《次回予告》 スペースメリーさん

 俺の名はコアラ。史上最高の賞金首にして、左腕にだっ○ちゃん人形を持つ男、不死身の英雄さ!

「いくぞ、ロリ!」

 悪辣なやり口でこの宇宙を牛耳る宇宙海賊互助会と対立する、正統派の海賊にして一匹狼の俺。

 そんな俺の相棒はアーマドール・ロリと宇宙最速の船ガメリン号だけである。

「宇宙海賊互助会って要するにライオ○ズクラブみたいなものなの。会費が未納になっているから取り立てられているだけなの……」

「余計なことは言わずに、さっさと準備しろっ!」

「メリーさん、かしこまなの! あっちょんぶりけ……!」


 ちなみにロリは一見すると五歳ぐらいのビキニアーマーを着た(どこがアーマーなのだ!?)金髪幼女にしか見えないが、古代冥王星の超技術によって造られたよくわからん存在だ。

 自称古代冥王星王国の姫で、生身だった時は(いまも生身にしか思えんが)『メリー』というのが本名だったらしい。

「……冥王星って、あんまりチャチで小惑星セレスより小さいから惑星から外されたんじゃなかったか?」

「あたしメリーさん。そんなわけないの。『すいきんちかもくどってんかいめい♪ すいきんちかもくどってんかいめい♪』とアニメのエンディング曲にも歌われて、『西から昇ったおひさまが東へ♪』と並んで、天文学の基礎教養なの……」

 そう謎の知識を開陳しては悦に耽るロリ。


「ちなみに3サイズは上から88-60-89なの……」

「嘘つけ!」

 刹那、殺気を感じで飛び退いたところへロリの出刃包丁が通過していった。

「――ちっ」

「だから背後から包丁を突き刺そうとするなよ! お前の頭脳回路ってどっか断線しているぞ!!」


 残念そうに舌打ちしたロリに、心臓バクバクさせながら文句を言ってもどこ吹く風。

 なんでこんな不良品掴まされたんだろう?

 かと言って捨てても勝手に戻ってくるしなぁ……。


「目ざとい奴なの。確かに、メリーさんの本当のスリーサイズは99.9-55.5-88.8だけど……」

「峰不○子かお前は!? さっきよりも鯖を読んだ量が増えてるぞ!」

「事実だから仕方ないの。この体になった時に若干コンパクトになったけど、もとは男を悩殺しまくる罪な女だったの……」

「悩殺というよりも、『悩む前に殺す』の間違いじゃないのか?」


 そう言った瞬間、両手に構えたロリの包丁が超高速の連撃で繰り出された。

「うわっ、やめろ! さすがに死ぬ! 死ぬっ!!」

 30cm間を1兆分の3秒で水平移動する陽電子の方向を判別できる超高速動体視力を持った俺でも、躱すので精いっぱいという殺意マシマシの攻撃である。俺じゃなきゃマジで見逃しちゃうね。


 ★


 そんな宇宙をまたにかけた数多の冒険とロマンスの日々――。


「くそっ、敵は重戦艦〈ブラック・タイガー〉タイプか。さすがにきついな」

 速度で勝るとはいえ、クルーザーサイズのガメリン号では決定打にならないことに、次に打つべき手を考え込む俺を無視して、アーマドール・ロリがなんか猛烈に嫌な予感がする謎のボタンを押した。

「ぽちっとな……」


 途端、機関の音が変わって、ついでにガメリン号の全体が俺のコントロールを離れて、何やらガッチャンガッチャン変形し出した。

「なんだこの変形は!? 本来の仕様にないぞ!」

 スピードタイプとか、地上モードとか、デフォルトで変形機能はあるが、ありのままに言ってそんなチャチなもんじゃねえ!!


 気が付いたらガメリン号が巨大ロボ――それも小学生が夏休みの自由研究で頑張って作りました風な手抜き感満載な感じ――になっていた。

「何じゃこれは!?!」

「メリーさん、暇だからDIYで改造しておいたの……」

「DIYのレベル超えとるわ! なんでやるべきところでないとこで無駄な高機能を発揮するんだ!?」


 とは言え戦闘中に口喧嘩している暇はない。

「武器はあるのか、武器は!」

「あたしメリーさん。もちろんなの。必殺技があるの……!」

 完全に俺を置いてきぼりにして、ロボットの操縦をするロリ。


「必殺オーガズムフォーメーションなの……!!」

 真正面を向いたロボットの正面武器――股間ビーム砲・ノクト波動砲・メルトレンジバスター砲・腹部反陽子砲・一億度のZビーム――を前方へ向け一斉射撃するという、シンプルかつ強力無比にして明らかにオーバーキルな必殺技が戦艦向けて放たれた。


「先○者……?」

「違うの。性獣……じゃなくて、☆銃士ルソーなの……!」

 いまだに股間砲をそそり立たせている巨大ロボを指して言い切るロリ。

 なお、有名な哲学者であるジャン・ジャック・ルソーは露出狂で、昼間少女たちがたむろしている場に性器を露出させて躍り出て、最終的に女児にお尻ぺんぺんしてもらうことに快感を覚えるという奇行を繰り返していたことでも有名である。

 あと知的障碍者の女の子を次々と襲ったり、私生児五人を施設に捨てたり……いいのか、こんな奴を偉人として教科書に乗せて?!


 そんなこんなで間一髪逃げていた、宇宙海賊互助会幹部にして、終生のライバルであるクオーツ・ジャリとの対決。

「くくくっ、私の体は特殊偏光ミラーで覆われている。お前のだっ○ちゃんガンでも、傷ひとつ付けることは不可能だ」

 

 見た目、輝く茶筒ちゃづつみたいなのに覆われた体で大口を叩いたクオーツ・ジャリだが――。


「あたしメリーさん、いまあなたの後ろにいるの……」

「ぎゃああああああああっ! ギブ……ギブッ……って、コアラっ、助けてーーっ!!」

 つっ転がったところを、アーマドール・ロリが無情に包丁という物理攻撃で一心不乱に切り裂き、滅多裂きにされたクオーツ・ジャリの断末魔の悲鳴が木霊こだまするのだった。


 ★


 だが、こんな戦いの日々に熟れ疲れた俺は顔を変え、記憶を消して平凡な人間として未開の惑星で暮らすことを選んだ。

「むう、軟弱なの。豆腐メンタルなの。宇宙最強の海賊コアラともあろうものがこの程度で。木○沙織のところのグラード財団なら、命燃やし尽きるまで働かされるっていうのに……」

「――言っとくけど、俺の心労の99.9%はお前のせいだからな!!」


 処置をする直前に口惜し気に悪態をついたロリに最後の文句を叩きつけて、俺は自動装置に包まれて眠りについた。

 さあ、これで次に気が付いたら俺はただの大学生になっているはずだ。

 この阿呆なアーマドールとの腐れ縁もこれまでだ!


 解放感とともに眠りにつく直前、

「あたしメリーさん。いつでもあなたの後ろにいるの……」

 なにやらおぞけをもたらす台詞が聞こえた気がするが、単なる気のせいだろう……気のせいだ。気のせい……。

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