じゃないけどメリーさんの背中を取ったのなんて、フェ○ックス一輝とニ○ジャスレイヤーと正義超人しかいないの……!』

「背後取られまくっているなぁ……」

 確かに自慢にはならんな。背後を取る都市伝説(という設定)としては。


『あたしも初対面で背後取ってるけど……?』

 オリーヴが「そーいえば」という口調で追加した。

『先日も幼稚園でジリオラ公女様に背中の真ん中を悪戯されてましたよね?」

 ついでとばかりローラも口を挟む。


「なんかあったのか、ジリオラと?」

 なんとなく気になって尋ねると、メリーさんが憤懣やるかたない口調で激昂した。

あん畜生ジリオラ、朝出合頭に「ごきげんあそばせ!」と言ってメリーさんの背中を叩いて言ったので、メリーさんもジリオラの背中を「ファイト一発!」と叩いて、【バカ】と大きく書いた紙を貼りつけておいたんだけど、先にジリオラが【アホ】と書いた紙をメリーさんの背中に貼っていたの……!』


 お互いに「してやったり」と、ほくそ笑みながら一日中【バカ】と【アホ】という自己紹介を背中にぶら下げて過ごしていたわけか。他の園児や保母さんも注意すればいいものを……まあどっちもワガママな公女と勇者だからトバッチリを受けたくないという打算が働いたのだろう。

 

『そんなわけで厄払いに来たんだけど、このままだと気がおさまらないので、神社の周りに灯油に浸した藁を積んで、火をつけて神が焼け出されたところを包丁で刺してから、悠々と三種の神器とかご神体だかをお土産にもらって行くの……!』

「お前は参拝を何だと思っているんだ?」

 訳の分からん幼女に焼き討ちされて、さらに背後から滅多刺しにされる神様を思って瞑目する俺。


 そんなことを考えていたら、不意にアパートの部屋のドアが外からノックされた。

 間を置かずに若い女性の声で――。

『雪に降られて難渋しております。土間の隅で構いませんので、今晩一晩泊めてくれませんか?』

 と助けを求める声が聞こえる。


「……?」

 反射的にビデオを一時停止して立ち上がろうとしたところへ、霊子(仮名)が血相を変えて縋り付いてくる。

“出ちゃ駄目ーっ! フラグ回収に来たのよ! そもそも管理人たちが自転車漕いでる光景を無視して、アパートの二階にピンポイントで来る自体で怪しさ満点でしょうが!!”

 言われてみれば怪しい気もするけど、根性のある訪問販売員の可能性もあるしなぁ……。


 しばし考え込む俺と霊子(仮名)の押し問答と、玄関向こうのノックの音が鳴り響く雪の日の夜であった。

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