番外編 あたしメリーさん。いま魔皇子が転園してきたの……。
時間・空間・概念というものが意味を持たない無窮の玉座に座したまま
――それだけで姫君の無聊をかこつために様々な楽器を演奏していた従者たちに(単体で旧支配者の主神級を凌駕する恐るべき力を持つ……が、
そんな周りの反応に頓着することなく、姫君は空中を舞うシャボン玉のような世界のひとつに一瞥を加え、それで用件は済んだとばかり再び
慌てて気を取り直した従者たちが、知性ある存在の耳には雑音としか聞こえない
姫君の視線を向けられた『世界』も取り立てて変化はなく――少なくとも従者たちの認識では――ただ、その中にあった微粒子以下の小さな島宇宙のさらに片隅にあった可住惑星が、不意の消滅から再生を果たしたという無量大数(10×68乗)以下のちっぽけな奇跡だけがあっただけである。
口元にほんのわずかな微笑みを乗せながら、姫君の眠りは続くのだった。
◇ ◆ ◇ ◆
私の名前はボーワッテゲダラ・ディサーナーヤカ・ムディヤンセーラーゲー・チャンドリカ・バンダラナイケ・クマラトゥンガ・ギハーン・ サマンタ・ディサーナーヤカと申します。
ちなみに末席とは言え貴族――ディサーナーヤカ男爵家の令嬢……と言えば聞こえがいいですが、遥か南方の島を統治する総督(文字通りの僻地に飛ばされた閑職)の現地人の妻との間に生まれた、一応は長女に当たるため、本国であるリヴァーバンクス王国王都エスト・キャピタルへと留学をして、現在は名門幼稚園である王立フジムラ幼稚園の保母の職に就けました。
なんでも前任の保母さんが「探さないでください。引退して田舎でスローライフを送ります」と書置きひとつ残して失踪したらしく(洒落にならない問題を起こして高跳びした説もありますが)、たまたま就職先を探していた私にお鉢が回ってきたそうで、前任者には申し訳ありませんがラッキーだったとしか思えません。
「あたしメリーさん。事件をもみ消すために今頃は存在自体を抹消されているの……」
「案外、本当に僻地でスローライフしてるかも知れないでしょう。狂気山脈の向こう側あたりで」
「標高四千メートル級の(邪)神々の山麓とか標榜している割に、実際には高尾山に毛が生えた程度の小山なの。下手に上ると上昇負荷で頭おかしくなるとかいう前評判の割に、メリーさんたち何ともなかったし……」
「もともと変な人間には効果がないんでしょう」
「ふにゃ?」
可愛らしくも
「あたしメリーさん。入ってすぐのところに『我が子を食らうサトゥルヌス』が飾られている幼稚園ってどうかと思うの……」
「『裸のマハ』よりはマシじゃない? 個人的にはこっちにある同じ作者の『二人の女に見られて興奮しながらオナニーする男』の方が含蓄があると思うけど」
「ジリオラは趣味が悪いの。同じシリーズでも『砂漠に首だけ出して埋められた犬』か『棍棒使って死闘する男たち』のほうが日常性の裏に潜む人間の本性を表していて秀逸だと思うの……」
ブツブツ言いながらついてくるのは、我がドリアン組の三馬鹿……もとい問題児三連星……じゃなかった、中心になってクラスを盛り上げているふたりの幼女と謎のゆるキャラです。
なおそのメンツは赤い髪に縦ロール。高飛車お嬢様言葉を喋る五歳児――ジリオラ公爵令嬢と、
「いまどき髪型にエアーインテークが付いている女に天然記念物扱いされるいわれはありませんわ!」
「90年代のエロゲーヒロインなの……」
そして普段は反目しあっているのに、こんな時だけ共同歩調を歩む、口の減らない金髪幼女は『勇者』として国と神に認定されているなんかエライ……エリートです。
「……だいたいこの二匹がドリアン組の秩序を乱す元凶なのよね。紙芝居で昔話を聞かせれば――」
『――ということで、「笠地蔵」のお話を聞いてどう思いましたか、良い子のみんな~?』
すかさず手を上げるメリーちゃんとジリオラ公女。
『地蔵は意外と金を持っているの、普段清貧を心がけろとか言っている坊主の信仰の対象だってのに、思いっきり俗物なの。不死の火の鳥が「有限の命は素晴らしい」とか、ただ座ってポップコーン食べながら見てるだけのくせに偉そうに講釈たれるフザケた話なの……!』
『そうじゃないでしょう! 雪が積もる前に連中の足跡をたどれば、財宝の隠し場所がわかってごっそり取り放題って教訓じゃない』
そんな感じでクラスの収拾がつかなくなってしまいます。
おかしいわ。私が学んだ理論と教育現場の乖離が激しすぎるわ、これが学校教育の限界なのかしら!?
