第9話 神戦試合開始
「これが会場かぁー」
何処かの球技場の様なTHE闘技場という光景に感動して、立ち行く人が多い中、立ち止まって見上げる。少し迷惑そうに見られたりもしてしまう。
「どうだ?凄いだろう」
何故か、父さんが誇らしげだが。
「ヴァーダ、アマロ。行くぞ~」
「ああ」
「うん」
メイガンに呼ばれ駆け寄って合流する。
「子供の部はこちらになりまーす!成人の方は向かって右の方へお並び下さーい!」
案内員の女性が声を出して案内している。
「それじゃぁ、ここでお別れだな。後でな」
「お前等、優勝しろよ!」
手を振って去っていく面々に手を振り返す子供勢。
「はい、僕達こちらに名前と年齢を書いてくださいね・・・はい、良いですよ。では、こちらの番号をお持ちになって、中でお待ちください」
整理券の様な物を受け取り、ペコリとそれぞれ頭を下げて中に入る。
子供勢メンバーは、
6歳 メルティア、
7歳 アマロ、
10歳タイラ、
12歳ナクル、
13歳マライ
5人だ。
ついでに馬車の修行でそれぞれ1つ新しく魔法を覚えている。メルティアとタイラはプチファイア、シールドといった魔法しか出来なかったが、メルティアはファイアをタイラはそれに加えて、ハイ・シールドとアイスランスを新しく取得した。
ナクルとマライは既にそれらを覚えており、躍動を取得する事に成功していた。
躍動は決めてのスキルの1つでもあるので、覚えていないのとでは差が大きい。
大人勢は、
28歳ヴァーダ、
30歳メイガン、
16歳ミナリィ、
18歳ソウジン、
18歳キアラ、
19歳カーマル、
20歳ロマネス。
の7人だ。
大人勢も旅の間に新しい魔法を取得した。ヴァーダとメイガンは寝る間を惜しんで修行した。途中、ロマネスに御者を交代して貰い仮眠を取りながら頑張っていた。
ミナリィは躍動までは使えた為、サンダーショットかライトニングレイ辺りを覚えて貰おうと思ったのだが、どうも攻撃魔法系は苦手でストリングの様な強化系が得意な様だ。その為、まだ覚えていなかったハイ・ストリングを取得した。
『ハイ・ストリング』
コスト4
1体にターン終了時まで攻撃力+3する。
慣れないうちに実戦で自身に使うと反動が大きいので注意しておいた。
ソウジンとキアラはサンダーショットをカーマルとロマネスは、ライトニングレイを取得した。
『サンダーショット』
コスト5
ユニット1体に6ダメージ
案内されて中に入ると、15歳の子供達が所狭しと沢山いた。
「おい、ガキがいるぞ」
「ああ、神聖なる神戦試合に泥を塗る気か?」
「これだから田舎の者は・・・」
中に入るなり、テンプレの如き連中がいた。ギルドじゃないのになぁと思いながら、えーと思う。
「何だ、お前!その顔は!」
(やべ、顔に出てたか)
「私の顔が何か?」
絡んできた裕福そうな15歳ぐらいの3人組を問う。
「何かじゃない、今、私達の顔を見て露骨に嫌そうな顔をしただろう!初対面なのに失礼だろうが!」
「ちょっと、何してるのよ」
ナクルがツンツンと肘で付く。マライが子供勢の最年長の為、何とか間に入ろうとするが、相手はマライよりも見るからに年上な為に切り出せずあわあわしていた。
「私は、そのような顔をしたつもりは全くなかったのですが、この顔が気に食わないと言うのであれば、私には謝る事しか出来ないのですが。申し訳ございません」
「・・・フン。小さい割にはしっかりとしているじゃないか。今回だけは特別に見逃してやる。次はないと思え!行くぞ!」
鼻息荒く立ち去って行く3人。
「もう、来て早々揉め事とかやめてよね。ヴァーダさん達もいないんだから」
「ごめんごめん」
ナクルに呆れられる。
言葉遣いはあれから修行している間に少年勢とは仲良くなって、崩しても問題ないぐらいには仲良くなった。
「どうした?メルティア」
「べ、別に!」
いつの間にか俺の袖を握っていたメルティアに話しかけると、「フンダ」と手を放した。少し顔が赤い。恐らく、あの3人組が怖かったのだろう。強がっている様だ。ここは触れないで上げる方が良いかな。
「それにしてもあの人達貴族の人達じゃないかなぁ。服も良さそうだったし」
「貴族かぁ、変に関わらないようにした方が良いかな」
「そうね」
何処の世界でも貴族は傲慢な人間が多い。ちょっとしたことで不敬だなどと言われることも少なくないのだ。
「お待たせしました!これから予選を開始します!お手持ちの番号の裏に対戦相手の番号と対戦場所が記載されております。記載されている場所に移動してください!本日子供の部は250名の参加となっております!合計5試合して頂き、勝ち残った方、8名の方が決勝トーナメントに行くことになります!皆さん!負けないように、自分の力を出し切って頑張ってください!」
