第6話 都市へ
「それで、アマロ何があったんだ?」
「・・・えっと、疾風を使って、スピードを落としきれずに、魔物とぶつかっっちゃっただけだよ」
父さんの問いに、あははっと苦笑い。
「おま!?疾風って物凄い速度が出るんだぞ!何て危険な真似をしているんだ!」
「そうよ、せめてユニットに使うなら兎も角・・・」
怒られた・・・シュン。
「はぁ、無事だったんだ。もういい。次からは気を付けるんだぞ!それで、今日はどれだけの魔物を狩れたんだ?」
「・・・」
目を逸らす。父さんも倒していない森の主を倒したとなったら何を言われるやら。
「まさか・・・リザードマンを倒したのか!?」
「ホントに!?やっぱりアマロは凄い子ね!」
嬉しそうだ。
「その年でリザードマンを1人で倒すなんて前代未聞じゃないか!?」
「ええ!私はそんな子、聞いた事ないわ!」
あははは。何だろう。苦笑いしか出来ない状況が最近多い気がする。
「いっぱい倒したよ?」
賑やかな話声が聞こえて来たからだろう、ヒョコっとエイフィが戻って来てそんな事を言ってしまった。
「・・・いっぱい?」
「え・・・いやぁ・・・」
目を逸らす。父さんが視線を合わせようとするが更に逸らす。
「アマロ。正直に言わないと今後の1人での許可はもう許さないからな。現に怪我をして帰ってきているんだ。・・・トゥルーワード。さぁ、これでもう嘘もつけないぞ。」
『トゥルーワード』・・・コスト2、言葉が真実か見極める魔法。
「ぐぬ!?」
「さぁ、今日は何を倒してきた?カード化して並べなさい」
「ぐぬぬ・・・」
アイテムボックスから渋々と『リザードマン』を1枚ベッドの上に置く。
「それだけか?」
道中に狩った、『ラビット』2枚、『ゴブリン』3枚、『アースコング』2枚、『タイガーウルフ』1枚、『ウルフコング』2枚を出す。
「まぁ、こんなに・・・しかもウルフコングやアースコングも数体倒してるのね。凄いわ」
母さんが喜びの声を上げる。
「これだけか?リザードマンをいっぱい倒したんだろ?」
「はぁ・・・」
訝しむ目で見られ、溜息を付きながら、『リザードマン』を追加で3枚出す。
「本当に凄いわ。ヴァーダだってまだ10枚ぐらいしか持っていないんじゃなかったかしら?」
「ああ、確か11体だったかな。これだけ・・・じゃなさそうなんだが?」
「・・・これだけ・・・」
「やっぱり・・・まだあるのか・・・嘘は付けないと言っただろ?」
父さんに溜息を付かれるが、母さんは何が出て来るのかドキドキしているようだ。
『ウイングバード』を1枚出す。
「ほう、良く空の魔物を弓もなしに倒したな。飛翔か?」
「うん」
「あのな、父さんな。そろそろこのやり取りが面倒になってきたんだ。言っている意味が分かるか?今日狩った魔物のカードを全て出しなさい」
威圧してくる父さんに観念する。
「でも、絶対に広めないでよ。もし、広めたら口聞かないからね!母さんもだよ!」
予想外の言葉にキョトンと二人は顔を見合わせ。
「ああ」
「安心して、誰にも喋らないわ」
「絶対だからね。相手に手の内を知られる何て、対策取られるんだから」
「ん?いや、それは分かるが、この村で枯れるならリザードマンが一番強いから問題ないだろ?」
実際にそうならこの村の人間なら問題ないだろうけど。
「・・・絶対だからね」
そう言いながら渋々とカード11枚の『リザードマン』を追加で並べた。
「ぬあ!?」
「うそ!?」
余りの枚数に変な声を上げる父さん。
「それから、これ」
木の魔物であった『ウッドマン』をまず1枚並べて様子を伺う。
『ウッドマン』
コスト5
維持コスト 2
攻撃力 2
体力 6
タイプ:植物
自動効果:このユニットの攻撃が防御された場合、攻撃対象と防御対象両方にダメージを与える。
自動効果:レスト状態でも防御出来る。
出しながら能力を確認したけど攻撃力は低いけど中々優秀な効果を持っている。
体力2の中級以上のユニットに攻撃した時、体力2以下のユニットで守ろうとしても無意味、どころか相手にとっては余分に倒されることになる。
うん。使えるねこいつは。
「まじか!?」
「初めて見る魔物ね」
ヴァーダが驚愕する。
「森の主だ・・・こいつはいつもリザードマンに守られて中々手が出せないんだ」
やっぱり、こっちを森の主と勘違いしていたのか。
「いや、待て、俺が目撃する時はいつもリザードマンが5体だった。この場にリザードマンが15枚あるって事はまさか!?」
「・・・」
無言で『ウッドマン』を2枚追加する。
「・・・父さんの立場がないぞ。6歳の息子に抜かれる何て・・・・どうやって、倒したんだ?」
「怒られるから言わない・・・」
スキルカードを連発して使った何て言ったら。使うなと言われているのに怒られるに決まっている。
「・・・お前、まさか!?スキルカードを使ったな!?」
「だって、ウッドマン3体にリザードマン15体を相手にしてマナが持つわけないじゃないか!」
赤ん坊の頃から鍛えているとは言え、流石に中級魔法を連発するほどのマナはまだ持っていない。正確には使えはするが、最後の疾風を使い終わった後は、マナ欠乏症にもなっていたかもしれない。
「・・・確かにそうかもしれないが・・・」
「それに森の主までいたら使うしか選択肢何てないよ!」
「何だと!?・・・そうか。森の主が3体も同時にいるわけがないからな。いや・・・しかし、森の主まで倒したのか!?」
「こいつがそう」
すっと一枚を取り出す。
『ウッドキング』
コスト8
維持コスト 4
攻撃力 4
体力 8
タイプ:植物
自動効果:植物タイプの味方ユニット全てに攻撃力と体力+1
自動効果:このユニットの攻撃が防御された場合、攻撃対象と防御対象両方にダメージを与える。
自動効果:レスト状態でも防御出来る。
装備カード:武器全般・盾・アクセサリ
『ウッドマン』の強い版だね。
「「コスト8!?」」
二人とも顔芸しだした。エイフィが笑いを堪えている。
「え?え?アマロ、お前。コスト8の高レベルユニットに加えてリザードマンとウッドマンの群れを同時に相手にしたのか!?」
「・・・まぁ」
「どうやって倒した!?教えろ!アマーロー!」
グアングアンと体を揺さぶる。
「アマロ。かっこよかった」
エイフィが後ろから父さんを引き離す様にして抱き着いて来る。背中に胸がー。
(平常心、平常心)
「カッコ良さなんてどうでもいいからどうやって倒したか教えろー!」
再び肩を掴もうとする父さんの頭に母さんの手刀が決まる。
「ゲフ」
「落ち着きなさい」
「もう、話すよ」
スキルカードを沢山使った事、止めをエイフィに任せて倒した事を話した。
「・・・確かに、スキルカードがなければマナが足りずに殺されていたかもしれない・・・か」
うーむと顎を撫でながら父さんが思案している。
「分かった。今回は多めに見よう。それよりも気になったんだが、あのエリアまで奥に行ったのなら、夕方のこの時間帯に帰ってくるのは不可能なはずなんだが」
「一瞬で帰ったよ」
「ちょ!?」
エイフィが俺の方に顎を乗せながら答えてしまう。
「一瞬・・・?疾風か・・・?」
「う、うん」
「まだ、嘘をつくのか?」
(まだトゥルーワードを発動していたー!?)
「瞬間転移だよ」
ドヤーっと何故かエイフィが胸を張って答える。
「「上級魔法!?」」
「お前は・・・その年で何を目指しているんだ・・・」
「本当ね・・・」
二人から驚きを通り越して遂に呆れられてしまった。
「はぁ、わかった。もうお前の事には何があっても驚かん!」
「そうね・・・」
二人とも苦笑いする。
「さ、それじゃぁ。話も終わった事だし、晩御飯にしましょ」
「ああ。そうだな」
「うん」
「ご飯・・・♪」
それぞれが立ち上がる。
「あ、それとアマロとエイフィ」
「何?」
母さんが思い出したかの様に言う。
「「お帰り(なさい)」」
頭を撫でながら言われた言葉に一瞬、俺とエイフィはキョトンとした。
「「・・・ただいま!」」
でも、すぐにエイフィと一緒に笑顔で返した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
それから約1年の月日が流れた。
この世界の魔物はどうやら直ぐに復活するらしい。1日に倒す魔物数によっても違うみたいだが、二日後にはウッドキングは復活していた。1日目はウッドマンが2体とリザードマンが8体迄復活していた。
この1年、武器の扱いや、体術、魔法の修行をエイフィとしながら、魔法のスキルカードを只管作り続けながら、森の主が復活すれば倒すという事を繰り返していた。
偶に父さんと母さんと神戦をして二人を鍛えた。家族が強くなるのには何の抵抗もない。家族に危害が増えるリスクは極力減らしたいしね。
『ウッドキング』もこれ以上絶対要らないだろうと思うぐらい手に入れると狩りに行く回数も減った。
だからといって流石に、村からはその狩場以外の森には行かせてもらえず、家での修行をメインにするしかなかったのだ。
俺自身強くなっているとは思うがデッキの幅が広がらない。
後、エイフィの動きも良くなってきていた。ユニットも成長するのだろうか。
偶に父さんと母さんを連れて、一緒にウッドキングを倒しに行ったりもした。
「父さんもウッドキングが欲しいー」
「お母さんもー」
と子供の様に駄々をこねたからだ。そして、俺の戦いぶりを見て、もうスキルカードに関しては禁止されなかったが、他人がいる所では出来るだけ使わないようにと注意を受けた。
他にはこんな事もあった。まだ、1人で狩りをして、ユニットをいっぱい手に入れたいと思っている頃だった。
「アマロ!私も恩恵をようやく貰ったの!私と勝負しなさい!」
ビシッと指差してくる幼馴染の赤髪ツインテールをした同い年少女、メルティアが久しぶりにやって来たと思ったら、第1世がそれだった。
「今から狩りに行くから、じゃ!」
と、サラッと流して狩りに行った。キーップンプンと声に出して怒って帰って行った。
その翌日も。
「アマロ!今日こそ勝負よ!」
「狩りだから!」
更に翌日。
「今日こそ!」
「かーり」
一週間ぐらい断り続けていたら流石に来なくなった。その時は良かったのだが、それから3週間もすれば『ウッドキング』も10枚以上手に入り、狩りのやる気が早くもなくなって来たのだ。そして、その時になってようやく気付いたのだ。
幼馴染の恋愛フラグをへし折っているという事に。
(やっちまったー!?)
頭を抱えて後悔したものだ。
(いいもん。俺にはエイフィという美少女がいるもん)
ユニットだが、実際可愛い。好みのど真ん中と言っても良い。そうして自分に言い聞かせ、もう、俺TUEEEしか道はない!と開き直って修行に明け暮れた。
こうして狩りに行ったり神戦をするのは感覚を鈍らせない為程度にしか殆ど行かなくなった。
そして・・・今日。
「来週から始まる神戦試合をしに都市へ行くぞ!準備はいいな!」
「「「「「おー!」」」」」
馬車2台で移動する。1台目の馬車には、
父のヴァーダと18歳設定のエイフィともうじき7歳の誕生日を迎える俺の他に
10歳の少年で、紫の髪をツンツンとさせており、シャツに短パンを履いているタイラ、
12歳の少女で、茶髪ロングで白のワンピースを着ているのがナクル、
16歳の女性で緑色の短い髪にタンクトップにピチピチの短パン姿のミナリィ、
子供の中では最年長である20歳の青年で、金髪に貴族服タイプの服を着ている、ロマネス。
の7人。もう一台の馬車には
6歳の幼馴染の少女、赤髪ツインテールに赤のワンピースを着ているメルティア
その父親、30歳男性。赤い少し長い髪を後ろで縛り、赤いジャケットに赤いズボンをはいている。
13歳の少年で、白い髪で目を前髪で隠し、グレーの色で統一された服でズボンをはいている、マライ、
18歳の青年、薄茶色の短髪で、如何にも村の青年といった服装のソウジン、
18歳の女性、薄黄色の少しウェーブが掛かったセミロングで如何にも村娘といった服装のキアラ、
19歳の青年、緑色の少し長めの髪に少し良い服を着ている、カーマル。
合計13人が馬車に乗り、一週間かけて都市に向かうのであった。
因みにエイフィは森に迷い込んできた所を保護して、行く当てがないから一緒に住んでいるという事にしてある。
エイフィには髪の色を銀色にする魔法『トランス』を使用しており、黒髪というのを知っているのは俺達親子しかしらない。エイフィに使用するにあたり、自分にもそれを使用した。カツラだと不意に落ちたりするから魔法で色を変えておく方が安全だ。効果時間は大体丸一日持つ。寝る前に掛け直す程度で維持できる。
アマロが忌み子であるというのは成人している者なら全員が知っている。今では銀髪のカツラを常に付けている為、同行している者の中では13歳以下の者達は知らないのである。
そもそも何故、黒髪が忌み子なのか。
黒い髪を持つ者は滅多に生まれる事はなく。争いを生む者と言われている。
過去、黒い髪を持つ者達は優れた能力を持っており、英雄とまで言われていたが、何度かその英雄として凄い力を振るうと、全ての国はそれを我が物とする為に、黒髪の者をチヤホヤとしだした。その結果、自重する事をしなくなった者達は欲望のまま、強い力を使い自分の欲しい物を手に入れる為だけに力を使う者が多くなり、結果、争いを呼ぶ者として忌み嫌われる様になったという。
過去の地球の転生者が俺TUEEEをしていた結果、自重をせずに周囲に迷惑をかけまくった結果だろう。俺みたいにちゃんと記憶がなくとも魂がカードの扱いを覚えているのだろう。
そして、ここ数百年黒い髪の者を持つ者は表舞台に立つことがなかったという。
もしかしたら、俺の他にも沢山いるが、捨てられたり、殺されたりしている者が多いのかもしれない。そう考えたら俺は物凄く良い家族、村に恵まれていたのだと思う。
揺れる馬車に乗って旅が続いている。
旅が辛い~。これが嫌だから移動系の魔法を覚えたのに・・・。集団行動で使う訳にもいかず、涙を呑んで旅に耐える。
そんな辛い中、定番の出来事が起こった。
「!?盗賊だ!盗賊が来たぞ!!」
父さんの大声が周囲に響いたのだった。
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