「あたしメリーさん。今回の保母も前の猟奇犯罪者と同じで、何かしでかす気配が濃厚なの……」
「ま、マニュアル人なんてこんなものよ。よげんのしょに従って行動しているのかと思えるレベルで、どいつもこいつもレトルトカレーの美味い不味いと同じで全体から見たら50歩100歩でしかないわ」
「ジリオラちゃん、レトルトカレーなんて食べたことあるの~? あ、だけど
「なにげに王侯貴族の食卓が貧しいの……」
雑談をしている幼女・幼児の声でハッと我に返る私。
いつの間にか独り言が口に出ていたようです。危ない危ない相手は王族(王族公爵)という超高位貴族の令嬢。下手な失言が耳に入ればどんな処罰が下さるか想像もつきません。
万一の際には私も田舎でスローライフでしょうか。できれば働かずに楽ができるスローライフがいいのですが……。
「あたしメリーさん。その場合は原発とか原子力関連の施設に勤めるか、すぐ隣で利権にすがってぬくぬく生きればいいと思うの。周辺住民からのヘイトといざという場合の安全性は保障できないけど、その時は被害者面して補償求めて裁判すればいいと思うの……」
「遠回しでストレートな批判はやめなさい」
いろいろと面倒なのだから。
そしてポコポコと謎の足を立てながらふたりの幼女の後をついてくる、どう見ても珍獣にしか見えない幼児がこの国の王子であるイニャス殿下です。
基本的にホールケーキを三等分にするように言うと、全員がまず一直線にケーキを半分に分割するケーキを三等分に切れない問題児ですが、権力と名声があるので保母とは言え逆らえません。
「あたしメリーさん。直線に切ったと思うのは浅はかなの。これからさらに線が増えて、最終的には宇宙を吹き飛ばすマークに……」
「……ホールケーキで物騒な儀式をしないでください!」
「メリーさん、イ○゛オンを観て学んだの、どうやって神の視点を潜り抜けて子作りするかを……」
「イ○ン?」
「そんな地元商店街をすべて破壊する伝説の巨大モールみたいな邪悪なものじゃないの。イ○゛オンなので間違えたらダメダメなの……」
気のせいでしょうか? 何か合法的に伏字が使われているような気がするのは……。
「で、学園長が何の用事で私たちを呼び出したわけ?」
そんな私とメリーちゃんとのやり取りを面倒臭げに聞いていたジリエラ公女が窓の外を見ると――。
『このロリコンどもめ!』
『おのれっ、だがこの「もうロリコンでいいや」十人衆が束になれば、たかだか大目球ごときモノの数ではないわ! いくぞ同士、六里ハル和! ジャッキー奴!』
『『おうっ!!』
『またロリコンが幼女に羨望を抱いているのか……だが、それは現実の幼女には反映されない。自分自身の内なる欲望から産み出された幻影だと気付かんのか、戯けがっ!!』
園の強力なセキュリティをものともせず、連日連日園内に侵入を試みる変態どもに幼稚園の
つーか、つまんない用事なら男爵家ごとき圧力をかけて潰すわよ、というニュアンス満載で確認を取るジリオラ公女。
ウチの猫からも、たまにこういう殺気を感じるときがあります。
「ああ、それなのですが。実はこのたびドリアン組に転入生が来ることになりまして、その紹介のために理事長室へとお呼ばれしているのです」
「転入生ぇ……?」
非常に嫌な顔でメリーちゃんの顔を睨むジリオラ公女。
「ちなみに魔王国からきた大魔王の御子息であらせられます魔皇子殿下です」
「「「大魔王の息子……?」」」
「ボンクラ王子、悪役令嬢な公女、神に選ばれた女勇者。そして魔皇子。婚約破棄がはかどる人材なの……ジリオラ、魔王国に行っても元気でいるの。ほぼ三食うどんだけど……」
「勝手に人を悪役令嬢にするんじゃないわよ、この似非勇者っ!」
もともと人間国と魔王国とのギクシャクした関係を改善するための政治的判断による転入だったのですが、人間国側の王族と勇者が致命的なほど噛み合っていないのですが。これで私にどうしろと!?!