暫く雑談して過ごしていると案内人がやって来て繰り返し案内している。
「それじゃぁ、皆。頑張ろうね」
「「「うん」」」
ナクルの言葉に元気よく返事してそれぞれ移動する。
地面に番号が掛かれており、その番号が対戦卓となるようだ。椅子も机も何もない。まぁ、不思議空間に行くわけだから必要はないって事だろう。
俺の番号は、212番。雑談していた直ぐ傍にあった。
「君が212番の者かい?ベイビィ」
金髪の長い前髪をワサァとかき上げて登場してきたのは、まるで某アニメの小学3年の男子の様な人物だ。カッターシャツに肩までのジャケットに短パン姿をしてる。
「あ、はい。30番の方ですか?」
「そうともさ~。なら、対戦相手に間違いはないネ。僕はカリンクさぁ~」
「あ、アマロです」
「それじゃー始めようか~」
「「マナデュエル!」」
流れるような自己紹介と共に、不思議空間、神戦となる。
「どうやら、先攻は僕からみたいだね~。君は何歳だい~?」
「7歳になったばかりですが」
「そうか~い。それなら僕の方が1つ上だね~。でも、勝負は非常さー。手加減はしないよ~」
手加減はしなくても良いが、その無駄に語尾を伸ばすのを止めていただきたい。
「サァー行くよ~!僕は運が良い~。御父上と共に今日の為に手に入れたユニット達が最初から手札にあるのだから~。スキルデッキからコストを支払い~、コスト5『ウルフコング』を2体召喚~!更に~コスト4『タイガーウルフ』~召喚~!そして~コスト2『ゴブリン』~、コスト2『ラビット』~召喚~!・・・どうだいベィビィ?君にこのユニット達を倒す事が出来るかな~。これで僕はターンエンドさ~」
『ウルフコング』
ゴリラが狼の様な体格なり、敏捷とゴリラの様な剛腕を兼ね備えている。
コスト 5
維持コスト 2
攻撃力 6
体力 4
タイプ: 狼・猿
『タイガーウルフ』
大きな牙を二本持つ狼
コスト 4
維持コスト 3
攻撃力 4
体力 4
タイプ:狼
自動効果:ユニットと戦闘する場合、攻撃力+1
『ラビット』
兎
コスト 2
維持コスト 0
攻撃力 2
体力 2
タイプ:兎
『ゴブリン』
人型で120cmぐらいの子供ぐらいの大きさ、下半身に腰蓑を付けている。
手には木の棒
コスト 2
維持コスト 0
攻撃力 2
体力 1
タイプ: ゴブリン
起動効果: コスト:レスト
がフィールドに実体化して姿を現す。
カリンク 手札0枚。マナカード5枚、スキルデッキ27枚
「俺のターン。デッキからマナゾーン7枚カードを置き、そのマナカードを使い、コスト6『リザードマン』を召喚」
「コ、コココスト6!?どうして君みたいなのがコスト6のユニットを持っているんだい~?」
「父さんと一緒に狩りに行ったから」
驚愕するカリンクにそう無難な回答をする。
「もしかして、君はナシメイト村の人間かい~?」
「・・・そうですけど?」
「なるほど~ナシメイト村のヴァーダは『リザードマン』使いとして優秀らしいですからね~」
「え、父さんってそんな有名なんですか?」
まさかの父さんの名前に驚く。
「父さん?なるほど~。君はあの『リザードマン』使いヴァーダの息子と言う訳ですね~?倒しがいがあ~ります~。しか~し。その息子がマナカードを自らのライフを支払う程の愚かな息子だというのは彼は残念がるでしょ~」
相手のモチベーションが上がりつつ罵る。
(何だか、父さんの事を話してくれそうにないから先を進めちゃおう。しかも言葉遣いが鬱陶しいからさっさと倒そう。どう考えてもユニットしか当てにしていない)
「更に、スキルデッキからコスト5『アースコング』を召喚。3体のユニット裏向きでセットしてターンエンド」
「素晴らしい~!流石ですね~。では、僕のターンです」
アマロ 手札0枚、マナカード1枚、スキルデッキ45枚。
「デッキからマナゾーンに5枚置いて、『ウルフコング』2体と『タイガーウルフ』の維持コスト、合計8をスキルデッキから支払いま~す。
マナカードから1枚手札に加えて、スキルデッキからコスト3を支払い『ナックルモンキー』を召喚しまーす」
「まずは、目障りな『アースコング』に『ウルフコング』で攻撃でーす!」
(相打ちか・・・まぁ問題ないか)
お互いのコングがクロスカウンターで消えていく。
「スキルデッキからコスト3とコスト2を支払い魔法スキル『ファイア』と『プチファイア』で『リザードマン』にダメージを与えまーす。これであなたの切り札『リザードマン』は撃破デース。あとは『ウルフコング』で君の貧弱なユニットを倒すだけでーす」
(んな馬鹿な・・・)
「スキルデッキからコスト2を支払い『シールド』を発動。これにより『ファイア』のダメージを防ぎ、『プチファイア』のダメージを受けた『リザードマン』の体力は残り2です」
「ノー!?まさか防がれる何てー」
(むしろ何故、防がれないと思った・・・)
「しーかし、僕はスキルデッキからコストを2支払い再び『プチファイア』を発動でーす。これで今度こそ『リザードマン』を撃破でーす」
「そんな事はさせないでーす。俺もスキルデッキからコスト2を支払い、再び『シールド』を発動でーす。『リザードマン』にダメージは受けず、更に『シールド』の体力が1残っていまーす」
・・・く、言葉が移ってしまった。
「やりますねー。それならー!もう一度突破するのみでーす。スキルデッキからコスト3を支払い『ファイア』を発動でーす」
「なら、こちらももう一度スキルデッキからコスト2を支払い『シールド』発動!」
「くー!しぶといですねー。こうなったら『ウルフコング』でプレイヤーに攻撃でーす」
そのまま、『ウルフコング』の攻撃を受け、マナカードが1枚割られ、そのカードが手札に来る。次の攻撃を受けたら敗北だ。
「これで止めでーす。『ラビット』で攻撃でーす」
「『リザードマン』で防御!」
「『リザードマン』が〔飛行〕で反撃を受けないと言っても防御の時は別でーす。庇うのですからダメージは受けて貰いまーす」
『ラビット』の攻撃で体力が残り1だった『シールド』が割られ『リザードマン』にダメージが通る。しかし『リザードマン』の反撃で『ラビット』を一刀両断する。
「スキルデッキからコスト1を支払い特技スキル『石礫』を使いまーす。これで残り体力1の『リザードマン』を撃破でーす」
(うん、まぁもういらないかな)
石が『リザードマン』の頭に当たり、消えていく。
「さー。『ゴブリン』でプレイヤーに攻撃でーす!貴方には守るユニットはいませーん!」
「スキルデッキからコスト1を支払い『石礫』で『ゴブリン』に1ダメージを与える」
向かって来た『ゴブリン』の頭に石が直撃して、見事にずっこけて消える。
「ノー!?決めれませんでしたかー!流石でーす。僕はこれでターンエンドでーす」
カリンク 手札0枚。マナカード9枚、スキルデッキ0枚
ユニット『ナックルモンキー』
『ナックルモンキー』
腕が発達してまるでボクサーの様な拳を振るう猿。
コスト 3
維持コスト 0
攻撃力 3
体力 2
タイプ:猿
「俺のターン。デッキからマナゾーンに5枚置き、裏側表示でセットしていたユニット『リザードマン』、『タイガーウルフ』、『初心者です』をスキルデッキから合計コスト11を支払い召喚!」
「おー。これは驚きましたー。『リザードマン』を2体も持っているとは流石、『リザードマン』使いヴァーダの息子でーす。しかし、まだ『初心者です』を入れているのには笑いが抑えられませ~ん。ククク~」
口元を抑え、笑いを堪えているが漏れちゃってるよ。
「では・・・その笑いの元の『初心者です』で止めを刺して上げます」
「僕はマナカードはまだ9枚ありまーす。どうやって『初心者です』で倒すのですかー?クククー」
「簡単ですよ。スキルデッキからコスト2を支払い『プチファイア』で『ナックルモンキー』を倒します・・・あとはお分かりですよね?」
「・・・ノー!?そんなまさかー!?この僕がー!?」
「『リザードマン』と『タイガーウルフ』でプレイヤーに攻撃」
『リザードマン』の攻撃力5と『タイガーウルフ』の攻撃力4でカリンクのマナを全て割る。
「そして、『初心者です』でプレイヤーに攻撃!」
プスっと串をカリンクに刺すとマナフィールド消えていき、神戦が終了する。
(最初の頃の父さんとたいして変わらない戦法だったなぁ。しかもユニットが父さんよりも弱いから対処は簡単だった。中級魔法を使うまでもないとか・・・)
現実世界に戻ってくると、カリンクの整理券が消え、俺の整理券の下にカリンクの番号30が浮かび上がって来た。
(どうなってるんだろう・・・)
「おお、カリンク。どうだったかね」
「おじい様・・・」
背後から声を掛けて来た金髪の老人。カリンクの祖父の様だ。
「申し訳ないでーす。負けてしまいまーした」
シュンと肩を落とすカリンク。
「まさか、我が孫が予選1回戦敗退とはのぉ」
チラリとこちらを見られる。
「カリンク。今回なぜ負けたのか原因は分かるかね」
「はいー・・・ユニットの差でーした」
「ユニットの差!?カリンクにはコスト5の『ウルフコング』を買い与えただろうに、同じ年代でユニットに遅れを取るとは思えぬのだが・・・」
(ん?買い与えた・・・?)