つーか、失敗したら絶対に蜥蜴の尻尾きりで私が処罰の対象ですよね!?
「いいですか、絶対に絶対にぜぇえええええええたいにぃいいいいいいいいい、失礼な真似はしないでくださいね!! 両国の平和がかかっているのですからっ!」
口が酸っぱくなるほど言い含める私に対して、
「なんか何度も何度もアカウントを停止にすると警告してくるAm○zonやRak○ten、E○Cのメールみたいなしつこさなの……」
「それは詐欺! ……まあ確かに先生の懸念は理解していますわ。三代前の魔王と当時の勇者との不幸な行き違い以来、両国の関係は冷え込んでいますし……つい最近もどこぞの馬鹿が魔王の醜聞を暴いて失脚させる事態を引き起こしたりしましたし」
そう言って意味ありげにメリーちゃんに視線をやるジリオラ公女。
「三代前の勇者と魔王の行き違いって何なの……?」
「しれっと無関係を装うじゃないわよ! アンタのせいで外交が大変だったのよ!!」
「メリーさんむかしはやんちゃしていたの……」
「今はもっと無茶してるでしょう! ――てゆーか、三代前のまおうの話だけど。当時、宮殿を新築した魔王が人間国のVIPを招待して、大々的なお披露目パーティーをしたんだけど、その時呼ばれた勇者がとんでもないことをしたのよ。こともあろうに魔王が使う前に、新品のトイレを勇者が使うという暴挙を行ったのよ!」
確かに不幸な行き違いねー、と話を聞きながら私も胸中で嘆息しました。
「それで謝ればまだマシだったものを、開き直ったものだから魔王の怒りが爆発して……」
「あたしメリーさん。駐車場で隣の車に自分の車のドアを開けた位置に瑕がついていても、とりあえず『その傷は最初からついてたわ、俺疑うんか?』と言っておけと勇者講習で教わるの……」
どーいう勇者ですかそれは!?
心配心配……不安しか感じない顔合わせです。
《続き:主人公視点》
王立フジムラ幼稚園に転園してきたという魔王よりもエライ、大魔王の息子とやらの
「つーか、魔王の上に大魔王とかいるんだ?」
DQかよと思いながら確認すると、メリーさんが面倒臭げにスマホの向こうで答える。
『その辺はお約束なの。魔王の上には大魔王がいて、コイツを倒すと真魔王が現われて、さらにGみたいに極魔王、超魔王……とかは微妙にうろつき風味で、メリーさんの清楚なイメージが損なわれそうなので、なるべく関わりたくないの……』
「メリーさんって、昔はホラーだったと言っても『マツモ○キヨシが昔はスーパーだった』というくらい、口に出してもオオカミ少年状態で信じてもらえない。いまでは何でもありのハッピーセットみたいな状況みたいなもんか」
まあ本人に自覚はないようだし、世の中には海賊を正義のように、海軍を悪のようにしてる漫画もあるくらいだから別にいいんだけどさ。
『おいは大魔王ん息子ん
やたらでかい声で幼児とは思えない挨拶の声が響き渡った。
紹介されたのは頭を五分刈りにした、どこからどう見ても――
『――う……芋っ! わたくしの美意識には耐えられないわ』
ジリオラが思いっきりエンガチョする垢抜けない幼児であったらしい。
『大魔王の息子の割に雰囲気がないの。第一声はせめて「絶対に許さんぞ虫ケラども!!!!!」「じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!!!!!」くらいは欲しいの。もしくはケンドー○バヤシの人生並みに壮絶なバックボーンを語るべきなの……』
それに同意して無茶ぶりをするメリーさん。
ちなみにケンドー○バヤシが語る半生ってのはあれだろう――。
・母親がブラックパンサー党員で絞首刑の母親の骸から産み落とされ、泣き声も上げず、唇をかみしめながら涙をこらえながら生まれた。
・生まれた場所はロシアとモンゴルの二カ所。
・その後、十五歳まで地下牢に幽閉され仮面をつけて過ごした。
・虎の乳を飲んで育った傍らで、父親は猿の頭蓋骨で酒を飲む日常であった。
・成人するまで盗賊団に育てられる。
・芸能界に入った動機は、鷹にさらわれた弟を探すため。
・芸人になったのは、NSCに蔓延する麻薬を撲滅するための潜入調査。
・ちなみに母親は現在実家で書道教室を開いている。
「確実に捏造だと思うんだが!?」
公園の無料駐車場に円盤型の軽自動車を止めて、スマホの地図を頼りに
なお、背後には個人の荷物を抱えた義妹の
当初管理人さんは遠慮したのだが、電話で
「申し訳ありませんわ。ですが
「どうでもいいですけど、目的地がGPSがズレているのか、ここから太平洋に入って五百キロは彼方に表示されていますわね。念のために飛ばしている糸も時空が歪んでいるのか途中で行方不明になりますし」
相変わらず腰の低い管理人さんに追随して、万宵も蜘蛛の巣をデザインしたケースに入ったスマホ片手に首をひねった。
“なんかいきなり先行きが不安になるんですけど!?”
俺の背負ったリュックサックに座り込んだ姿勢で霊子(仮名)がげんなりした
なお、いまさら言うまでもなく千葉は住人の八割が埼玉に面した西部に住み(別名:千葉都民)、残りの二割が広大な房総半島に点在している(千葉県民でも県庁所在地の千葉市には行ったことがないという人間は少なくない。日本一郷土愛に乏しい県民である)。
また千葉の最高峰の愛宕山が四百メートル足らずであることからも、起伏のない平坦な土地が延々と広がっている。あとついでに房総半島には暴走族がいない(暴走できるような太い道がないから)――それが千葉であった。
「まあ来た道は私が撒いておいた手作りクッキーの欠片をたどれば戻れるので安心だけどね」
紙袋片手に胸を張る真季。
「ヘンゼルとグレーテルかお前は!」
せめて小石を撒いておけ! クッキーとかダメなフラグじゃないか!!
そう思って背後を振り返って見れば、道沿いに点々と小鳥の屍骸が転がっていて、さらに最近千葉で増えているというキョンが泡を吹いて即死しているのが延々と続き、さらに好奇心旺盛なことで知られるチ○バくんの亡骸と、それを食ったらしい熊の死体が……。
「……千葉って熊がいたのか?! 虎が野放しになっているとは聞いたことがあるけど――」
熊はいないって定説じゃなかったのか?
“驚くポイントそこ!?! つーか虎はとっくに駆除されたわよ!”
なぜか地団太を踏んで絶叫する霊子(仮名)であった。
「とりあえず熊除けにラジオでもかけておくか」
こんなこともあろうかと山に行く時には必須のラジオの電源をつける。
『――では次の恋愛相談は、ラジヲネーム《恋する高3天狗女子》さんからで「私には子供の頃から好きな男の子がいるのですが、なかなか言い出せずにずっと片思いをしています。ところが突然現れた鬼の娘が、十年前に結婚の約束をした……とかいうフザケタ理由で、勝手に彼女面をして彼の家に同居し出したのです! どうすればいいでしょうか?」というもの』
「ほほう」
同じ高校三年ということでシンパシーが湧いたのか、真季が興味深そうに耳を澄ませる。
「俺としては受験生なんだから、恋愛にかまけてないで勉強しろと言うけどなぁ」
真季に対する当てこすりも含めての俺からの常識的な意見は当然のように聞き流された。
『そんな腰の定まっていない男なら、一服盛るなり寝技に持ち込むなりしてさっさと既成事実を作って、「私のお腹の中にはあんさんの
『――コホン。失礼しました。えーと、次のお便りは……《お嬢様を見守る眼鏡執事》君からで、「同じ屋敷に暮らしている同い年のお嬢様に密かに恋しています。ですがお嬢様は俺の親友(と表向き接しているだけで、あらゆるスペックが下の奴を内心で見下しているのですが)に首ったけで、使用人としてはお嬢様を応援するべきか、自分の心に素直になるべきか悩んでいます。なお、相手の男は別な女と同棲しています」という若いのに義理と人情の板挟みだねェ。……とりあえず、邪魔な恋敵は殺っちゃいな! そんな冴えない上に問題ばかりの野郎なんていなくなっても無問題っ!(ここで突然環境音楽が流れる)』
「――と、その時背後から強烈な爆発音がしたので、俺はまためんどうなことになったなぁ、とか。そういや昼飯も食っていないなぁとか色々な思いを巡らせつつも振り返ることにしたのである」
“小説家ごとの背後で爆発振り返りコピペみたいなモノローグを入れながら、『ヤレヤレ』ノリで億劫そうに振り返るのやめてーっ!”
振り返ると道に落ちていた熊だのキョンだのを食べて即死したのだろう、手足の生えた魚人間みたいなのから、翼の生えた巨大なザリガニみたいな生き物が、これまた点々と転がっていて一部はなぜか自爆していた。
「《
「この辺りにもいるのですね~」
意外と博識らしい万宵と管理人さんが用水路でジャンボタニシの卵を見た都会人みたいな反応をする。
「千葉って意外と生物層が多彩だな。つーか真季、お前クッキーにどんな劇薬を混ぜたんだ?」
「普通の材料だよ、お義兄ちゃん。問題があったとしたらギャ○゛ンくらいじゃないかな~」
「ギ○バンと言うと高級コショ……」
『宇宙刑事ギャバ○がコンバットスーツを蒸着するタイムは、僅か0.05秒に過ぎない。では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう! ……なの』
何か言いかけた管理人さんの台詞を遮って、スマホからメリーさんの横槍が響いた。
「う、宇宙刑事――っ! 銀河連邦警察!? わ、私は無実です。黙秘権を行使します! 弁護士を通してくださいませ!!」
途端、なぜか狼狽えまくる管理人さん。
それを無視して真李がのんびりと、道の脇に置いてあった自販機を覗き込みながら懐かしそうに述懐する。
「『房総サイダー』『鴨川エナジー』、『ながらとガラナ いろはにほへと』……なんじゃこりゃ? でもこーいう
他に思い出すことはないのか、この馬鹿義妹は?
それに俺はゲームと言えば主に『シヴィラ○ゼーション』という実在の政治家になって、国の整備や戦争などを指導するゲームに傾倒していたんだけどさ。
「なぜかガンジーが核兵器を所有した途端に、見境なく核攻撃をおっぱじめる展開が『正体表したね』感があって好きだったんだよな」
噂ではガンジーの隠しパラメーターの平和主義思想が、すでにMAXであったために国が栄えたことで数値が上がって限界を突破して、毒が裏返るように999→000という風に悪魔転生してしまったとか。
嘘か本当か知らないが、今日もガンジーはゲームの中で核兵器を使いまくっているのだった。
「お義兄ちゃん撮り鉄並みに核兵器好きだからね~」
しみじみと同意する真季。
そんな俺たちのやり取りと並行して、メリーさんたちもリグガイ魔皇子の対応に苦慮していた。
『なーんか転生者臭いわね、この皇子。貴女の管轄じゃないの? ということで、後のことは貴女に任せるわ』
『あたしメリーさん。爆弾ゲームじゃないんだから便秘解消したみたいな顔で、勝手に面倒事をメリーさんに押し付けるな、なの! 第一本当に日本からの転生者かどうかわからないの。ま、一発でわかる確認方法があるけど……』
『へえ、じゃあ確認して』
『まずはジリオラ、両手でグーを作って……』
『……こう?』
『腰を落として、両手を構えて――右斜め45°からえぐるように打つべし! 打つべし! 打つべし!』
勢いのままにリグガイ魔皇子に連打を浴びせるジリオラ。
『顔面にストレートぶち込んで殴り返されなかったら日本人なの……』
『ないをすっど、こんおなご。許せん、ぶっ殺すたい!!』
当然激高するリグガイ魔皇子。
『『『『うわ~~~っ!! 国際問題があああああああああっ!!!!』』』』
職員室での凶行を止められなかった保母さんたちが取り乱すのと同時に、窓ガラスを破って飛んできたトマホークが、間一髪の差でリグガイ魔皇子がいた場所に突き刺さった。
『――なっ……!?』
それに合わせて謎の仮面をかぶった褐色の肌をした謎の一団が職員室に踊り込んでくる。
『……我ら帝国の仇……』
『……大魔王の血族に死を……』
勢いの割に微妙に活舌の悪い口調でブツブツと恨み言を吐く謎の集団。
『ううむ、きさんらは父上が滅ぼしたインキャ帝国ん残党。おいん命を狙うてきたんか?』
リグガイ魔皇子の方には思い当たる節があるようで、十人近い襲撃者を前に堂々とした態度で問いかける。
「インキャ……インカ帝国?」
聞き間違いかと思ってそう確認のため口に出すと、
『おお~! インカと言うと“消えた闘魂”猪木も実写で登場していた「プロレスの星、アス○カイザー」なの……!』
「アステカ帝国とインカ帝国は別だ! どっちかというとエス○バンじゃないのか?」
まああれもムーだのマヤだのがチャンポンしていたけど。
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