気になる言葉が出て来た。
「リザードマンを使っていたのでーす」
「何と!?リザードマンはコスト6の強い魔物、ユニットじゃぞ。それをこの様な小僧が・・・あ、ゲホンゲホン。失礼、君は貴族の御息子かな?」
「いえ、違います」
貴族相手に小僧とか言ったら大変そうだもんねぇ。わざとらしい咳で誤魔化す。
「あの『リザードマン』使いヴァーダの息子だそうでーす」
「あの『リザードマン』使いの!?なるほど・・・それならば納得じゃの・・・」
(父さんって何者!?)
あの父さんがそこまで強かったとでも言うのか・・・・。
「アマロ君」
「マライさん」
神戦が終わったのかマライが声を掛けて来た。すると他の皆も終わったのか皆が集まって来た。
「それでは、失礼するよ。君を期待している」
「僕に勝ったんだ。負けるんじゃーないよー」
指でシュビっとして去っていくカリンクとその祖父。
「あの方達は?」
「俺の対戦相手とその祖父みたい」
「ねぇそれより、どうだった?」
マライの質問に答えているとそんなの興味ないと言うばかかりにナクルが結果を聞いてくる。
「勝ったよ」
「だよねー。アマロが同じ年ぐらいの相手に負けるはずないよねー」
うんうんと納得している。
「どうして、相手が同じ年ぐらいと?」
「ああ、アマロは知らないんだね」
はて?と首を傾げる。
「最初の1試合だけは同じぐらいの年齢同士になるように調整されているんだ。その後は本当に運任せみたいなんだけどね」
マライが説明してくれる。
恩恵を貰ってから直ぐの者もいるだろうし、スキルにも違いがある。それなのに6歳と15歳がいきなり試合となれば、圧倒的有利な15歳が確実と言っていい程に圧勝するのが当たり前だろう。昔はそれで心が折れた者もいたそうだ。そうならない為の配慮という事らしい。
「皆は?」
「当然勝ったわ」
「僕も勝ったよ」
「僕も」
「私もよ」
「「「「おおー。おめでとう」」」」
6歳のメルティアが、と言っても今年で7歳になるのだが、一番年下が勝って皆喜ぶ。メルティアが顔を赤くして照れている
どんな相手だったのかなど、色々と話した。メルティアは『ファイア』が大活躍したらしい。同じぐらいの年齢で使えるのは『ファイア』購入できるほどの裕福な家庭か貴族ぐらいで、6歳で自力で使えるの凄いらしい。
他の者もその年で使える魔法としては1つ上の魔法だそうでかなり諜報した様だ。
「アマロ様様だね」
「皆の努力の結果だよ」
などと雑談していると。
「はい!皆さんお待たせしました。1回戦が全て終了しましたので、引き続き2試合目を開始します!」
受付員がやって来た。
「それじゃぁまた後で」
それぞれが分かれて指定場所に行く。
(余裕だなぁ。手加減も糞もない。俺TUEEEんだけど、TCGだから俺TUEEE感が全くない。初心者を相手に弱い者いじめをしているみたいに感じる)
1回戦の相手は10歳で、戦い方も1回戦同様、相手はスキルデッキをフルコストにフル展開してくる。しかも今回はウルフコングなどもおらず、ユニットスペックに寄るゴリ押しをこちらがしたような感じで、リザードマンとプチファイアだけでほぼ勝てた。
そうそうに試合が終わった為、近くに誰かいないかと探し回った。
「あり得ない!反則したに決まっている!」
「そんな!?」
怒鳴り声と悲鳴の様な声が聞こえて来たのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます